閑話 その他の勇者達28
遅くなりました。
ランドはドロップの護衛をしてルールイス王国入りを果たしていた。名目上はドロップの護衛となっているが、ランドにも目的がある。それは、ルールイス王都に行くことであり、水の勇者に会う事だ。そうすれば失われた記憶が甦るのではないかと思っている。
現在はルールイス王国の西にある魔法学院に来ている。ドロップが通うこの学校に、どうして居るかというと、ランドとアリスはドロップと共に護衛として入学させられたからだ。
「こんなことは契約にない」
「ですが、ルールイス王国は戦争中です。護衛がいなくなっては、私は死ぬかもしれませんよ」
ドロップの口調は凛としていたが、どこか震えてランドだけが頼りだと言っていた。ランドも年下の女性を無下にはできなくて、なし崩し的に入学が決まった。三人は理事長に呼ばれて理事長室にきていた。
「君達が新しく転入してきた者達かね?」
「はい。ドロップ・ドゥ・バロックです。こちらは護衛兼従者のランドとアリスです」
二人はドロップに紹介されて頭を下げる。
「ふむ。ワシはこのエリック魔法学院理事長をしている、ドメフスルー・バッチェスじゃ。お主らの入学を認める。因みに我が国は戦争状態にあり、魔法学校上級生はルールイス王国の要望により、魔法兵として出兵しておる」
ドメフスルーの見た目は、白い顎鬚を伸ばしたいかにも魔法使いと言う雰囲気を出している。更に理事長と職業のせいか、どこか厳格な印象を受ける。
「知っています。大変な時に入学を申し上げてしまいまして」
「いやいや。ドロップ君の入学は戦争が始まる前から決まっておったことじゃ」
理事長がそういいながら、ランドとアリスを見る。
「二人は決して怪しい者ではありません」
「ドロップ君。二人はどうも学院にふさわしくないと思うのだがね」
理事長はネチネチと、二人の態度や服装の着こなしなどいちいち忠告してくる。
「俺は別にかまわないけどな」
理事長とドロップのやり取りに、嫌気がさしてきたランドが言葉を挟む。ランドは潜在的に教師と言うものが信じられないとなんとなく思っていた。
「何を言っているんですか、ランドさん」
「相手が信用しないんだ。俺達にはどうしようもない。これも仕事だと割り切っていたが、相手が断るならしかたないだろ?」
ランドの理屈もわかる。ランドの言葉に理事長は何度も頷いている。
「理事長。私の護衛を、いえ友人を馬鹿にしたこと覚えておきます。私の父は名のある貴族です。貴族の名を穢したことお忘れなく」
ドロップが本気で怒り、ランドは黙る。理事長もあまりの剣幕に言葉を失う。
「あなたは聖職者として見た目で判断するのですか?あなたのような方が理事長を務めている学校など、もしかしたら来る意味が無かったかもしれませんね」
ドロップは理事長に吐き捨てて理事長室を出る。ランド達もドロップに続いて部屋を出る。
「忌々しい小娘め、ワシの忠告を聞かんとは痛い目を見るぞ」
厳格な雰囲気を出していた理事長はいなくなり、小娘に言い負かされ憎々しいモノを見るように扉を見つめ続けてる老人いるだけだった。
「よかったのか?」
ランドが心配そうにドロップに聞く。
「あんな人はあれぐらい言っても堪えません。もっと言ってやりたいぐらいです」
「お前は意外に怒りやすいんだな」
「そんなことはありません。大切な人が馬鹿にされたら怒るのが普通でしょ?」
「そうか?」
「ドロップ、ランドにそんな話をしても無駄だよ」
アリスは残念な人を見る目でランドを見ていた。
「そんなことはありません。ランドさんはとても優しいオーラが出ています」
『貴方はとても優しいオーラを持った人よ』ドロップの言葉は、ランドの中で心に響く言葉だった。何かを思い出しそうになるが、わからない。
「ランドさん?」
ドロップとアリスがランドを見て驚く。ランドは気づかない間に泣いていた。
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