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死神になります3

 アクは相手の数を正確に把握するためグラウスを潜入させていた。グラウスの自身の魔法である、陽炎を使って姿を消すことができる。グラウスが侵入したのは、ソクラテスの街であった。敵の本隊が駐在している場所だ。

 アクの指示では、敵も分散して半分以上がシーサイド、リバーサイドに行っているはずだと言われていた。グラウスは、そのため本隊にはどれだけの人数が残っているのか調べていたの。


「これは不味くないか、ざっと見て6万はいるぞ」


 グラウスは敵の大将や人数、船の数、物資など調べられることは全て調べた。さらに相手の作戦や、どうして多く残ったかまで調べあげた。


「この情報を軍師殿に」


 グラウスは、いつも一人で行動する。迅速に情報を届けるためにはこの方が動きやすいのだ。アクに届ける手段を用意して、自身の逃走ルートも考えなければならない。

 今回は海という隔たりがあり、船を使って海を渡っても三日はかかるため、アクの転移の魔法により送るだけ送ってもらった。その代わり帰りの方法はなく、バンガロウに帰るための方法を自身で考えなくてはならない。情報だけはアクに届けるため伝書鳩を用意してきた。


「どうかバンガロウに栄光あれ」


 グラウスはバンガロウに帰るため、変装してセントセルス神興国の船に乗ることにした。


ーーーーーーーーーー


 セントハルクはシーサイドに着いてからシーサイド王都を目指した。シーサイドの王は海賊王とも呼ばれていて、シーサイドの本業は海での漁師活動と、海の魔物を倒して糧を得る海賊稼業である。

 そのため力を全てとしている節があり、サントン王が一度シーサイドに訪れた時に海賊王デスター・バイキングを完膚無きまでに叩きのめした。それ以来シーサイドはバンガロウの配下となった。サントン王に敗北したことは、海賊王デスター自身が宣言したものだった。


「お前がバンガロウの盾セントハルク卿か?」


 セントハルクの前に立っている男は、鋭い目付きに青い短髪、片目が潰れていて十字に傷がついている。海賊王デスター・バイキングは、セントハルクを迎えるため態々王都に帰還してきたのだ。


「盾かどうかは知らんが、私が今回の最高司令官を任されたセントハルクだ。あなたがデスター王か?」

「そうだ。今回の戦いを共に戦えることを嬉しく思う」


 海賊王に握手を求められて握り返す。セントハルクは腕力に自信があったが、デスターも負けじと握り返してくる。


「なかなかなものだな」


 お互いに額に汗をかいて握手を離す。


「将軍。よろしいでしょうか?」


 二人の挨拶が終わったのを見計らって、バルドベルトが声をかける。


「ああ、またせたな」

「はっ!セントハルク様の副官を務めます、バルドベルトと申します」

「おお。お前の名前も聞いたことがあるぞ。よろしく頼む」


 セントハルクと同じように握手を求められるが、軽く受け流しておく。


「はははは。面白い二人だな、よいよい。今宵は王城にて歓迎しよう」


 セントハルクはデスターの歓迎を受け、さらに現状を知ることになる。


「酒は進んでおるか?」


 宴の席でデスターがセントハルクに話しかける。


「はい。楽しませていただいております」

「がははは、嘘を吐くなよ。お主は酒などより戦場でこそ酔うタイプだ」

「そうかもしれません」

「セントハルク殿は知っているのか?」

「何をでしょうか?」

「うむ。敵は三方向に隊を分けたようだ。このシーサイドに二万の軍勢を差し向けてきた」

「なんですと?」


 セントハルクが驚きながら立ち上がる。


「どうした、それを見越してここに来てくれたのではないのか」


 デスターは試すような視線でセントハルクを見る。


「そうなのでしょうな。私はまんまと軍師にしてやられました」

「軍師?」

「アク宰相です。別名は死神軍師 その方が他国には知られているかと」

「ああ。バンガロウ王国を滅ぼした張本人か、あのサントン王を王にした者だな」

「はい」

「なるほどな。その男は死神の名に恥じぬ働きをするようだ」

「しかし、こちらに二万と言うことは、リバーサイドにも二万、バンガロウには本隊の六万もの軍勢が押し寄せることになる」

「それすらも軍師殿はわかっているのかもな」


 デスターの言葉にセントハルクは会議場でのアクの表情を思い出す。軍師殿はできると言った、ならば自分がすることは目の前の敵に集中することだ。


 セントハルクは窓から対するであろう、部隊がいる方向を見つめた。


ーーーーーーーーーー


 ハッサン&ドイルコンビも持て成しを受けていた。こちらはリバーサイド王、女帝王グリンダ・アマゾネスが迎えてくれる。リバーサイドは女性を主として生活をしている。女が戦い、男が家を守る。

 しかし女帝王グリンダの前にサントンが現れた。


「お前よりも強く大きな男をお前の許にやる。お前の夫とするが良い。その代わり我の物となれ」


 グリンダは配下と約束をする際に、サントンに決闘を申し込んだ。アマゾネスは強き者こそが王になれる、アマゾネス最強がグリンダなのだ。

 そんなグリンダに、サントンは決闘を受けて圧勝した。しかし、自分よりも強き者を使者として使わせる約束をして、アマゾネスの地リバーサイドを去った。そしてやってきたのが、ハッサンなのだ。


 宴の席が設けられ持て成しを受けながら、ハッサンは宴のど真ん中に作られたリングに上げられる。そこにはハッサンと同じぐらい筋肉ムキムキな女性が二刀の剣を持って腕を組んでいた。


「えっと、これはどういうことだ?」

「お前の王であるサントン王は言った。我を倒して我の夫になる者を使者に送ると、そのものが我に勝ったとき初めて本当の同盟が成立する」

「ええええええ!!!聞いてないぞ」


 ハッサンが驚いているとドイルがアクから渡されていた手紙を渡す。そこにはサントンが交わした約定とアクからの結婚祝いの言葉が書かれていた。


「あいつら~」

「お主は我より弱いのか?」

「なんだと!俺が弱いだと」

「自信がなければ帰るが良い」


 ハッサンは頭に血が上り、愛刀の黒い魔剣を背中から抜く。


「どっからでも来い」


 戦闘モードになり、先程の狼狽えた様子は一変した。


「ほう~なかなかやるな。サントン王が言うこともあながち嘘ではなさそうだ」


 ハッサンが魔剣を顔の高さまで上げて構える。対するグリンダの身を屈める姿勢は、褐色の肌とあいまって獰猛な黒豹を連想させる。


「いくぞ」


 先に動いたのはグリンダの方だ。ムキムキの筋肉に褐色の肌は躍動感があり、しなやかな動きで素早さはサントンを上まわる。


「はぁ!」


 掛け声とともに二刀の剣が左右から襲い掛かる。


「ふん」


 ハッサンは魔剣を左右に振るのではなく一刀を弾き飛ばし、グリンダは飛ばされた勢いで体勢を崩す。


「軽いな」

「まだまだ」


 グリンダが連続で攻撃を繰り返し、ハッサンをけん制を入れる。グリンダの猛攻に対して、ハッサンは微動だにしない。


「貴様、いい加減に本気でやれ!」


 グリンダがハッサンに対して怒りを向ける。


「お前の事はわかった」


 ハッサンは一度だけ前に出る。その一歩でグリンダの連撃を一瞬止め、ハッサンの魔剣がグリンダの首筋で止められる。


「終わりだ」


 ハッサンが剣を背中に戻す。


「うむ。我の負けだな」


 宴の場にどよめきが起きる。


「皆の者見ていたであろう。我の負けだ。我らは強き種を手に入れた。バンガロウ王国の軍門に下る。よいな」

「ははぁ!」


 宴で盛り上がっていた者達は平服しハッサンを称える。その中で姿を消したグリンダをハッサンは横目で見ていた。ハッサン自身も未だに納得できずに溜息を吐く。


「新たな王よ、我々をお導きください」


 ハッサンの前に幾人もの女や男が跪き、ハッサンを王と崇める。


「いや、俺はまだ結婚とか」

「いい加減に諦めよ、婿殿」


 ハッサンは声のした方を見る。そこにはドレスアップしたグリンダがいた。シルバーのドレスに白い髪、褐色の肌をを引き立てる色使いにハッサンは絶句する。

 剣を持って戦いをしていたときはなんと女らしくないと思ったが、無駄な脂肪がない体はスレンダーで、しかし女性らしい部分はしっかりと強調されていた。


「なんじゃ何か言ったらどうなのじゃ。妻がドレスアップして戻ってきたのだぞ」

「綺麗だ……」


 ハッサンはグリンダの言葉に反応したように言葉を発する。


「なっなんじゃ、素直に言えるではないか」


 ハッサンの意外な反応にグリンダの方が面食らう。意外にお似合いの二人だな~と思うドイルだった。

いつも読んで頂きありがとうごいざます。

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