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わたしの話 17

「そ、そんなわけ……」


 仮に母が誘拐犯だったとして。被害者である優羽ちゃんが母が喜多日部で用事を済ませている間に、ただ喜多日部の前で突っ立って待っているわけがない。母が仮に屈強な男性で、走ったところですぐに追いつかれるというなら話はまた変わってくるかもしれないけれど、母が喜多日部で買い物をしているという状況は、まさに逃げるチャンス。

 ずっと洗脳されるように監禁され、逃げられないと思っているならまだしも、当日に捕まっただけなら、そんな主従関係のようなものが出来上がっているとは思えない。もし、母が優羽ちゃんを監禁している生活を送っていたら、流石にわたしだって気が付くだろう。


 でも――でも。

 目撃したという人物は、掲示板に、優羽ちゃんが自ら車に乗っていた、と書いていた。送迎だと勘違いするくらいなら、それは本当に自然な行動だったのだろう。


 分からない。

 母は犯罪者なんかじゃないって、思いたくて事件を調べ始めたはずなのに。

 結果は、これ?


「――……あれ?」


 とにかく、一度、散乱させてしまった家計簿を元に戻そうとして、メモが一枚ないことに気が付く。先程落としてしまったときに、どこかへと滑り込んだのだろうか。ぺらぺらな紙一枚だから、ありえなくはない。

 慌てて周囲を見てみるが、少なくとも床には見当たらなかった。まずい、ちゃんと元に戻さないと。今の母に、家計簿をつける能力があるとは思えないけど、でも、急に犬のようになってしまったのだ。突然戻ることもあるかもしれない。

 そうでなくとも、勝手に部屋へと入ったことはバレたくない。


「メモ……メモ……、あった」


 床から目線を上げると、本棚の中にメモサイズの紙が引っ掛かっているのを見つけた。本棚の中に納まっている、鍵付きの小箱の奥に半分差し込むように挟まっている。

 わたしはその小箱を本棚から出して、メモ紙を取る。


 ――カタリ。


 小箱の中から、小さな音がした。小箱は、わたしが小学生の頃に使っていた貯金箱だ。貯金箱、といっても、鍵付きボックスなだけでコインを入れていく穴はなく、普通の箱のように開けられるタイプで、どちらかというと宝物入れにする小学生の方が多いと思う。ただ、鍵は元々セットでつけられていた簡単に壊せそうな気休め程度の安っぽいものではなく、三桁のダイヤル錠に変わっている。

 自分の通帳を持てるようになってから、貯金箱での貯金を辞めたので、捨てようと思ったのだが、母が使うと言ったので譲ったが……あの後、何度か見たことはあるけれど、こんな丈夫そうな鍵はついていなかった。


 最後にこの箱を見たのはいつだったか思い出せないが――少なくとも、五年以上前かもしれない。

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