死神になります4
開戦より一日が経ち、アクは敵を迎える準備に取り掛かっていた。グラウスからの伝書鳩が朝日と共に届いたのだ。
「予想よりも数が多いな」
アクの補佐を務める白扇が、内容を気にして話しかけてきた。
「まずいことでもあったか?」
「予想よりも1~2万敵の数が多い。う~ん、まぁ仕方ないか、どうせやることは変わらない」
「問題なかろう」
「ああ」
アクの指示の下、兵士達はドレーダル港に多くの仕掛けを施した。すでに一般市民は避難させている。現在いるのは千の兵士と、アク、白扇、七人の少女達だけだ。
アクは千の兵士達を使い、敵の船がもしドレーダル港に現れた場合を想定して、敵を殲滅する手段を用意している。
「アク様、用意ができました。確認していただけますか?」
船団をすでに二部隊に分けているアクは、大きな船がないため小舟を百隻用意することにした。小舟には魔法により、前進だけができるようにしてある。
「確かに例の物も載せているか?」
「はい、言われた通りに」
アクは一隻一隻を確認して、言った通りの物が用意されていることを確認した。さらに陸上に侵略された時のことを考えて準備を怠らない。ドレーダルの街全体を火の海にする最後の手段をアクは考えている。
「全て使わずに最初の一手で済めばいいんだがな」
「何を弱気なことを言っておる。こちらは全戦力を使っているのだぞ。ここで負けることは国が滅びることになるのではないか」
「そういうことだ。だからこそ俺達は少ない数を減らさず敵を倒さなければならない」
「本当にそんなことができるのか?」
「できる。というかやるしかない」
「まぁそうだな。とにかくワシも動くとするか」
白扇はそういうと龍の姿になって、海へ飛んでいく。
「ご主人様、私達もそろそろ作業に取り掛かろうと思います」
「ああ、頼んだ」
七人の少女達にももちろん作業がある。そのために全員連れてきたのだから、今頃フェアリータウンでは、エリスが孤児達と村の切り盛りをしてくれている。フェアリータウンで守護についてくれているミルイ達のためにも頑張らなくてはいけない。
アクは弱気になんてなっていられないなと気合を入れ直す。
アクは海図を見つめて何度繰り返したかわからないシュミレーションを、海路の見つめて開始した。
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セントセルス神興国軍の本陣では筆頭聖騎士及び最強聖騎士が不在となり、元筆頭騎士を務めていた男、ガンドルフ・ボルナレフがほくそ笑んでいた。
「忌々しい奴らは追いだしてやったわ。これでバンガロウ王国をこの本隊だけで制圧できれば、聖女様や枢機卿への評価もかわろう。皆の者、今回の戦は負けられぬぞ」
ガンドルフが本隊に残留している聖騎士達を集めて宴を開いていた。
「何が白銀騎士コウガじゃ。何が青い稲妻テリーじゃ。聖騎士はずっとワシが守ってきたんじゃ。ワシこそが筆頭聖騎士にふさわしいのじゃ」
聖騎士のほとんどが、コウガやテリーに不満を持っている。若い者に出し抜かれて面白くない者ばかりなのだ。しかし、コウガは聖女と枢機卿に気に入られている。テリーは実直で未熟さも残しているが、コウガに負けぬ力を持っている。さらに二人は仲もよため、殆どの場合一緒に過ごしていることが多い。闇討ちも実力行使もできない状態で、不満だけが溜まっていた。
正攻法でしか挽回の機会がないその他の聖騎士達は、今回のバンガロウ王国及びアース大陸侵略作戦にかなりの意気込みで臨んでいた。
「それで今回はどういった作戦で行くのですか」
ガンドルフに副官を務めることになった聖騎士 ミッシェル・ベルドランが話しかける。
「隊を分けるなど愚の骨頂。我らは6万の軍勢が一丸となって、バンガロウ王国に向かって進軍する。港にある船は全て明日ソクラテスの港に集合させよ」
「ははっ」
聖騎士達はいきり立ち、酒を片手に何度目かの乾杯をする。
「ワシの時代が戻ってくるのじゃ」
ガンドルフは三日後にバンガロウに上陸している自分を想像した。
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