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閑話 その他の勇者達30

何度も同じ言葉が繰り返される。あなたからは優しいオーラしか出ていないですよ。誰に言われた言葉かわからないが、今までのどの言葉よりもランドの心を揺さぶった。


「どうしたの、ランド?急に泣き出すなんて」


 ランドが涙を流した後に、三人はランドの部屋に集まっていた。アリスは心配そうにランドを見つめて問いかける。


「いや。ドロップに言われた言葉が、昔誰かに言われたような気がして」

「大切な方に言われたのですね」

「大切な方?」

「そうです。だってあのランドさんが涙を出すくらい大切な言葉なんですよ。そんな大切な言葉って、言葉よりも言った人の事が大切だから覚えているんじゃないんですか」


 ドロップの言葉で、ランドはその言葉を言った者の事を思い出そうとするが、何も思い出せない。顔も声もそして言われた言葉も出てこない。本当は何て言ったのだろう。


「ランド、本当に大丈夫?」


 アリスが困惑顔になったランドに、もう一度声をかける。


「ああ。思い出そうとすると頭が痛くなるんだ。この話はもういい。今後の話をしよう」


 ランドが話題を変えると、二人の少女もランドを心配そうに見てから、互いに視線を合わせ、ランドの提案に従うことにした。


「今後と言いますと、具体的にはどういう話ですか」

「ドロップは正直何が目的でルールイスに来たんだ」

「目的ですか?」

「そうだ。俺の目的はルールイスの王都に行き、無くした記憶を取り戻すことにある」

「記憶を取り戻すですか」

「そうだ。そのためにドロップの目的を達成してもらって自由を得たいと思っている」

「自由ですか」

「なんだ、都合が悪いか」

「いえ。そういうわけではないのですが、私の目的は戦争が終わるまで、ルールイス王国に滞在することなんです」

「戦争が終わるまで滞在する?どうして態々危険な場所での滞在を」

「私の父が商人であり貴族であることはお話ししましたよね」


 質問に質問で返されるが、ランドもアリスも頷く。


「父から商人たるもの、戦争を一度経験して来いと言う命令を授かりました。またアスガルト共和国は現在他国に比べてとても弱い国だと父が言っておりました。アスガルト共和国が強くなるために何が必要か、勉強してこいということなのだと思います」


 ドロップは真実を混ぜて本当の理由、ランドの監視のためにルールイスにいる事を隠す。


「そういうことか。じゃあ、この戦争が終わらなければ自由はないと言うことだな」

「そうなりますね。もちろん私を同行させてくれるなら王都にもお付き合いしますよ」


 ドロップは父からランドの傍にいれば死ぬことはないと言われている。


「ついてきてくれるのか?」


 ドロップの言葉にランドの方が驚いて聞き返す。


「もちろんです。先ほどの理事長を見たでしょ。この魔法学園のレベルはあまり高くないでしょう。ならばランドさんやアリスさんの目的に私の目的の折り合いを付ければよいのです」

「そう言ってもらえると助かる」


 ランドは素直に喜んだ。その反面、アリスはドロップのことを疑わしそうに見つめた。


「じゃさっそくなんだが、王都にはいつ行ける?」

「現在は戦争が開始されたばかりです。まだ王国側にも余裕があると思いますので、早いうちに向かいましょう」

「では明日にでも発ちたい」


 ランドは逸る気持ちを抑えきれずにドロップに詰め寄り肩を抱く。


「えっと、ランドさん少し痛いです。離してくれませんか」

「あっすまない」


 ランドは我も忘れて力を込めていた手を離してドロップに謝罪する。


「いえ。学園に外出届も出さねばなりません。戦争をしている場所に近づくための理由も作らなければなりません。しばらくお時間をいただけますか」

「わかった。ドロップ、本当にありがとう」


 ランドの純粋な眼差しにドロップは少し目線を逸らした。


「私は自分の部屋に戻りますので、何かあればお声かけください」


 ランドの言葉や視線に耐えられなくなったドロップは急ぎ足でランドの部屋を後にした。


「ランド、ドロップ少しおかしかったね」

「そうか、俺の望みを叶えるために無理をさせているかもしれないな」

「そう……なのかな?」


 アリスは喜んでいるランドに水を差すのが悪いと思い、その後の言葉が続かなかった。これまでアリスはランドの精神が壊れないようにランドが暴走しないように、支えとなり相棒となりやってきた。

 しかし、ランドの記憶の中に封印された大切な人がいるのだと思うと悲しくなってくる。アリスもランドの部屋を後にして、ドロップに対して思った疑いを一旦胸の中に押し込めてべっドで少し泣いた。


 一週間後、学園側からの外出の許可が下りて三人は学園を後にすることになった。運命の場所にランドは歩き出そうとしていた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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