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Act.43『7月3日の攻防』



「〈全プレイヤーへ通達。侵略者(インベーダー)の一斉攻撃により、ゲート耐久値が急激に低下。残存耐久値3%。ゲート破壊後、第四次侵攻が開始されます〉」


 火山ダンジョンの探索をはじめて数日経ち、7月に入った。

 いつも唐突にそれを告げるナビが、緑のルームランプとなって言う。


「〈ゲート崩壊。封印が破られました。モンスター多数出現、インベーダーが侵略を開始〉」


 私は午後の『傀儡作成』中だったが、すぐさま針とハサミを片付け、雪柳のご飯皿にカリカリを山盛りにしてから準備を整えた。

 プレイヤー装備に変更して、火山ダンジョン対策で装備に追加していた防塵ゴーグルと防塵マスクを外す。


「〈第四次侵攻の発生を宣言する。全プレイヤーはこれを阻止せよ〉」


 宣言を終えたナビに浅葱駅前ゲートの近くにある建物の屋上へ『転送』してもらい、構えたライフルのスコープ越しに湧きポイントから出現したモンスターを捉えてトリガーを引く。

 私が早かったのか、担当プレイヤーが遅いのか。

 今の浅葱駅前ゲートには、武装しているとはいえモンスターを相手にするのは難しい、非プレイヤーの自衛隊員と警察官、慌てて逃げていく政府職員しかいない。

 前にダンジョン探索中だったところを吹き飛ばされ、外に放り出されたことを考えると、今回はこのダンジョンを攻略中のプレイヤーもいなかったのだろう。


 どれだけ倒しても砕け散る半透明の破片の向こうから無限に湧き出るモンスターを一人で撃ち続けるのが、私の第四次侵攻の始まりとなった。



 ***



 ―――――― 20XX年7月3日。


 『幻想侵蝕ファンタジー・イクリプス』第四次侵攻、発生。


 ゲート警備勤務中の警察官から、ゲートの軋み音、表面に亀裂が入り、それが徐々に広がりつつある、との報告。

 同時にプレイヤーがナビゲーターからの警告を受け、これを報告。


 第一級警報が発令され、国民への避難命令が出されるのと同時に、機動隊、自衛隊、プレイヤーとチェスマンが出動。

 破壊されたゲートから出現したモンスターへの対処に当たる。



 ***



 ライフル狙撃を続けながら、『思念操作』で地上型と飛行型の傀儡を出し、すべてに『隠蔽対象指定』を付けて放つ。

 姿の見えないものがモンスターと戦い始めたことに地上の人々が驚いているようだが、こっちはそれどころではない。


 地上攻撃部隊迎撃戦の時に出てくるモンスターより弱いとはいえ、数は脅威だ。

 今は地上にプレイヤーがいない状態だし、小型でも群れとなって押し寄せたら、警備の人達は抵抗する間もなく瞬殺されるだろう。

 自分が陣取るビルの真下で虐殺される人達がいる、というのはさすがに寝覚めが悪い。


 私はライフル狙撃で大型と中型を撃ち砕き、傀儡達には小型を任せる。

 傀儡はそのままだと『巨大化』でゾウ並みの体躯になって出てきてしまうので、サイズ変更で大きさ調整。

 ライオンくらいの大きさで放たれた傀儡達は、命令を受けるとすぐに小型のモンスターを狩りはじめる。

 ナビのサポート機能、『思念操作』が解放されていて助かった。


 それから数分してプレイヤーとチェスマン達が『転送』で到着。

 彼らが近接戦闘タイプと遠距離攻撃タイプに分かれて配置につくのに合わせ、交代するように私の傀儡達を退かせる。


 が、近接攻撃タイプのプレイヤーとチェスマンが複数いても人数が足りず、全方位をカバーすることができない。

 結局完全に傀儡を引き上げることはできず、プレイヤー達の一回り後ろで打ち漏らしを片付ける、殲滅要員として残した。


 それからしばらく、私は大型と中型のモンスターに集中してライフルを撃ち続け、増援のプレイヤーとチェスマン達が到着したところで手を止めた。

 今のところゲート近くですべてのモンスターを仕留め、打ち漏らしは出していない。

 加勢も来たし、傀儡達はそのままにして、他のゲートの様子を見に行くことにする。


 ナビに頼んだ転送先は、藍市のツインタワー前ゲート。


 ここはすでに複数のプレイヤーとチェスマン達が防衛線を構築して対応している。

 が、対空戦力が弱いように見えたので、性格「戦闘狂」の飛行型傀儡を5体出して『隠蔽対象指定』付きで放っておく。


 次に『転送』してもらったのは、菫市の大型ディスカウントストア前ゲート。


 何組かのプレイヤーとチェスマン達がどうにか応戦していたが、モンスターの数に押され気味の状態だった。

 私は地上型と飛行型、両方の傀儡を出して、これも『隠蔽対象指定』付きで放つ。

 そして自分もライフル狙撃で加勢したが、傀儡達が展開してモンスターを狩りはじめ、戦況が安定してきたところで手を引いた。


 次の『転送』は、紅梅市の市民公園モニュメント前ゲート。


 ここはプレイヤーとチェスマンが少なく、ゲートを包囲するどころか逆に彼らがモンスターに取り囲まれている。

 すぐに地上型と飛行型の傀儡を多めに出し、『隠蔽対象指定』付きで放つのと同時に自分もライフルを構えてトリガーを引いた。

 飛行系モンスターの大型と中型を叩き落し、撃ち砕き、プレイヤーとチェスマンを取り囲む地上型モンスターの輪を崩す。

 一度勢いを取り戻せば、ゲート周りの一角は彼らが守ってくれる。

 そのうち増援のプレイヤーとチェスマン達が次々に到着し、その防衛線に加わったので、傀儡達の獲物が減った。


 何体か傀儡をアイテムボックスに戻し、狙撃を続けながら様子を見る。

 増援が加わったおかげで、プレイヤーとチェスマン達が構築した防衛線はそれなりに堅固だ。

 おそらくここは飛行型の傀儡をそのまま残しておけば、どうにかなるだろう。

 あとは私が加勢に来るまでに辺りに散ったモンスターの掃討を、別に出した傀儡達に命じて『隠蔽対象指定』付きで放っておく。


 最後の『転送』は、常盤市の植物園前ゲート。


 なぜかここにはそれなりの数のプレイヤーとチェスマン達がいて、完全にゲートを包囲し殲滅戦をしていたので、私は何もせず立ち去った。


 ナビにまた『転送』を頼み、浅葱駅前ゲートに戻る。


 ここは我が家に一番近いゲートだというのに、いまだプレイヤーとチェスマン達が足りておらず、彼らの打ち漏らしを傀儡達がカバーしていた。

 私もライフルを構えて戦闘に加わる。


 数発撃っては場所を移動し、また数発撃って移動する。

 『天駆』で空中を駆ける一瞬、『冥道視眼』が発動して大型モンスターの崩壊点が視え、『滞空延長』でその場に留まり強引に体勢を作ってそれを撃ち抜く。

 一発で砕け散る大型モンスターの向こうに、中型モンスターが3体出現。

 『縮地』で近くの建物の屋上に着地し、そこから攻撃できるモンスターの急所を狙ってトリガーを引いた。



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― 新着の感想 ―
[一言] ずっと分身スキルレベル1が気になってる。分身出して放置しておくだけでレベルアップしそうだし、レベルアップしたら相当戦力になりそうなんだけど、もったいないなと。
[一言] 前の確認電話から色々と確定した感じ? うわー引越ししても意味ない奴
[一言] すっかり作業化してるな。こういうときがヤヴァいか?
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