9. 街の心拍
地下ドームを抜け、街に戻ると、市民たちのざわめきが都市全体の残響として押し寄せてきた。ホログラムが微かに揺れ、壁面が振動する。赤い侵蝕波の影響が徐々に広がり、街全体がまるで一つの生き物のように脈打っていた。
灯はゼロ能力で市民の心理波を読み取り、街の心拍を感じ取る。感情の波が、建物や道路を通じて都市全体に伝わる。この街の鼓動を制御できれば、心理戦の優位は確実だ。ルカも捕食能力で赤い侵蝕波を吸収しつつ、都市の波形に合わせて自分の力を調整する。
「街が……息をしているみたいだ」ルカの声には驚きと興奮が混じる。灯はうなずき、都市の心拍に同調するように残響波を操作する。微細な振動とホログラムの反射を使い、手先の動きを先読みする戦術を組み立てる。
侵蝕波が再び動き出す。市民の心理と都市の残響が複雑に絡み合い、予測不能な波形を生む。灯はゼロ反響能力をフル活用し、波形を逆流させることで心理的圧力を敵にかける。ルカは捕食で波を制御し、心理戦のテンポを二人で調整する。
都市の心拍に合わせ、赤い侵蝕波が押し返される瞬間、地下ドームとは異なる緊張感が二人を包む。市民の恐怖、混乱、期待がすべて波となって街に響き、心理戦は都市全体を舞台にしたものへと拡大した。
「これが……都市の心理戦」灯の心に言葉が浮かぶ。ルカもまた、自分の力が都市規模で意味を持つことを理解した。街の心拍に同調する二人の力は、残響都市を操る序章に過ぎない。赤い侵蝕波の先には、さらに深い心理戦と未知の試練が待ち受けていた。




