閑話 その他の勇者達33
ランドを囲むように兵士達が武器を構える。その目には怯えが混じっている者が多く、警戒の色が濃かった。
「これはどういうことだ?」
「あなたは紛れもない土の勇者 金剛 護様です」
「俺の名前はランドだ。金剛なんてやつは知らない」
「そんな言い分は通じません。私はあなた様の世話もしたことがあるので間違うはずがありません」
ランドはアリエルの態度に困惑しながらも、金剛と言う名前が心に響いていた。アリスは戸惑いながら、ランドのローブを掴み、ドロップはランドとアリスを庇うように前に出る。
「あなた達は、私達が他国の民だとわかっていてこの態度をとっているのですか?」
「もちろんわかっております。ドロップ・ドゥ・バロック様、我々はたとえあなたの国との戦争になり、二面戦争になろうとも土の勇者様を殺さなければならないのです」
「何故あなた方はそこまで?」
「私達は彼の狂気を見てしまった。彼は世界の敵になる。殺せるならば今すぐに殺したい」
アリエルから向けられる強い殺意に、ドロップは一歩後ずさる。後ずさったドロップの肩に手が置かれる。
「ドロップ、もういい。こいつらに話しても無駄だ」
ランドはフードを脱ぎ捨て、仮初めに作った火傷も消滅させる。
「ですが!」
「ドロップは下がれ、ここは戦場だ。アリス、ドロップを守れ」
アリスはドロップを自身の後ろに隠して警戒を強める。
「アリエル殿、俺は土の勇者の自覚はないが、それでも敵対するのか?」
アリエルはランドの言葉に対して殺意で応える。
「了解だ。兵士達よ、覚悟はいいか?」
ランドは力を解放する。ランドから撒き散らされた殺気は、兵士達が知るどんなものよりも恐ろしく、自身の死という恐怖を連想させるのに十分なものだった。
気を失う者、髪が白くなる者、あまりのショックに戦意を奪われ、半狂乱に陥る者まで現れる。それでも騎士と呼ばれる鎧に身を包んだ者たちだ、何人かは立ち続けている。その一人、アリエルが気を保たせ気丈にランドを睨みつける。
「おいおい殺気を飛ばしただけだぞ。本番はこれからだ」
ランドは城の壁に手を付くと、壁はランドに巻き付くように吸い出され、ランドの右腕は巨大なゴーレムの腕へと変貌する。
「部分的に変化させるだと」
アリエルは半年前に見た金剛のイメージしか持っていなかった。半年前の金剛ではできなかったことが、ランドになって過ごした半年で冒険者ランクSの称号を獲る程に強くなっていたのだ。気丈にも残っていた騎士達をゴーレムの腕で殴り飛ばすランドは、動きの速度を上げた。
アリエルがまばたきをする間に騎士は誰も立ってはいなかった。
「まだやるかい?」
ランドに睨まれ、アリエルは怯えて腰を抜かす。気を失うことはないが、その目に戦意はなかった。
「お前も敵か?」
ランドは昨日からずっと感じていた視線に対して話しかける。もちろん殺気を忘れずに。
「気付いておいででしたか、お人が悪い」
現れたのは何の気負いも纏わない男だった。ランドは殺気を放ち続けているが、男は笑みすら浮かべている。
「お前は誰だ?」
男の外見は商人のような印象を受けるが、明らかに普通の人と違うところがあった。額に一本の角が生えている、見た目で鬼人と分かるのだ。
「私はカブラギ皇国の者です」
男の言葉にドロップがギョッとして、相手を睨みつける。
「カブラギ皇国の者が何故ここにいる」
「私は特殊な任務を仰せっております。土の勇者様を、カブラギ皇国にご招待したいと申します」
「嘘です。カブラギ皇国は土の勇者様を恨んでいるはずです。招待などと言って、あなたもランド様の命を狙っているのでしょ」
ドロップはカブラギの歴史を勉強した中で、カブラギ皇国が土の勇者に酷い仕打ちを受けたと歴史に記されていた。そんなカブラギ皇国が土の勇者を国に入れるなどありえないことなのだ。
「滅相もございません。これは女王様と最高司令長官である絶貴様、そして水の勇者様の総意です」
水の勇者その言葉を聞いた時、ランドは男に飛びかかりそうになって、鬼人の目の前で止まる。
「水の勇者がいるんだな?」
鬼人もランドの動きに反応できず、ランドの拳を冷や汗を流しながら見つめる。
「はい。水の勇者様はたいそう土の勇者様に会いたいと思われているそうです」
「行こう。カブラギ皇国へ」
ランドの目にアリスもドロップも映ってはいなかった。ランドの心は水の勇者のことだけを考えていた。
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