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勇者が来た日

その日、空が割れた。


 音は遅れてやってきた。


 ――ドン、と。


 地面の奥から叩きつけられるような衝撃に、村の空気が揺れる。


 昼間だというのに、空は白く焼けていた。


 光だ。


 太陽とは違う、まっすぐに落ちてくる光。


 それが、村の外れに突き刺さっていた。


「……今の、何だ?」


 誰かが呟く。


 誰も答えられない。


 ただの村だ。

 魔物が出ることもあるが、特別な何かがあるわけじゃない。


 そんな場所に、あんなものが落ちてくる理由なんてない。


 それでも、人は集まる。


 恐る恐る、光の落ちた場所へと足を運ぶ。


 そこにいたのは、一人の男だった。


 金色の髪。

 見たこともない服。

 そして、場違いなほど軽い顔。


「うわ、マジで来ちゃったわ。異世界」


 男はそう言って、笑った。


「おい……あんた、大丈夫なのか?」


 村の大人が声をかける。


 男は軽く手を振った。


「大丈夫大丈夫。俺、チート貰ってるから」


「ちーと……?」


「まぁ簡単に言うと、最強ってこと」


 その時は、誰も意味を理解していなかった。


 最初は、希望だった。


 魔物が出た。


 村の近くに現れたのは、いつもより大きな個体。


 普段なら、数人がかりで時間をかけて倒す相手だ。


 だが――


「へぇ、あれが魔物か」


 男が一歩、前に出る。


 軽い足取り。


 まるで、散歩でもしているみたいに。


「まぁ、試しにやってみるか」


 次の瞬間。


 光が、広がった。


 空気が消えたような静寂のあと、地面が抉れる。


 魔物は、跡形もなく消えていた。


「……え?」


 誰かが声を漏らす。


「おー、すげぇ。マジで一発じゃん」


 男は、自分の手を見て笑った。


 歓声が上がる。


「すごい……!」


「助かった……!」


「これなら、この辺りも安全になる!」


 子供たちが駆け寄り、

 大人たちは安堵の息をつく。


 ――その時、誰も疑わなかった。


 これは、救いなのだと。


 次の日。


 また魔物が現れた。


 数が多い。


 だが、問題ない。


 あの男がいる。


「ちょっと範囲広げるか」


 軽い声だった。


 止める者はいなかった。


 光が、再び広がる。


 今度は、広すぎた。


 地面が消えた。


 家が消えた。


 人が――


「……あ」


 声にならない声が、漏れる。


 瓦礫の中から、誰かの手が見える。


 動かない。


「おい……おい……!」


 誰かが叫ぶ。


 男は振り返った。


「あー……巻き込まれたか」


 少しだけ、困った顔をして。


「まぁでも、魔物は倒したし問題ないでしょ」


 その一言で。


 何かが、完全に終わった。


 歓声は消えた。

 希望も消えた。

 残ったのは、ただの現実だった。


 ――この世界には、“勇者”がいるらしい。


 それが、これだ。

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