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死神になります8

 槍の矛先は、光の速さで動くコウガを捉えて離さない。


「見えているのか?」


 コウガはセントハルクの動きに困惑していた。光の速さを追える者などいない。


「来ないのか?」


 セントハルクが余裕の顔で、コウガに問いかける。コウガはセントハルクの発言に苛立ちを覚えた。


「お前なんかに負けるかよ」


 コウガは無鉄砲なところがある。確かに力も、魔法も、強力な素質を持っている、天才であろう。そのためコウガには有り余る自信を持てる要素が数多くある。


 一つの欠点を除いて。


 コウガは光の速さで攻撃をしかける。かつて土の勇者と引き分けたコウガの最強の技だ。光の速度と膨大なエネルギーは最高の攻撃力に変換される。


「いっけぇぇぇ」


 コウガは雄叫びと共にセントハルクに突っ込んでいった。


「甘いな」


 セントハルクは膨大なエネルギーの固まりであるコウガを、魔法で包み込み槍で受け流す。膨大なエネルギーは全てセントセルス神興国軍がいる場所へカウンターとして返される。


「なっ!」


 自身が放った攻撃が全て返され、セントセルス神興国軍が壊滅的な大打撃を受けた。コウガが事の重大さに慌てるが、大きな津波になってセントセルス神興国軍の船を飲み込んでいく。


「自分の能力の制御もできずに、ただむやみやたらと振り回しているだけでは戦いとは呼べんな。お前は膨大な力により確かに強い。だがそれだけだ」


 コウガはセントハルクを見つめる。


「基本はできているようだが、まだまだだな。力にお前自身が追いついていない。それでは力に振り回されているだけだ」


 全てのエネルギーを弾き返され、さらに自軍への多大なる被害を出して、コウガは頭が真っ白になる。


「きさまぁぁぁ!」


 コウガは頭で認識すると同時にセントハルクに飛び掛かった。剣をむちゃくちゃに振り回しているつもりで、バッポスに仕込まれた剣術が体に染み込んでいた。

 しかし、型に嵌った剣術はセントハルクには通じない。セントハルクはまるで稽古をしているように軽く受け流し、コウガの体を打つ。


「グっ」

「私の予想を超えねば勝ちなどないぞ」

「クソッ!」


 コウガは魔法を体の中で爆発させて自爆する。白い爆発がシーサイド全体を包み込むはずだった。


「無駄だ」


 青い魔法防御がコウガだけを包み込み爆発の全てを抑え込んだ。


「水の魔法か」


 コウガが気づいた時には決着がついていた。コウガは全魔法力を使い果たし、艦隊も壊滅状態に追い込まれていた。


「我らの仕事は終わったな」

「はっ!お疲れ様でした」


 バルドベルトは戦慄していた。セントハルクが強いことはわかっていたが、ここまで圧倒的だとは思っていなかった。


「シーサイド王の帰還を待って、バンガロウに帰還する。五百を残して相手の追従及び捕虜、シーサイド陣営の治療に当てよ」

「了解しました」


 セントハルクはシーサイド王の帰還を待って、バンガロウへの帰還の途についた。


ーーーーーーーーーー


 リバーサイド方面司令官テリー・ハンソンはリバーサイドの島を見つめていた。目の前まで迫っているのにもかかわらず、相手は何もしてこない。部隊は確かに港に展開している。船は少ないが、ガレオン船やキャラベル船もあるにはある。


「本当にいいのか?」


 ハッサンがリバーサイド王に質問する。ハッサンはバンガロウから連れてきている。兵を港を囲むように生い茂っている森の中に伏せている。

 港にはリバーサイド軍一万だけが存在している。船には三千人を置き、陸七千人を配置した。


「良いのじゃ、我らは海は好かぬ。リバーサイドは女がメインで戦う。元々我が国では女の方が生まれる確率が高く、男は希少であり重宝される。女たちの一人一人の練度は高いのだ。その力を発揮するために戦いやすい場所で戦った方が有利であろう」

「そうかい、ならあんた等の戦いを見させてもらうよ」


 バンガロウの部隊はドイルとダンにまかせている。


「見ておきな、私達の戦いを」


 リバーサイド女王グリンダ・アマゾネスは気高く、自身に誇りをもっていた。ハッサンは片手をあげて港から離れる。港を見下ろせる丘に上がり、リバーサイド側に何かあれば、駆け下りることもできる場所から戦いを眺める。森に伏せているバンガロウ軍にも見えやすく指示を出しやすい場所なのだ。


「まぁ今は見ものだな」


 ハッサンは面白半分で眺めることに徹していた。リバーサイドを見つめてテリーは怪訝な顔をしていた。明らかに誘っているリバーサイド軍に対して、テリーは実直に考える。


「あまりにもあからさまだな、どうするか」

「艦長、チャンスではないのですか」


 テリーの副官を務めるジェシカ・フレッツが声をかける。


「フレッツ副官、俺は正直バカだ。戦うことしかできない。今は多くの兵士を率いている。そいつらを殺されたくない、どうすればいいだろうか」

「筆頭聖騎士テリー・ハンソン様ですよね」

「肩書きはそうだな、それがどうした」

「いえ。私のイメージしていた方とは全く違ったので」

「そうか、俺は俺だ。それでフレッツ副官はどうすればいいと思う」

「あの~その前に名前ジェシカって呼んでください」

「うん?そうか、ではジェシカ副官。俺の事もテリーでいいぞ」

「はい。テリー艦長」


 何となく二人のやり取りを聞いていると微笑ましくなる。ガレオン船エピード号のメンバーだった。テリーは上には嫌われているが、下にはかなり好かれている。少年のような目をした瞳は澄んでいて、顔は天然な性格が出ていて可愛らしい印象を与えるため女性からの人気も高い。

 今回副官を務めるジェシカはテリーの存在は知っていたが、ここまで天然女性キラーとは思って居なかったため、すぐに陥落した。


「それでジェシカ副官、どうすればいいだろう」

「そうですね。船での戦いは大きく三つに分けられますが、相手は港に近いところで待ち構えていますので、距離によって攻撃方法を変えればいいのではないでしょうか」


 テリーはジェシカの意見を聞いて、素直な作戦を提案する。


「うむ。では最大船速で突っ込むか?」

「いやいや、そんなことしたら止まれなくて船が港に激突して木端微塵になりますよ!」


 ジェシカが驚いてテリーの案を却下する。


「そうなのか、魔法攻撃が来るなら魔法防御を張って突っ込むのが速そうだがな?」


 テリーが考えたの戦いの先手を取るのに最適な方法だった。まさにシーサイドでコウガがやられた手なのだ。テリーは本能的に戦略を思いつく。


「では魔法攻撃の間はそれでいいですが、その後はどうするんですか?」

「そうだな、港に向けて銛を撃ち込んで、船の勢いを止めると言うのはどうだ。さらに魔法防御に回していた風魔法使い達に逆風を吹かせれば止まれるんじゃないか」


 テリーが言ったことは魔法があるからこそ、考え付く作戦なのだ。


「テリー様は船での戦いの経験があるのですか?」

「急にどうした?船の戦いは初めてだぞ。だからこそソクラテスの港を守っている君に副官を頼んだんだ。船の戦いにも慣れているしな」


 ジェシカはテリーの作戦を実行したとき、自軍の圧勝が目に見えるようだった。


「どうかしたか?」

「いえ。あまりにも見事な作戦を考えつかれるので」

「そうか、そんなこと誰でも考えるだろ」

「普通は自軍の戦力と相手の戦力を見極めて有利な戦い方をするものだと思います」

「まぁそれが最善ならそれでいい。だがそれだけでは危ういだろ」


 ジェシカは改めて自分の上司になった男の顔を見る。そこには筆頭聖騎士と呼ばれるほど厳つさは無く、少年のような瞳をした無邪気な顔しかなかった。ジェシカは当たりを引いたと歓喜したくなった。テリーは天然で最強の戦術を生み出す男なのだ。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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