わたしの話 03
ネットニュースに掲示板。果ては関係なさそうなVtuberの切り抜きまで。わたしは気が付けば、児童相談所の年齢制限軟化調べるのそっちのけで、烏取県混海駅前通り女児誘拐事件について調べていた。
ナツガキ――夏垣。
その名前に、聞き覚えがある、どころの話ではなかった。
わたしの苗字なのである。
夏垣和花。それがわたしの名前。
混海市に住んでいるわけじゃないけど、わたしが通う学校の最寄り駅は混海駅を通過するくらいには、遠くない。遊びに行くときとかも、混海駅を経由した先にある駅で乗り換えて都会へと向かうので、ちょっと遠いけど、十分生活圏内の場所だとは思う。
ただ、聞き込み調査がされる範囲ではなかったのか、わたしがこの女の子のことを知らないか、と警察に聞かれるようなことはなかった。聞かれていたら流石に覚えている。
母がおかしくなった日付に時効を迎えた事件の、目撃情報に上がる人物の名前が『ナツガキ』。
ほんの少しの接点ではあるものの、もしかして、と思う気持ちが止められなかった。馬鹿らしい、と思いながらも、何か母が関係しているのでは、と思ってしまう。
調べた今の今まで、すっかりこの事件のことを忘れていたが、そう言えば、ニュースをテレビで見たような記憶があった。結構近いところの駅で女の子が誘拐されたんだ、とか、そんなことを思ったような気がする。あれからもう五年も経ったのか。
あのとき、母は一体どんな反応をしていたか。思い出せない、ということは、あまり違和感のあるようなリアクションを取っていなかったということだと思うけど。
もし、母が犯人だとしたら。
いや、そんなはずはない。少し気が強くて、オカルトを異常に毛嫌いしているところ以外は、いたって普通の母親。ネットが発達して、『親ガチャ』とか『毒親』とか、そういう話をよく見かけるようになったけれど、そう考えると、うちの両親は『良親』とかになるんじゃないだろうか。
家庭にだって恵まれている。特別裕福だと思ったことはないけれど、貧乏だ、と感じたことがない。何かやりたいな、と思い立ったとき、最初にお金の問題が浮上しない程度には、収入があるのだと思う。昔から、習い事も、欲しいものも、常識的な範囲では、自由にさせてもらっていた。
まあ、今はこの有様だけど。
母が犯人じゃない証拠が欲しい。
そう考え、わたしはもう少し、誘拐事件について、調べてみようと検索アプリの検索欄に、『烏取県混海駅前通り女児誘拐事件』と打ち込んだ。




