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第5話 おじさん初めての戦闘

 人間たちが中心となって運営する大国”グリーネリア王国”、その東部に位置する”マーロムの森”。この広大な森の中の街道からそれ程離れていない広場では1対多数の命がけの戦いが行われていた。


(呼吸が苦しい、全身が痛い、腕が上がらなくなってきた。)


 背後を取られないように木を背にして荒い息を吐いているのはロングソードに軽鎧の女剣士。その目の前には石斧や棍棒を持った緑色の短躯が12体、そのうち5体は事切れ、地面に倒れ伏している。


「くっ!こんなところで!」


 飛び掛かってきた相手を斬り伏せる女剣士、しかし棍棒の一撃を腹に受けてしまいロングソードを取り落としてしまう。


「ぐぁ!か・・・は・・・!」


 これまでの戦いのダメージもあり、意識を保つのがやっとで地面に四つ這いになって立ち上がることが出来ないようだ。


「グギャ!グギャギャギャ!!」


 仲間を殺された怒りと獲物が苦しむ姿を見て嗜虐心から興奮し始める。反撃できなくなったとことを確信し、徐々に距離を詰めていく。女剣士の脳天に目掛けて石斧が振り下ろされた。



            ※



 剣戟の音の方へ駆けながら参賀はスマホの画面で初期ステータスにボーナスポイントを振り分けていた。


「基礎ステータスが書いてあるけど、これが高いのか低いのか分からないな。持っているポイントは・・・7ポイントか、とりあえず敏捷性に5、筋力に2振っておくか。」


 (どんなスポーツや格闘技でも素早く動けるに越したことはない。後は筋力を少上げておけば、いざというときにティリオを抱えて逃げることもできるだろう。)


「おっと!」


 画面上の決定ボタンを押し、軽い電子音と共に承諾のメッセージが表示されたと同時に走る速度が急激に上がった。平均的身体能力の参賀だったが、ポイント適応後はオリンピック選手並みの速さで走っている。


「れ、蓮十郎さん。ま、待ってください・・・!」


 急に速度が上がった参賀に驚いたティリオが彼の背中に声を掛ける。


「ああ!すまないティリオ、敏捷性にポイントを振ったら思った以上に効果があってね。」


 (たった5ポイントでこれだけ上昇するなら他の子たちはどれだけ身体能力が上昇しているのだろうか。)


「まさに超人集団になっているだろうな。」


 ティリオが追い付くのを待ちながら、参賀はポイント補正の恐ろしさを考えていた。


「はぁ・・・はぁ・・・すみません。お待たせしました。」


 ティリオの乱れた呼吸音に混じって剣戟の音がすぐ側から聞こえている。どうやら戦闘現場は直ぐ近くの様だ。


「蓮十郎さん、あそこです。」


 声を潜めながらティリオが指さすその先にある広場では、2種類の人影が激しく交戦していた。


「背の低い多数派は・・・ゴブリンってやつか。」


「ええと、少し違うんです。あのゴブリンたちの額を見てください。」


 ティリオの言葉に、ゴブリンたちの額にある何かが、ぼんやりと光っているのに気付く参賀。


「何か光ってるな、鉱石か?」


「そうです。あれはこの世界の邪悪なる者たちを統べる王、魔王コティルオンが魔瘴石から作り出したこの世界本来の物とは違う存在”デミゴブリン”です。」


 聞き慣れない単語を頭の中で整理しながら、木の枝に隠れてよく見えなかったもう一方の姿を見て参賀は驚愕した。


「なんだあれ。トカゲの女性?」


 そこにいたのは木に背を預けながら長剣を振るう蒼い鱗の肌を持つトカゲ頭の女剣士だった。


「あのリザードマンの方を助けないと。」


 ティリオの言葉に参賀は少し考える。


(リザードマンが何体か倒しているとはいえ、残りのデミゴブリンは7体。ティリオを守りながら倒せるか?)


 数の優位性は大きい、プロボクサーも少し喧嘩慣れした3人に3方向から同時に攻められればやられることもあるだろう。


「ティリオは何か戦う手段はあるかい?」


 その言葉にコクリと頷くティリオ。


「す、すこしだけ、攻撃魔法と治癒魔法が使えます。威力は他の女神様よりも全然弱いですが・・・。」


 その答えに参賀はリザードマンを救出する作戦をティリオに伝えた。



                 ※



 リザードマンの女剣士は一向に訪れない最後の一撃を不思議に思い、固く閉じていた眼を開いた。

 そこには石斧を握りしめたまま、ティリオの拳大の石を飛ばす土魔法<ストーンバレット>によって頭を吹き飛ばされたデミゴブリンの亡骸が転がっていた。


「ゲギャ!」

「グギャギャ!」


 突然の攻撃にパニック状態になるデミゴブリンたち。その隙をついて参賀は女剣士の落としたロングソードを拾い上げ一番近くにいたデミゴブリン袈裟切りに切り捨てた。


(剣が軽い!?筋力にポイントを振ったからか!)


 やはりボーナスポイントの恩恵は大きい。参賀は1m以上の刀身を持つロングソードをまるで木の枝のように軽々と振っている。


「ふっ!」


 刀身を横倒しにして2体のデミゴブリンを横薙ぎに切り裂く。この段階でようやく敵を認識したようだが、もう遅い。残ったデミゴブリンは喉元を突かれ、首を刎ねられ、その全てが倒れ伏した。


「・・・・。」


 参賀はしばらく手にしたロングソードを見つめていた。誰かを助けるためとはいえ”人型の生き物の命を奪った”という事実は思いのほか心にくるものがあった様だ。そんな様子を見たティリオが心配そうに声を掛ける。


「蓮十郎さん。あまり気にしないでください。ほら、倒したデミゴブリンを見てください。」


 デミゴブリンの亡骸は、あれだけ切り裂いたにも拘らず血が一滴も出ていなかった。そして額の魔瘴石にヒビが入り砕け散ると同時に肉体も微塵となって風に散らされていった。


「どうなっている?こいつらは生物じゃないのか?」


「”デミモンスター”は魔王の魔力によって魔瘴石が変化した物です。デミモンスターは魔王の命に従ってこの世界の血肉ある生物を襲っているんです。」


 ティリオの説明に少しだけ心が軽くなった参賀は、手を貸そうと未だに立ち上がれないリザードマンの女剣士に近づいた。


「!!」


 次の瞬間、突然起き上がった女戦士によって、参賀の持っていたロングソードは奪われその切っ先は喉元に当てられたのだった。

参賀さん異世界での初戦闘です。ボーナスポイントの恩恵が大きすぎたかなとも思いましたが、現代日本人、しかも中年が多数の敵と戦闘しようと思ったら、これぐらい強化しないとすぐやられちゃうなと思いこのような形になりました。レベル1女神のティリオちゃんは7ポイントでしたが、トップ5の女神たちは大体30ポイントぐらい貰えると思ってください。


もしこの小説が”面白い””続きが読みたい”と思って頂けましたら☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援してくださると幸いです。

それではこれからもおっさんゾンビMをよろしくお願いします。


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