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死神になります15

アース大陸にもバンガロウ王国が勝利したことは知れ渡った。アース大陸の亜人達を守る戦いだという事は、竜人族が手を貸したことで確実に広まっていった。


「どうするのだ?村長」


 青狼の里では集会が行われていた。赤猿が早々に人間の軍門に下り、ドラゴン一族が総出で人間をマスターと崇めた。さらにドワーフやエルフも、バンガロウ王国に協力する旨を書状に綴り持っていくという。


「我々だけだぞ。未だにアイツらに返事をしていないのは」

「まぁ待て、相手は我々に力を貸してほしいのだろう。ならば向こうから来るのがすじであろう。こちらから動くことはない」

「しかし、村長。本当に来るのか、人間の使者は?」

「来る。他の種族が我々の存在を知っている以上、必ず来る」

「村長がそこまで言うなら我らは待つが、本当にそれでいいのだろうか」


 村の若い衆は、正直アクの力量に怖気づいていた。若い衆の中にはアクを主として生活をしていった方がいいのではないだろうかと考える者が多くなってきている。

 しかし、村長は少しでも村の待遇を良くすることを考えて、重い腰をあげようとはしなかった。


ーーーーーーーーーーーーー


「アク様、本当に今回はやられました」


 謁見の間を後にしたアクの下に、セントハルクがやってきた。作戦ではセントハルクを騙すかたちになっている。

 戦争終結後、セントハルクもこちらの被害の少なさに何も言えないでいるが、それでも思うところはあるのだろう。


「セントハルク様、この度は騙すようなことをしてしまって申し訳ない」

「いや。私の性格も考慮した判断だったのでしょう。流石としか言えません。今回は私がまだ未熟だったという事です。なにより先ほどの魔法はすごかったですね。一度手合せなどできませんか」


 セントハルクをもってしてもコウガの爆発に対処できたかはわからない。


「申し訳ありません。私は戦闘に関しては、正直自信がありません。戦略においては少し知っている知識を使うことができるのですが」

「では兵士を使った模擬戦ではいかがでしょうか」

「それならば、機会があればお手合わせお願いします」

「約束ですぞ」


 まるで少年のような顔で、セントハルクは喜んで何度もアクに握手を求めた。約束できたことで満足したのか、セントハルクはアクの前から去っていく。


「やれやれ、大変な男に見込まれたものだ」

「宰相殿、お話よろしいか?」

「今度はキララかい」

「なんじゃ、タメ息とは失礼じゃな」

「いや、セントハルクに模擬戦の約束をさせられてね」

「ああ。セントハルク殿は一途じゃからな。しつこいじゃろ」

「次が君だから少し気を抜いてしまったよ」

「そうかそうか、まぁそれならば良しとしておこうか。それよりこれからの外交について話したいのだがな」


 キララは久しぶりに会うアクに相談を持ってきた。


「亜人からいくつか書状が届いているらしいね」

「ああ。それも一通や二通ではなくじゃ。かなりの数なっておる」

「アース大陸にもバンガロウ王国の戦いが届いたのだろう。友好を結ぼうと考える者も多くなっている。条件と種族を見極めて有効ならば即同盟を結びたい。しかし、条件や種族が合わなければ申し訳ないがフェアリータウンで世話することにするよ」

「わかったのじゃ。それでは選別の手伝いもお願いするぞ」

「わかったよ。皆、俺は仕事に行くから自由にしてていいよ」


 アクの後ろに控える七人の少女達に、数枚の銀貨を渡して自由行動を取らせる。少女達も思うところがあるらしく、城の中で危険もないということもあり、アクから離れて街へ向かった。

 唯一ヨナだけが、アクの下を離れたくないと言って傍に残った。


「アース大陸に住む殆どの亜人が、こちらとの交流を望んでおる」

「逆に交流を望まなかった亜人種はいるかい?」

「分かっているおるのは、亜人の中では青狼族からまだ何の申告も得られておらんな」

「青狼族か、赤猿達と対立してたからな。あいつらがこっちについたことで賛同しにくいのかもな、他には?」

「あとは妖狐族と黒猫族が条件をつけてきたぐらいじゃな」

「条件?」


 ほとんどの亜人種がバンガロウと交流を結び、かつてのような戦争は起こらないようになりつつある。


「そうじゃ。黒猫族は食料の確保と、黒猫族を狙う窮鼠族を討伐してほしいそうじゃ」

「窮鼠族、猫が鼠を恐れてるのか?」

「窮鼠族は数が多くて、黒猫族はかなり痛い目にあっているそうじゃ」

「なるほどな。まぁそれは確認次第、何とかできるだろ。じゃ妖狐族は?」

「そっちは毎年一定量の酒と戦闘の強い男を一人、妖狐族に寄こしてほしいそうじゃ」

「戦闘の強い男、どれくらい強ければいいんだ?」

「さぁな。その条件の度合いがわからないからな」

「戦闘に強い男か、誰かいたか?」

「軍関係者なら大抵は大丈夫だと思うが、誰を行かせるかじゃな」


 アクの頭の中には一人の男が浮かんでくる。


「ハッサンなんだが、今何してる?」

「彼はリバーサイド方面の作戦を成功させたので、そのままリバーサイドに派遣されるはずじゃ」

「リバーサイド王はあれを成功と呼ぶかな。リバーサイドにはセントハルクに行ってもらおう。シーサイドはバルドベルトに任されば問題ないだろ。バンガロウにはドイルとグラウスがいれば問題ない」

「わかったわかった。ハッサンは妖狐族に送る。ハッサンに恨まれても知らないからな」


 アクはハッサンの行いを認めていない。もっと上手いやり方があったはずだと思ってしまう。


「よし。これで人事及び同盟は終わったな。後は青狼族だけか?」

「そうじゃな、どうするのじゃ?」

「いっそ滅ぼすか?」

「まぁアース大陸の事情は宰相殿に一任されているからな。好きにすればよいのではないか?」

「どうした外務大臣、疲れたか?」

「戦争後の亜人との同盟じゃぞ。問題が山積みじゃからな。疲れもするじゃろ」

「悪かったな。まさかここまで劇的な動きを見せるとは思わなかったんだ」

「もう慣れたのじゃ。そんなことより本当に大丈夫なのか?」

「何がだ?」


 キララにしては珍しい表情に、アクは問い返す。


「亜人じゃよ。確かに私も半年ほど彼女たちと過ごしはした。しかし、全ての亜人を信じていいのか不安でならん」

「それを判断するのもこれからだ。世界は動いた。後は変化した世界に対応していくだけだ」

「ハァ~宰相殿にはいったいどこまで見て見えておるのじゃ?」


 キララがギブアップしたことで、仕事を終えてアクは城を後にする。ヨナは二人の話を聞き疲れたせいか、眠りについてしまった。

 今は馬車に揺られながら、アクの膝を枕にして寝入っている。アクはエビスの商店に行き、いくつか必要な注文をして少女達が来るのを待った。

 全員が帰ってきたことで、転移を使ってフェアリータウンに戻ったのは、バンガロウ連合対セントセルス神興国の戦争終結から一週間後の事であった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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