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死神になります7

 シーサイド方面を攻撃しているセントセルス神興国司令官は、聖騎士コウガである。コウガは新参者ではあるが、その実力を聖女と枢機卿に買われて聖騎士になった。さらに今回の作戦の発案者として、負けるわけにはいかないと意気込んでいた。


「敵の数はわかるか?」


 ガレオン船ヒュークライ号に乗り、艦長席に座るコウガが質問する。


「はっ、敵はガレオン船三隻、キャラベル船五十隻ばかりです」

「重量一杯には載せていないだろうからな。数では互角か」


 コウガの部隊も似たような数である。船の中に多くの人を乗せている分、コウガの船隊の方が小回りが利かない。この世界での船の戦いは大きく分けて三つある。


 遠距離、魔法による攻撃と防御。

 中距離、魔法の防御を突き破る物理攻撃、船に備え付けられた銛を撃ち合う。

 近距離、銛も撃ち合えないほどまで船を付けての白兵戦。


「相手の魔法師のレベルに依るが、魔法師の腕はこちらの方が上だろう。まずは遠距離で様子見だな」


 シーサイド王国と、セントセルス神興国の海戦が開始して、すぐにコウガの作戦が裏目に出る。


「艦長、相手が魔法防護を張って突っ込んできます」

「何っ」


 コウガが驚いているうちにシーサイド王国側は電光石火で船を走らせ、全力で突っ込み銛を撃ち込み離脱する。


「海の戦いはまだまだだな。セントセルス将軍よ」


 ガレオン船ベガ号の船の中で、シーサイド王は笑っていた。シーサイド王は海を縄張りにしているので、船での戦いはお手のものだ。相手の得意な土俵で戦う必要などない。相手の苦手を見極めてこそ意味がある。


「要はジャンケンと一緒か」


 コウガはずっと何かに似ていると思い考えていた。そして元の世界のジャンケンを思い出す。


「魔法がパー、銛がチョキ、白兵戦がグーと言うことか、ならこちらが得意なことは相手に丸わかりだというのか、ならやることは決まったな」


 コウガの中で相手の出方が分かって作戦を変更する。


「今度突っ込んできたら、敵の船にぶつけろ。こちらの方が数が多いんだ、白兵戦で一気に蹴散らしてやる」


 コウガは相手が反転してくるのを待ち、こちらも船を反転させる。


「敵が先ほどと同じように魔法防護を張って突っ込んできます」

「やっぱりな。魔法隊に防護を解除させて、銛の用意をしろ。白兵戦の用意だ」


 コウガの指示はすぐに他の船にも伝えられ、各船の乗員は準備に取り掛かる。


「敵の船が急停止しました」

「なんだと!」

「魔法来ます」


 炎や風の刃がコウガ達の船を襲う。被弾した船は沈んでいき、コウガの後ろに控える船が半分を切った。


「読み合いは向こうが上か、このままやられるわけにはいかない」


 コウガは艦長席から立ち上がる。


「副艦長、全体の指示を頼む」


 副艦長を務める聖騎士メルファン・ガドルは老年の騎士ではあるが、コウガを支持してくれる数少ない聖騎士の一人である。


「行かれるのですか?」

「ああ、読み合いでは勝てない。そのかわり相手に絶対負けないもので挑んでくる」

「気を付けなされ。あなたには未来がある。これからセントセルスを背負って立たねばならない」

「わかっています。艦をお願いします」

「まかされよう。ただ我は留守を預かるだけじゃ。生きて戻られよ」


 コウガは頷き、艦長室を出る。相手との距離は遠距離といっていい距離で、しかし、そんなことはコウガに関係なかった。コウガの体は白く光り輝き、体全体を包み込む。光り輝く体は宙に浮き、敵のガレオン船に向かう。光の矢になったコウガを船を守る魔法防護が阻むが、魔法防護をモノともせずにコウガが船を切り裂く。


「なんだと!あの光はなんだ?」


 シーサイド王は隣で沈み逝くガレオン船を見つめて驚きを隠せない。今までは魔法攻撃を受けても全て魔法防護の方が勝ってきていた。十人以上の魔法師による何重にも重ねられた魔法防護なのだ。負けるはずがない。


 無残にも二隻目のガレオン船が沈むことで、現実だと認識させられた。シーサイド王は、次は自分だと覚悟を決めている。光の矢はどこからか放たれた、魔法攻撃が浴びせられる。


「今の攻撃はどこからだ?俺は助かったのか」

「今すぐ調べます」


 光の矢はシーサイドの港に飛んでいった。


「港?セントハルクか」


 シーサイド王は飛んでいる光の矢に対して、魔法を当てることができるなどセントハルクしか考えられなかった。


「彼に命を救われたな。戦況はどうだ?」

「ガレオン船を二隻沈められました。キャラベルも何隻か沈んでいますが、相手の被害の方が甚大です」

「光の矢がいない今がチャンスだ。突っ込むぞ」


 シーサイド王は白兵戦を選択した。ガレオン船を失ったことで、人材も攻撃力も落ちたシーサイド軍は、一番得意な白兵戦を選ぶのが必然的なことだった。


「野郎ども、俺に続け」


 シーサイド王は相手のガレオン船に乗り込み自ら戦いに赴いた。


 光の矢は攻撃を受けたことで驚いた。光の速度で動く自分を捕まえられる者がいることに驚き、さらに魔法の光で覆われた自分に傷を与える者がいることに驚いていた。


「お前だな?」


 光の矢はシーサイドの港上空で、魔法を放った相手を見つけた。甲冑に身を包んだ大柄な男が佇み、コウガを見上げていた。


「お前がさっきの魔法を放ったのか」

「貴様に船を沈められては困るのでな」

「お前が大将か?」

「我はバンガロウ王国最高司令官 セントハルクである」


 甲冑を来た大柄な男が名前を宣言する。


「俺は聖騎士 コウガだ。シーサイド方面司令官をしている」


 コウガも名乗りで返す。コウガはこんなところでバンガロウの最高司令官に会えると思っていなかった。そのため会えた幸福に喜びを感じていた。


「お前を倒せばこの戦いも終わる」

「それはどうかな?」

「どういう意味だ?」

「我がバンガロウは一枚岩ではない。我はあくまで軍の司令官であるだけだ。我々を倒したければ王を討たねばならぬ」

「それはそうだな。だがあんたを倒せばそれも楽になるだろ?」

「できるかな?」


 セントハルクは自身が愛用している槍を構える。なんの変哲もない槍のはずだが、コウガは槍の先端を向けられた瞬間に寒気を感じた。


「あんた強いな」

「お前もな」


 コウガとセントハルクが睨み合う。

いつも読んで頂きありがとうございます。



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