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輪廻街、親友。

「ごめんごめん!ちょっと懐かしい人と出会ってさ~!」

「…そうか。なら一言言ってくれ。エミリーが気づかなかったら置いていってしまうところだった…」

「そうですよ、もう…。」


そう言って2人は笑った。それからしばらく歩くと、この街の中でも一番大きくて立派な建物の前でエミリーさんは立ち止まった。どうやら、ここは市役所のような所らしい。まず、僕達がここに来た、という手続きをしなければいけないらしい。


「…それでは、名前をフルネームでお聞かせください。」


と、カウンターのお姉さんが言った瞬間、僕は頭の中が真っ白になった。ガリレオくんは、すんなりと答えていたけれど、僕はそういう訳にもいかない。それに、言ったとしても相手が聞き取れない可能性がある。チラッとカウンターのお姉さんがペンを滑らせようとしている用紙を見る。そこには、絶対に入りきらない小さな長方形の枠があった。


「…どうしても、フルネームじゃないと駄目ですか…?僕、名前凄く長いんですけど…。」

「そうですね…フルネームじゃないと登録できないですね…」

「…じゃあ言いますから…ちゃんと書いてくださいね…。」


僕は、カウンターのお姉さんに向かって延々と自分の名前を言った。お姉さんは途中で絶対に枠に入りきらない、ということに気がついたようで、慌てて別の紙を持ってきていた。それが少し面白くて、思わず笑ってしまいそうになる。


「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ。」

「本当に長ぇ…」

「ピカソってそんなに名前長かったんだ…」

「うぅ…もっと短い名前が良かった…」


無事に登録が出来たようで、カウンターのお姉さんは営業スマイルで見送ってくれた。エミリーさんが次の目的地を考えている間、僕達は適当に時間を潰すことにした。その時、僕はまたアメデオくんと出会った。


「あっ、アメデオくん!また会ったね!」

「あぁ…ピカソか。…こんなところで出会うなんてね。どうしたんだ?」

「さっき、ここに住みますよ~っていう登録をしてきたんだ。で、エミリーさんが次の目的地を考えてくれているの!」

「そうか。…今、少し時間あるか?」

「?あるけど…?」


アメデオに半ば無理矢理腕を掴まれた。その時、さっきのガリレオくんの言葉を思い出した。ああ、アメデオくんと一緒に行ってくるって言わなきゃ。そんな風に考えているうちに、どんどん距離は離れていく。


「アメデオくん、ちょっと待って…!僕、あの2人にちょっと行ってくるって言わなきゃなの…!」

「あぁ…あの2人には連絡しておくから大丈夫だよ。だから、ほら、行こう?」


ますます腕を掴む力が強くなる。こんなの、アメデオくんじゃない。どうしてしまったのだろう、と考えていると、どこからかパレットナイフが飛んできて、アメデオくんに当たった。


「……?!」

「…あれ、あんまり強くは当たんなかったか~。残念。」

「…お前は…!!」

「俺はアジェだよ~、よろしく!って、知ってるよね?俺はここでいう警察官だから。君、誘拐未遂で逮捕するよ!」


突然現れたアジェさんは、アメデオくんの手を僕の腕から退けて、代わりに手錠を掛けた。アメデオくんは僕のことをじっと見つめてきた。アメデオくんが、僕を誘拐しようとしたなんて、信じられなかった。


「アメデオくん……」

「…お前、なんでここにいるんだ?ここはお前が来る場所じゃない。」

「え…?」

「だって…ここは『生前評価されなかった奴が人生のやり直しをする場所』だ。お前は、正当に評価されてきただろ…?」

「…その話はあとで俺からする。さっさと歩けよ、罪人。」


アジェさんはアメデオくんのことを強引に車に押し込んだ。アジェさんはにこりと微笑んで発車させると、乱暴な運転でどこかへ行ってしまった。


「おい、ピカソ!お前、大丈夫か?!」

「ガリレオくん…!」


ガリレオくんは、走って俺のところへやって来た。ガリレオくんの顔を見た瞬間、何故か泣きそうになって、僕はガリレオくんに飛び付いた。


「怖かったよ~!!」

「…そうだな。ごめんな、俺もちゃんと見てなかった…。だけど、あいつ友達だったんだろ?どうして急にお前を誘拐しようなんて考えたんだ…?」


さっき、アメデオくんが去る直前に言っていたことを思い出した。それをガリレオくんに伝えると、ガリレオくんは何も言わずに僕のことを抱き締めた。


「……辛かったな。」

「ガリレオ、くん…?どうしたの?」

「人に受け入れられなかったのに、そんなこと言われたら嫌だよな。大丈夫だ、ここにはお前を非難する奴はいない。」

「…!」

「…ここで、もう一度やり直すんだ。俺達が、また光輝いて、評価されるように。」


こうして、僕達の再輝計画は幕を開けた。




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