召喚された。
暇つぶしで書いているので読み難さ満点です。
それでも良い方は、読んでみてください。
その日は、会社に出勤しようと家を出た。
出勤前、いつも通る交差点で信号が青になるのを待っていた。
車道に小学生の男の子が飛び出していく姿が見えた。
まだ信号は赤いままで……トラックは男の子に気付いていないのか、スピードを緩めずに男の子に向かっていく。
あっ……あの子死んだな。
飛び出して助ける?無理無理、ヒーローなんてなれないって、なる気もないしな。突然の出来事に体が動くほど出来た人間じゃないよ、俺は・・・
咄嗟に頭の中はフル回転していく。そのほとんどが自分に対する言い訳を考えていた。頭とは別に、身体の方は事故現場を見ようと身を乗り出す。そんな俺の隣にいた高校生が飛び出していった。
ヒーローか、アイツは……
トラックから男の子を救うため、全力で走り出した高校生は、男の子を突き飛ばしてトラックに轢かれてしまった。地面に叩きつけられるシーンが繰り広げられると思っていた。
突然少年が落ちていく地面が光り出す。少年は光の中に飲み込まれて消えてしまう。光は輝きを増して、交差点で信号待ちをしていた俺も包み込んでいく。
光が収まると見知らぬ景色が広がっていた。レンガで作られた壁、光り続ける地面、目の前には白いフードをかぶった集団が立っていた。
「よくぞおいでくださいました!勇者様」
白いフードを被った集団から、歓迎の言葉を口にしながら一人が前に出る。目の前まで来ると、両膝を地面に突き、両手を胸の前で組んだ姿勢をとる。それは祈りを捧げるようなポーズに見えた。
「私共の勝手な呼び出しに応じて頂き、ありがとうございます」
白いフードは可愛らしい女性の声だった。後ろに控えていたフード集団は、その場で彼女と同じポーズをとっていく。集団で祈りを捧げられているようで気持ち悪い。どうしていいのかわからなくて戸惑っていた俺は辺りを見渡した。
先ほど車に轢かれた高校生が隣に立っていた。あれ?こいつ死んだんじゃね?とか思っていたら頭が痛くなり、少年を轢いたトラックが横転して、交差点で信号待ちしていた俺の方に突っ込んでくる映像が浮かんできた。
そうか、俺も死んだのか……頭痛が治まると、頭の中が冷めて冷静になっていた。そうすると視野が広くなる。高校生の少年以外にも交差点で信号待ちをしていた人たちが立っていた。
全部で六人か・・・
死ぬ寸前に異世界に召喚されたんだと理解できた。そういう系の小説が好きだったので、すぐにその答えにたどり着けた。
胸の中が熱くなる。異世界召喚!!!つまらないと思っていた日常が一変する。これを待っていたんだ。つまらない日常とおさらばだ。でも、待てよ・・・俺は勇者なんかなりたくない。昔から勇者とかヒーローってやつに虫唾が走る性質だった。
俺は魔王とか悪役みたいに我がままに生きたい。異世界にきたのなら、冒険者になってハーレムとか作って獣人とかエルフと仲良くなりたい。
思考が良からぬことを考えだし始めると、外野の状況が変わり出した。
「すみません。状況がわからないのですが、あなた達は誰ですか?」
先ほど男の子を庇って車に轢かれた高校生が代表して、フードの女性に話しかけていた。少年は中性的な容姿のイケメンで、身長も高い。正直こいつが一番勇者っぽい。こいつ嫌いだな……
「これは申し訳ありません」
そういうと一歩前に出て祈りを捧げていた白フードの女性が、フードを脱いで顔を出す。フードの中から出てきた顔は、金髪碧眼の絶世の美女だった。北欧美女という感じを受ける色白で、か弱い感じの美女が微笑んでいる。
歳は高校生より少し上ぐらいで、二十歳ぐらいだろうか?白いローブを着ているので体の線は見えないが、悪くないと思い舌なめずりしながら女性を凝視する。
「ルールイス王国 第一王女、フフリア・ミシェル・ルールイスと申します。皆様を異世界から召喚させていただいたものです」
キタ~~~!!!王女様だよ。
しかも異世界召喚も当たっていた。でも、なんで六人も召喚されているんだ。普通、勇者は一人じゃないのか?
「こちらこそ初めまして、天野 光賀です。それで勇者ってなんですか?」
「アマノ コウガ様ですね。勇者とは、この世界が窮地に立たされたとき、異世界から召還を行なって現れた方々のことを言います。今回の勇者召喚では六人の勇者様を召喚することができました」
先ほど数えた通り、俺を入れて確かに六人いる。
「すみません。皆様には申し訳ありませんが、謁見の間で詳しい話をしますので、ついてきていただけませんか?」
王女様の申し出に天野以外の五人は顔を見合わせる。
「はい。もちろんです」
その五人を無視するように、天野が二つ返事で答えを返していた。
おいおい、他の奴の意見とか聞かないのかよ。
天野の言葉に突っ込みそうになるが、他に選択肢もないので仕方なく従うことにした。他の奴らも俺と同意見らしく黙っている。
「度々申し訳ございません。皆様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
王女様が天野以外の召喚された者に目を向けてきた。一番最初に目があったので、俺から名乗ることにする。
「阿久井 重です。年は27歳、会社で営業をしていました」
後ろで手を繋いでいるカップルに視線が移る。
「金剛 護。こっちは白雪 雫です。歳は16、高校一年です」
金剛の後ろに隠れている白雪の代わりに、金剛が二人分の自己紹介をした。金剛はまだ幼さを残しているが、不良風の雰囲気とツリ上がった目のせいで人相の悪さを強調している。しっかりとした体つきをした男らしさを感じさせる眉の太い少年だ。
後ろに隠れている白雪は、小柄な女の子で、何も話していないのに先ほどからオドオドしていて、人見知りが酷いタイプなんだろうか?二人は召喚されてからずっと手を握り合っている。
・・・リア充うぜぇ
「神代 火鉢です。歳は18、高校3年です」
神代は黒髪ロングで切れ長な瞳が気の強さを強調している。身長が170cmほどあり、スタイルがいい。モデル体型というやつだろう。出るところは出ているし、引っ込むところは引っ込んでいる。10人の男がいれば、10人とも振り返るんじゃないだろうかと思うほど、整った顔をした美人系だ。
「安城 風香です。歳は18歳、ヒーちゃんと同じ高校3年です」
安城は神代とは逆に、おっとりとした雰囲気で癒される印象だ。彼女が表すのは胸だろう。召喚された女性陣の中で飛び出している。というか普通のサイズじゃない。滅多にお目にかかれないビッグサイズだ。視線が胸にしかいかないのは、男の悲しい性だろう。
一通り自己紹介を終えた召喚者達をもう一度見渡す。
「自己紹介ありがとうございます。では、皆様を謁見の間にご案内いたします」
王女は白フードに俺たちの名前を告げてから、王の待つ謁見の間へ案内を始めた。
読んで頂きありがとうございます。