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盗賊になります5

ちゃんと読めるものになっているのだろうか・・・?

 アクはエリスと別れて、ゲオルグが寝泊りしている家を目指した。ゲオルグやダントには家族がいて、寝起きは盗賊団と分けて家族としている。集会所の裏に幹部達用の家が作られていており、一軒の家のドアをノックする。


 コンコン


「は~い」


 家の中から中年の女性の声が聞こえてきた。ドアが開かれると、出てきた女性は優しげな顔に、ふくよかな体格をした女性で、どこか母性を感じさせる人だった。


「あら、あなた見ない顔だねぇ、誰だい?」


 ふくよかな女性は訝しげに、アクのことをジロジロと見る。


「今日からこちらにお世話になっています。アクです」

「あ~あ~、あんたが新入りさんかい、旦那から聞いてるよ。あたしはアンナだよ、ゲオルグの妻だ。よろしくねぇ~」


 アンナさんの声は優しげで親しみやすかった。名乗ると既にゲオルグから聞いていたらしく、笑いながら手を差し出してきた。


「あんた記憶がないんだってね。大変だと思うけど頑張んな。ここは気の良い奴ばかりだからね」


 アンナさんはゲオルグと同じで豪快な人だった。大声で笑いながら両肩をバンバンと叩かれる。


「なんだ、うるせえな」


 アンナさんの笑い声を聞いて、ゲオルグが出てきた。


「こんばんは」


 アクは肩を叩かれながらゲオルグに挨拶をする。


「おう。アクじゃねぇか、こんな時間にどうした?」

「急ぎお話があります。できたらダントさんとサントンにも話したいのですが、お時間いただけますか?」

「うん?おう。なんだか深刻そうな話だな」


 アクの真剣な態度にゲオルグも真剣な顔になる。


「はい。大事な話です」


 アクの真剣な顔にゲオルグが頷いた。


「集会場でお待ちしています」


 アンナさんに別れを告げてゲオルグの家を出る。次にダントの家に行き、同じように伝えてサントンを探す。サントンは男達が寝泊りしている下宿所みたいな小屋で他の団員と話をしていた。

 サントンにも集会場に来てほしいことを伝えて、サントンと共に集会場に入ると、すでにゲオルグもダントも来ていて、ワインを飲んでいた。


「おう、来たか」


 ゲオルグの声に頭を下げて集会場に入室する。


「でっ?なんの用ですか、アク」


 ダントとちゃんと話すのはこれが初めてだ。先ほど家に行ったときは急いでいたし、挨拶のときも本当に挨拶だけで、あまり会話はなかった。


「皆さんに聞きたいんです。盗賊団は何を目指しているのか」

「なんだ?俺達を集めてそんなことかよ」


 ゲオルグが呆れた声を出すが、ダントはアクが何か考えがあるという事が伝わったのか、真面目な顔になる。


「どうしてそんなことを知りたい?」


 ダントの返答にアクが思案顔になる。


「それによって伝えたいことがあります」

「俺達を試すということか?」


 ダントの目が鋭くなり、アクを見据える。


「まぁまぁダントさんいいじゃないですか、話してやれば」


 空気を読まないサントンが間の抜けた声を出すので、ダントも鋭い目つきを引っ込める。


「サントン、ありがとう。ダントさん達を試す気なんてありません。俺は盗賊団の目的が知りたいだけです」

「ダント……俺が話そう」


 今までのやり取りを聞いていて、ゲオルグにも思うところがあったらしく、ゲオルグが話し出す。


「俺達は国の圧政を許せない。国のやり方が許せない。だから自由を勝ち取りたいと思っている」

「それはバンガロウ王国と戦うということですか?」


 ゲオルグの言葉にアクは真剣な目で見つめる。


「そうだ」


 アクの目を真っ直ぐ見つめ、ゲオルグは真剣な眼差しで肯定の言葉を述べた。


「そうですか……」


 ゲオルグの答えにアクは決心を固める。


「では、僕の考えを聞いていただけませんか?」

「話してみろ」


 アクの言葉にゲオルグではなくダントが答えた。


「山の麓にあるクック村を襲うと聞きました。皆さんは、どうやって襲うつもりですか?」

「そらゃ~おめ~正面から突撃して村長をふんじばるのよ」


 ゲオルグが作戦も何もない言葉を返してきた。アクはダントを見る。


「クック村は南と西に門がある。二手に分かれて門が開いた隙を狙って突撃をかける」


 少し作戦ぽくなったが、基本の突撃の部分はゲオルグと同じだった。


「おいらは向かってくるやつをただ切るだけだな」


 盗賊団の中ではサントンは腕が立つらしく。ゲオルグが居なければ盗賊団一といってもいいらしい。そんなサントンに至っては何も考えていなかった。


「それではこちらにも被害が出ます」

「被害がなんだ。戦うならしかたねえだろ。それにな、村長を捕まえちまえば村人は抵抗らしい抵抗もしないだろうぜ。簡単に支配できちまうって訳だ」


 アクが警戒を感じた部分をゲオルグが言葉にする。

 

 このままではダメだ。村人も味方につけなくては王国と戦えない。アクは現代のゲームではRPGの次に戦略ゲームが大好きだった。勇者を強くして魔王を倒すのは確かに楽しい。だけど、戦略ゲームのように勝った者が、悪にも正義にもなれる、そんなゲームの方がもっと面白い。

 自分は勇者になんかなりたくない。だけど魔法も使える。チートにもなれる。異世界に来たのなら自分の全てを使ってスリルを味わいたいと考えていた。


 そのためにここから始めよう。


読んでいただきありがとうございます。

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