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1. 目覚めのゼロ
朝の都市はいつもと変わらずざわめいていた。広告ホログラムが空中に浮かび、赤い侵蝕波が通りを走る。だが、白石灯にはその赤い波はただの光の揺らぎに過ぎなかった。ゼロ能力――自分の感情波が他者に影響されない特異な能力。だがその代償として、都市の鼓動も、市民の感情も、すべて遠くの音のようにしか感じられない。
歩道を進む灯の前に、ふと黒髪の少女が立ち止まった。蒼い瞳が異様に冷静で、灯の存在をじっと観察している。彼女の名はルカ。感情を“捕食”する能力を持つ少女だった。灯は直感的に、彼女がこの街に潜む何か重大な存在であることを悟る。彼女の周囲だけ、赤い侵蝕波が奇妙に吸収され、街の残響が歪むように感じられた。
その瞬間、街路の赤い侵蝕波が突如増幅。市民のざわめきが悲鳴に変わり、広告ホログラムの映像が乱れ始める。灯とルカは無言で地下ドームへ逃げ込む。古い配管とホログラムが絡み合った迷路の中、侵蝕波が反射し、三層カウントの緊張感が彼らを包む。
「……君、ゼロ?」ルカの声は低く、だが確信に満ちていた。灯は黙って頷く。二人は、目の前に迫る心理戦と都市全体の残響波に立ち向かう覚悟を決める。初めての共闘、その一歩が、残響都市の運命を大きく揺らす序章となった。




