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第8話  ジョブスキル発動

「大変お待たせいたしました!只今より”マドロットコロッセオ”本日の最終試合を開始いたします!」


 大いに盛り上がりを見せる会場に司会者の言葉が響いた。


「こいつの怪力によって何人の剣闘士がその命を散らしたか・・・。今宵も相手の返り血でその身を染めるのか!?暴虐!蹂躙!"デミオーガ"!!」


 軽く2m半を超える薄緑の巨躯を持つデミオーガは、大剣"クレイモア"を地面に叩きつけ雄叫びを上げる。


「対しますは、今試合限りで引退が決まっております当コロッセオの人気剣闘士!碧い肢体と目を持つリザードマンの誇り高き女剣士、"剣風のアデラー"!!」


 武具の具合を確かめるアデラの脳裏にあるのは臨時の主である参賀、延いては魔物使いへの嫌悪だった。


(クソ!背に腹は代えられぬとはいえ、アタシが人間と契約することになるとは!)


心の中で悪態をつくアデラ。


(サンガのジョブスキルは間違いなく"使い魔の能力強化"だろう。その証拠に自身の身体能力が格段に上がっているのが分かる。これならばデミオーガとも対等に戦える。だが、その代わり副作用でアタシのに負担が掛かる。いくら1試合だけとはいえ確実に寿命が縮まる事になるだろうな。)


断腸の思いで参賀の提案を受け入れたアデラは、その怒りをぶつけるように対戦相手のデミオーガを睨みつけた


「それでは最終試合開始ー!」


 試合開始の合図と同時にデミオーガが大上段からクレイモアを振り下ろす。


「ぐおぉぉぉぁぁ!!」


「ふっ!」


 アデラはその必殺の一撃を体を少し横にずらすのみで躱した。クレイモアは地面に吸い込まれるように叩きつけられ切っ先が地中にめり込んだ。技術も何もない力任せの攻撃だがその威力は絶大、普段のアデラなら、その圧だけで竦んでしまっていたであろう必殺の一撃を余裕をもって回避することが出来ていた。


「!ぎゃがぁぁぁ!」 


 必殺の攻撃を躱され怒ったデミオーガがクレイモアを跳ね上げ胴を薙ごうとする。アデラは地面を蹴りクレイモアの軌道の上方へ跳んで回避し、ロングソードでデミオーガの胸を横一文字に斬った。


「ぐるぁぁ!!」


 流石に跳びながらの攻撃ではデミオーガの強靭な筋肉を深く切り裂く事は出来ず、皮膚を浅く斬っただけだった。着地と同時にバックステップで距離を取りデミオーガに切っ先を向けて対峙すると、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。


「すげぇ!デミオーガと互角じゃねぇか!」


「アデラってあんなに強かったか!?」


 過去にアデラの戦いを見たことのある者なら、今日の彼女が普段の数段上の動きをしていると分かるのだろう。誰も彼もが驚愕の表情で試合場を見ていた。


(寿命を引き換えにしているのは癪だが、魔物使いのジョブスキル補正は凄まじいな。)


 昨日までは、一方的に蹂躙される想像していなかったアデラだったが、実際には互角どころかあのデミオーガを僅かだが押している。


「いける!」


 アデラが勝利の道筋を確信したとき、デミオーガの様子が変わった。


「ぐるr・・・ガァァァァ!」


 絶対の自信を誇っていた肉体を傷つけられたデミオーガの怒りは最高潮となり額にある魔瘴石のエネルギーを全て開放した。


「なんだと!」


 咆哮の後、デミオーガの肉体は大きく変貌を遂げていた。身長は4m近く筋肉量は倍以上、薄緑だった皮膚は赤く変色していた。


「ゴグルァァァァ!」


 凄まじい雄たけびを上げながらクレイモアをまるで小枝のように振るデミオーガ。その速さと威力は先ほどまでとは比べ物にならない。間一髪で避けるも切っ先が地面と激突した衝撃で会場が揺れた。


「なんて威力だ・・・。」


 先ほどの一撃で地面にできたクレーターにアデラが気を取られた隙をデミオーガは見逃さなかった。


「しまった!」


 気が付いた時にはクレイモアが胴体の直前まで来ていた。最後の瞬間、アデラは試合場が最もよく見える貴賓席にサンガがいるのを見た。


(最後に見るのがやつの顔か・・・。)


 紙屑のようにひしゃげ砕ける軽鎧、次の瞬間には同じように弾け飛ぶであろう自分の肉体を想像して死を覚悟したアデラは目を閉じた。


(・・・・?)


 死の覚悟とは裏腹に最期の瞬間は訪れなかった。全力のデミオーガの攻撃で試合場の端まで弾き飛ばされたアデラの体。しかし、補正の分を考慮しても致命の一撃だったはずの攻撃を受け、痛みこそあるものの、その胴体は未だに繋がったままだった。


「何で生きている?」


この不可思議な現象に驚いたのはデミオーガも同様だった。渾身の一撃、しかも油断して無防備な状態の胴体に当たったはずの攻撃を満身創痍とはいえ、耐えられたのが信じられない様子だ。


「勝機!うおぉぉぉ!」


 アデラは力を込めて、困惑して緩んだデミオーガの頸部を薙ぎ払った。先ほどのように跳びながらではなく、地に足を付けて放った渾身の一撃はデミオーガの頭部を宙に舞い上がらせた。



                ※



「・・・!・・・!!・・・!!!」


 アデラの胴体にデミオーガのクレイモアが触れた瞬間、参賀の腹は凄まじい激痛に襲われた。そのあまりの痛みに立っていることはおろか呼吸をすることすら出来ず地面をのたうち回る。


「蓮十郎さん!」


 ティリオは突然のたうち回りだした参賀を見てとても驚いていたが、すぐに原因がジョブスキルであることに気が付いた。


「これって、あのジョブスキルの・・・。あっ!とにかく治癒魔法を!命の雫よ、この者を癒せ!」


 ティリオの治癒魔法のおかげでほんの少し痛みが和らいだ参賀は脂汗を搔きながら貴賓席に崩れるように座り込んだ。


「はぁ・・・!はぁ・・・!あ、あのジョブスキル、こ、こんなにきついのか・・・。しんどい・・が、おかげでアデラさんを失わずに済んだ。」


 そう、参賀が選んだ魔物使いのジョブスキルは”使い魔の能力強化”ではなく、”使い魔の致命傷無効”だった。このスキルは使い魔が致命傷を負ったときにダメージの一部を肩代わりして死亡を回避するという、絶対に使い魔、いや、仲間を失わないための物だった。


「アデラさんも勝ったようだな・・・、よかっ・・・。」


 安心した為か急に視界が暗転し、参賀は意識を失った。


第4話で参賀さんが選んだジョブスキル発動です。参賀さんが肩代わりするのはあくまでアデラさんが腹部に受けた”ダメージ”なので参賀さんのお腹は弾け飛んでいません。めちゃくちゃ痛いのは確かですが・・・。



もしこの小説が”面白い””続きが読みたい”と思って頂けましたら☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援してくださると幸いです。


それではこれからもおっさんゾンビMをよろしくお願いします。



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