表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

高校一年、黄色確定。将来終了のお知らせ

 もうダメだ。戦隊ヒーローの“黄色”じゃ、モテるわけがない。

 なぜ僕が黄色なんだ!!


 赤なんて贅沢は言わない。クラスの人気者でもないし、スポーツ万能でもない。成績も、まあ平均的だ。

 でもさぁ……。

 黄色はないだろ!!


 せめて緑だろ? 赤や青は高望みだってわかってる。僕みたいな凡人には、“頭脳派ポジ”の緑がちょうどよかったはずなんだ。

 なのに黄色? 面白担当? カレー大好き芸人枠? ……いや、カレーは好きだけどさ。


 小さい頃、憧れてたんだ。

 悪をぶっ倒す正義の味方。

 世界を救う、人類最後の希望。

 「大きくなったら何になりたい?」の問いに、本気で「戦隊ヒーロー!」って答えてた。


 まさか、実在してたなんて思ってもみなかったよ。

 ましてや、自分がその一員に選ばれるなんて。

 しかも――黄色として。


 ……それだけは、勘弁してほしかった。

 できることならクールな青になりたかった。リーダーの赤に突っかかる、影のナンバー2的ポジション。

 主婦層の人気をさらって、グッズもよく売れる、あの“美味しい役”だ。


 黄色なんて、絶対五位。

 最悪、マスコットキャラにすら負ける。

 赤行きつけの喫茶店のマスターにすら負ける。


 そう、黄色は“数合わせ”の色。

 赤・青・桃・緑がさくっと決まって、残った空白を埋めるためだけの色。

 修学旅行の班決めで、「お前、余ってるし、こっち来る?」みたいな。

 誰でもいい的なポジション。


 わかってもらえるかな、この気持ち。

 せっかくヒーローになれたのに、自分の“配役”が黄色だったと知ったときの絶望。

 高校一年で「お前は主役じゃないよ」って人生に言われた気分。


 まだ大学受験もしてないのに。


「俺、去年までイギリス駐在でさー、飯がまずくて大変だったよ。物価も高いし」

「へえ、エリート会社員はいいねぇ。お前、英語得意だったもんな。俺なんか平社員でさ、カミさんに小遣い制限されてるよ。結婚なんかするんじゃなかった」

「そんなこと言うなよ。可愛い奥さんじゃないか。……そういえば聞いた? あの奥さん、今度の市議会選挙に立候補するらしいよ」

「マジか? 昔から生徒会とかやってたし、ありそうだな」

「で、お前は何やってんの?」

「……黄色やってます。ほら、世界を守るヤツ」

「――――あぁ、ああ、あれね。おすすめのカレー屋知ってる?」


 ね? この微妙な空気。

 二十年後の同窓会の光景が目に浮かぶだろ?


 はい、僕の人生、終了です。


 もういいんだよ、僕なんか。社会の隅っこでひっそり生きていきます。

 赤と青、いや、緑の付録として、日陰を歩いていきます。


 ――いや、わかってるんだ。

 確かに、死ぬよりはずっとマシだった。


 正直、あのとき死んでしまうことと比べれば、今の方がはるかにマシだ。

 地縛霊として心霊写真に写り込む自信すらある“死”だった。

 だから、こうして助かったことには、ちゃんと感謝してる。

 生きてるって、素晴らしい。人生って、すごい。

 今なら、そんなクサいセリフも胸張って言えるよ。


 でもさ――それでもやっぱり、黄色はないと思うんだよ。


 そもそも……

 あの夜、もしアイツが現れなかったら、僕はもうこの世にいなかったかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ