Act.29『特殊スキルの取得』
無料体験『身体能力制限解除』を終え、マンションの部屋に戻ると、まずはクールダウンのためのストレッチ。
それから抹茶と黒ゴマのクッキーを出し、甘いカフェオレを作って休憩。
常にはない運動をした体が落ち着くのを待って、ナビに特殊スキルの一覧を出してもらう。
「うーん……? どのスキルが優先かなぁ……?」
●『冥道視眼』
●『曲射』
●『跳弾』
●『天駆』
●『滞空』
●『縮地』
●『傀儡感覚共有』
●『傀儡遠隔操作』
●『エキス抽出』
●『エキス調合』
表示してもらった一覧にある10個の特殊スキル。
改めて、その詳細を見ていく。
●『冥道視眼』
武器スキル『ライフル』の『鷹の目』と、スキル『隠密』から派生した『心眼』。
この二つからさらに派生したのが『冥道視眼』で、性能としては『鷹の目』の上位互換バージョンだ。
モンスターでも建造物でも、ありとあらゆるものの絶対の致命傷となる一点を見抜くことができ、一発でもそこに正確に当てれば即死・全壊する。
しかしその一点はいつでも視えるわけではなく、相手との距離や角度が完全に「視るための条件」と一致していなければならない。
ピーキーなやつだな、というのが第一印象。
現状、『鷹の目』がじゅうぶん役立っているので、急いで欲しいとは思わない特殊スキルだ。
取得条件は「スキル『鷹の目』レベル10」と「スキル『心眼』レベル10」と「50,000Eの支払い」。
レベル条件は満たしているし、面白そうだなぁという興味はあるが、ひとまず保留。
●『曲射』
●『跳弾』
武器スキル『ライフル』から派生したもので、文字通り、撃った弾を曲げたり跳ねさせたりして、方向を変える特殊スキル。
障害物の向こう側にいる敵への攻撃に使えそうだけど、二つも要らないな、と思う。
『曲射』は取得したばかりの新スキル『追尾』で代用できそうだから、選ぶとしたら『跳弾』だ。
『跳弾』の取得条件は「スキル『ライフル』レベル10」と「50,000Eの支払い」。
スキルのレベルは条件を満たしているから、後はお財布と相談だ。
いったん保留。
●『天駆』
『跳躍』から派生したもので、『二段跳躍』の完全上位互換バージョン。
回数制限無しに、自由自在に空を駆けまわることができる。
文句なしに欲しいスキルだ。
取得条件は「スキル『跳躍』レベル10」と「50,000Eの支払い」。
やっぱりお財布と要相談なので、これも保留。
●『滞空』
『滞空延長』から派生したもので、最長1時間、足場のない空の上で立っていられる。
これ、対空攻撃できるモンスターの的になるだけでは?
空に立って、何するの???
という、私的にはメリットが分からない謎スキル。
かろうじて、空から無防備に落ちるのを防げるかも? というのは思いついたが、『天駆』を取得できればそれは無用の心配だ。
取得条件も「スキル『滞空延長』レベル10」と「50,000Eの支払い」で、スキルのレベルが不足している。
今の段階ではスルーしておく。
●『縮地』
『遁行』から派生したもので、短距離、視界の範囲内に瞬間移動できる。
使い勝手の良さそうなスキルだから、できれば取得したいのだが。
取得条件は「スキル『遁行』レベル10」と「50,000Eの支払い」。
スキルのレベルが、あと1足りない。
惜しい……。ゲームあるあるの妖怪「1足りない」が、こんなところで出てくるとは……
レベルが上がったらお財布と相談して取得したいが、今は保留。
●『傀儡感覚共有』
●『傀儡遠隔操作』
『傀儡作成』から派生したもので、文字通り、スイッチをオンにして動きまわる傀儡と視覚の共有をしたり、遠隔操作で自由自在に操ったりすることができる。
あってもいいけど、無くてもかまわない、という特殊スキルだ。
偵察のために遠くへ飛ばした鳥型傀儡と視覚を共有し、自分の目で見ることで把握できることもあるだろうが、現状、それは必須のものではない。
むしろ感覚共有や遠隔操作をしている最中、本体である自分の体が無防備な状態になりそうで怖い。
一度に二つのことができるマルチタスクの能力は、私には無いのだ。
傀儡のことは傀儡に任せて、私は自分の体でできることをしようと思う。
ということで、これもスルー。
●『エキス抽出』
●『エキス調合』
『調理』から派生したもので、素材から特殊効果を持つエキスを抽出し、それを調合することでオリジナルの特殊効果付与ポーションが作成できる。
これは単純に「なんか面白そう!」「やってみたい!」と思った特殊スキル。
しかし取得条件が「スキル『調理』レベル10」と「50,000Eの支払い」で、レベルが2足りない。
もっと料理して『調理』レベル10になったら、お財布と相談して取得したいが、今は保留。
「これで特殊スキルの確認は終わりか。……さて。Eさえあればすぐ取得したいのは『跳弾』と『天駆』の二つ……。ぬいぐるみに入れるモンスター素材のストックもだいぶ減っちゃったし、Eも稼ぎたいし、そろそろダンジョン行くかな」
ひとまずそれは決定だ。
明日は午前中に攻略途中の、藍市のツインタワー前ゲートのダンジョンへ行くことにする。
そして、うーむ、と腕を組んで悩みつつ、現在のEの所持金額を見つめる。
「どっちか一つなら、今すぐにでも出せるな……。今取得するとしたら、やっぱり『跳弾』だよなぁ……。移動速度アップより、新しい攻撃手段を取得してEを稼ぐほうがいいだろうし」
考えて、これも決定。
(「ナビ。『跳弾』を取得したい」)
「〈はい、Rx。スキル『ライフル』レベル10、達成を確認。取得可能な特殊スキルです。50,000Eの支払いで取得が完了します。支払いますか?〉」
目の前にテキストボックスが浮かび、「はい」と「いいえ」のボタンが表示される。
私は「はい」を押した。
「〈50,000Eが支払われました。特殊スキル『跳弾』取得、完了です〉」
(「ん。ありがと」)
ステータス画面でさっそくチェック。
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プレイヤー名 : Rx
ランク : 4
武器:第6段階 タイプ『ライフル/黒』
防具:第6段階 タイプ『敏捷・ステルス優先/黒』
◆武器スキル
●『ライフル』レベル10
→『鷹の目』レベル10
→『追尾』レベル1
→『跳弾』レベル1
◆防具スキル
●『消音』レベル10
→『隠蔽』レベル10
→『静寂迷彩』レベル1
●『高速移動』レベル1
◆装備品
・瞬足のイヤーカフ(速度アップ (大))
・探知透過のペンダント(モンスターの索敵とプレイヤーの探索系スキルに発見される確率の低下 (中))
・忍の腕輪(『隠密』消費精神力60%軽減)
・剛腕の指輪(攻撃力アップ (大))
・万華鏡のアンクレット(被ダメージ反射 (発動確率・中))
◆特殊スキル
●『氷魔法』レベル5
→『アイスアロー』レベル4
→『アイスウォール』レベル5
→『アイスフィールド』レベル4
●『緑魔法Ⅱ』レベル3
→『チェーンシードアローⅡ』レベル3
→『ドレインフラワーⅡ』レベル3
→『グラスフィールドⅡ』レベル2
→『ガーデン・オブ・ジ・エンド』
◆補助スキル
●『隠密』レベル10
→『心眼』レベル10
→『遁行』レベル9
→『鑑定』
→『隠蔽』レベル10
→『分身作成』レベル1
→『隠蔽対象指定』レベル1
→『透過』レベル3
●『跳躍』レベル10
→『二段跳躍』レベル8
→『滞空延長』レベル6
●『スキル探知』レベル4
●『危険察知』レベル4
●『裁縫』レベル9
→『傀儡作成』レベル9
→『仮想人格憑依』レベル6
→『傀儡管理』レベル4
→『巨大化』レベル6
→『縮小』レベル1
→『能力付加』レベル3
→『護符作成』レベル1
→『アイテムドロップ率アップ』レベル9
●『調理』レベル8
→『特殊効果付与』レベル6
→『アイテムドロップ率アップ』レベル8
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おお、間違いなく『跳弾』が増えている。
明日ダンジョンに行ったら使ってみよう。
ワクワクしながらステータス画面を閉じると、スキル『調理』のレベル上げのため、キッチンに向かった。
エキス抽出・調合も、早く取得できるといいなぁ。




