大魔王になります1
アク達が召喚される四百年前、六人の少年少女が異世界に召喚された。
当時人間族と獣人族は争いが絶えず、常に戦争状態が続いていた。それは人獣大戦として後世に残るほど大きな戦いで、それ以来人間族と獣人族は交流を絶ち、それぞれを恐れる傾向が生まれて、かかわりを持たなくなった。
「よくぞいらっしゃった。勇者達よ」
今は暗黒大陸と呼ばれている土地と、中央大陸は繋がった陸地だった。大陸の名前はレギンバラ。その大陸でもっとも力を持っていた国の名前が付けられていた。
六人の少年少女を召喚したのも、レギンバラ王の命による魔導師達だった。戸惑う少年少女は召喚されてすぐに、王の下へと案内される。
「勇者達。えっと、俺らは異世界から召喚されたんですか」
召喚された者達の中で最年長である黒髪の少年が王様に質問をした。
「そうじゃ。ここはレギンバラ王国である。我はレギンバラ王国国王 レビデバント・ノルフレンツ・バットメイレン・レギンバラ一世である。異世界からの客人よ。異世界から召喚された者は、特殊な能力を持つと言われておる。そのため異世界から召喚した者を我々は勇者と呼んでおるのじゃ」
少年少女は戸惑い、お互いの顔を見合わせる。
「まずは我々の現状を理解してもらいたい。我々人間は危機に直面しておる。そのため、そなた達に助けてほしいのだ」
「助けですか?」
小柄な少女が不安そうに王様に聞き返す。
「うむ。現在我々は戦争状態にある。相手は獣人族の奴らじゃ。奴らは凶暴で、我々人間族を目の敵にして襲ってくるのじゃ。しかも身体能力は奴らの方が上じゃから、我々はどうすることもできんのだ」
王様が沈痛な面持ちで現状を話すと、勇者達は王様の面持ちに同情してしまっていた。
「王様、俺はいいぜ。同じ人間としてほっておけないしな」
最初に王様に質問した黒髪の少年が賛同を表す。
「私も、お力になれるかわかりませんが人々を助けたいです」
不安そうにしていた小柄な少女が、オドオドしながらも手を挙げる。二人が声を出したことで、後の四人もどうするか考えて戸惑っていた。
「まぁすぐに決めなくてもよい。まずはこの世界に慣れてほしい。現在お主達を召喚するため魔導師が総動員したため、我々は戦えるような状態ではない。獣人達から逃げるのは癪に障るが、国境を強化して相手の侵入を防ぐこととする。今の内にお主達には戦う術を学んでもらいたいと思う」
王様は優しく少年少女を導き、生活の援助をすると誓ってくれていた。少年少女には、一人一人部屋が与えられることになり、謁見の間を後にした。
「どうだ、将軍。使えそうか?」
王様の右横に立つ鎧を着た男に王様が話しかける。
「なんとも言えませぬな。異世界から召喚された時はレベル1です。鍛えれば成長が早いと聞きますが、どれほどのものか」
「そうか。今はまだ彼らに死んでもらうわけにはいかないからな。獣人との本格的な戦争はこれからなのだ。とにかく彼らを鍛えよ将軍」
「仰せのままに。王様は本当にあんな小僧共に頼るのですか?」
将軍はどこか納得できな顔で王様に問いかけた。
「仕方あるまい。確かに魔力は我々が上。しかし、獣人共の身体能力は桁違い過ぎる」
「末端ならば我々でも倒せますが、幹部は確かに難しいですな」
将軍も王様の気持ちが分かり、溜息を吐きたくなる。その日から将軍による戦闘訓練と魔法訓練が開始された。それと同じく各メイドがレギンバラの歴史を教える日々が一カ月間続いた。少年少女達は、それぞれ別々の能力を持っている。
黒髪の少年は、天辰 雄志。大学一年生で、年は19歳。身長178㎝運動神経が良く、義理人情に弱い性格をしている。魔法の才能は火で、火の勇者として召喚された。
小柄な少女は、時東 椿。高校一年生で、年は15歳。身長148㎝で性格は臆病だが、心が純粋で優しい人柄をしている。魔法の才能は水で、水の勇者として召喚された。
金髪の少年は、木場 クリスティン。高校二年生で、年は17歳。身長185㎝父親がイギリス人のハーフで、彼自身はクウォーターで父親の血を色濃く受け継ぎ髪は金髪。性格は自由奔放、魔法の才能は風で、風の勇者として召喚された。
銀髪の少女は、エレオノール・シルビア。高校二年生で、年は17歳。身長170㎝ロシア出身の留学生で寡黙でクールな性格。魔法の才能は光で、光の勇者として召喚された。
黒髪の少女は、黒金 飛鳥。高校三年生で、年は17歳。身長160㎝名家の御嬢様で陰陽師の家系で育った。腹黒い性格で人が苦しんでいる顔を見るのが好きなドSな性格をしている。魔法の才能は闇で、闇の勇者として召喚された。
茶髪の少年は、砂丘 修二。高校三年生で、年は18歳。身長174㎝平凡な容姿と落ち着いた性格。魔法の才能は土で、土の勇者として召喚された。
彼らは一カ月という期間で、魔法の才能を開花させた。戦闘訓練を重ねるごとに異世界人同士の戦い以外では負けないほどに強くなった。それは獣人の幹部達ですら太刀打ちできないまでの強さに到達していた。唯一彼らと闘うことができたのは、獣王と竜王と呼ばれる、二人の王だけだったと言う。
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