3. 赤い侵蝕の街角
街角に立つと、赤い侵蝕波が通りを覆っていた。広告ホログラムの光がねじれ、建物の壁面が歪む。市民たちは動揺し、ざわめきが悲鳴に変わる。その混乱の中心に、灯とルカは立っていた。
「こんな……波、初めて見る」灯の声は低く、だが冷静だった。ゼロ能力は感情波の影響を受けないが、都市の残響を観察する力は必要だ。侵蝕波の動き、周囲の市民の心理、ホログラムの反射――すべてを分析して次の行動を決める。
ルカは侵蝕波の中心に近づく。青白い瞳が光り、微かに波が吸収されていく。だが彼女の体に負荷がかかる。捕食能力は便利だが、消耗も大きい。灯はそれを見て、都市全体の残響をどう活用するか瞬時に判断する。
「ここで止めるわけにはいかない」ルカがつぶやき、侵蝕波の暴走に対して自分の能力を最大限に使う。灯もゼロ反響を微かに発動し、侵蝕波の動きを逆流させるように操作する。二人の力が共鳴すると、赤い波は一瞬だけ落ち着き、街角に静けさが戻る。
だが、静寂は長くは続かない。侵蝕波はまた新たな形で街路を覆い始める。広告ホログラムがひび割れ、建物の壁面が残響で揺れる。市民たちは恐怖で足を止め、残響都市の脅威を痛感する。
「この街は……何かに操られている」灯は呟く。ルカはうなずき、互いに目を合わせた。地下ドームへと逃げ込むか、それともこの場で戦うか。二人の判断が、残響都市の運命に大きく影響する。
初めての街角での戦い、赤い侵蝕波との遭遇。これは序章のただ中に過ぎなかった。心理戦、残響ギミック、そして都市全体の試練が、二人を待ち受けている。




