Act.39『第三回地上攻撃部隊迎撃戦』
四方八方から響いてくる戦闘音の中で、私もライフルを構えてトリガーを引く。
毎回ドラゴンを筆頭に飛行系モンスターに追われるので、翼持ちのモンスターを優先して仕留める。
のだが。
……うん?
戦闘開始から数分後。
『跳躍』と『天駆』で場所移動しながら飛行系モンスターを狙って倒しているが、今回は不思議なくらい目が合わない。
後ろからいきなり襲われることもない。
『危険察知』も発動せず、静かなものだ。
マークが外れた、的な感じなのだろうか?
ふと、第二回地上攻撃部隊迎撃戦で、訳の分からないトラブルが起きたことを思い出す。
いまだ原因不明の何かのせいで気絶して、起きたら自宅のベッドの上にいて。あんまりモンスター倒していなかったのに、ランクが一気に2アップしていた奇妙な出来事。
もしかして、あれと何か関係があるのだろうか。
気になるが、やはり知る術は無い。
とりあえず、モンスターに見つからないのは快適だ。
『跳躍』と『天駆』、それに『縮地』を使って場所移動しながら、飛行系モンスターを叩き落し、撃ち砕く。
今攻略中のダンジョンではほぼ使わない『縮地』は、こういう市街地での戦闘ではものすごく使い勝手がいい。
立ち位置を変えた時、たまに『冥道視眼』が発動して崩壊点を撃ち抜けることもあるので、いろんな意味でお役立ちスキルだ。
そうして動き回っていると、前回とても厄介だった蜘蛛モンスターが出現し、また建物の間に巣を張りはじめていることに気づいた。
ナビを呼んで装備武器をグレネードランチャーに変更し、焼夷弾で焼き尽くす。
そうして戦場を駆けまわって蜘蛛焼き職人をやっていると、今度は頭上が騒がしくなった。
なんだ? と見上げれば、なんだかバージョンアップしたように姿形がトゲトゲしく、加えて一回り体躯が大きくなったドラゴンが暴れている。
ドラゴンの上位種族が出てきたのかと思ったが、私の『心眼』はそのドラゴンの首元に張り付いたコウモリのようなモノを見つけた。
注意深く辺りを見回せば、同じくらいのサイズのコウモリモンスターが数体飛んでいる。
それらは戦闘に参加せず、それぞれ別のモンスターにぴたりと張り付いた。
すると張り付いたコウモリモンスターは張り付かれたモンスターと同じ色に変化して見えにくくなり、張り付かれたモンスターは一気に体躯が大きくなって姿形がより強そうなものに変わる。
なるほど。
あれは他のモンスターをパワーアップさせる、サポート系のモンスターのようだ。
そんなものまでいるのか、と感心しつつ装備武器をライフルに戻し、まずは首元に張り付いたコウモリモンスターを狙撃。
弾かれるような手ごたえがあり、硬化した蜘蛛モンスターのように狙撃ではダメージが入らないようだと察する。
そして首元への狙撃で、パワーアップしたドラゴンの注意を引いてしまったので、『縮地』を何度か使ってその場から離れた。
それからはまだ飛んでいるコウモリモンスターを撃ち落とすことを優先した。
パワーアップしたモンスターが他のプレイヤー達に襲いかかっていくのを横目に、居場所を気取られないよう場所移動しながら、コウモリモンスターを探して撃ち砕く。
コウモリモンスターは、他のモンスターをパワーアップさせる前であれば、意外と簡単に倒せる。
的が小さいのが難点かもしれないが、飛ぶもの、動きまわるものの急所を狙って撃ちまくってきたので、私にとっては慣れた作業だ。
そう難しくはなかった。
そうしてコウモリ狩りをするついでに、武器をグレネードランチャーに変更して蜘蛛焼き職人もする。
パワーアップしたモンスター達は他のプレイヤーに丸投げだが、危険で派手な活躍はステルス系スナイパーの仕事ではない。
ひたすら地道にコウモリモンスターと蜘蛛モンスターを狩り、湧きポイントが消滅すると、最後に残ったパワーアップ版モンスターとの戦闘に参加する。
狙うのは、眼。
パワーアップ版モンスターの眼は、一発や二発では潰せないが、攻撃が通らない特殊な状態になったコウモリモンスターとは違い、繰り返し攻撃すれば破壊できる。
片眼を潰せば、もう片方。
モンスターはもちろん暴れるが、一時的なそれがおさまれば、次の的である残りの眼を狙って狙撃を繰り返す。
両眼を潰せば、どんなモンスターも瀕死ぐらいまで弱る。
後は他のプレイヤーに仕留めてもらえばいい。
スコープ越しに見守っていれば、プレイヤーとチェスマン達の集中攻撃によって、あえなく色を失い砕け散る。
首元に張り付いたコウモリモンスターも、パワーアップ版モンスターが倒されると一緒に砕け散って消えた。
別々に攻撃して倒さなければならないのは面倒なので、楽でいい。
他のパワーアップ版モンスターも同じように倒していき、結界内のモンスターを全滅させれば、強制的に次の結界に送られる。
(「ナビ、暗視モード解除」)
「〈はい、Rx。暗視モード、解除しました〉」
次の結界内は明るかったので、咄嗟に目を閉じて暗視モードを解除。
瞼を開けば、あちこちに張られた蜘蛛の巣の中心で硬化した蜘蛛モンスターと、首元にコウモリモンスターをくっつけてプレイヤーとチェスマン達を襲うパワーアップ版モンスター。
おー、やっぱりどのモンスターとも目が合わない。
追いかけられずにステルス系スナイパーやれるの、めっちゃ快適。
まずはグレネードランチャーで蜘蛛モンスターを狩りながら、私は二ヶ所目の結界の中を走りはじめた。