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Act.23『サカナと鳥の実験』



 藍市のツインタワー前ゲートから入った、二つ目のダンジョン。

 川沿いの小路を歩くそこは、水棲モンスターからの攻撃が多かった。


 今のところ私が援護をする必要もなく、ぬいぐるみ軍団がどのモンスターも一撃で仕留めている。

 けれど、せっかくなので『傀儡作成』で魚のぬいぐるみを作って、泳がせてみようと思う。

 今までは陸を歩くタイプしか作ってこなかったので、そもそも魚型の傀儡がうまく泳いでくれるのか分からないけど。

 まあ、分からないことは実験してみよう。


 というわけで、二つ目のダンジョンからの帰宅後。


「うーん。実験するなら、ついでに鳥型も作ってみるか」


 魚型はパーツが少なかったので、あっという間に3体できあがった。

 ので、思いつきの鳥型も作ってみることにする。


 だいぶ前に購入したぬいぐるみ作りの本に、鳥の型紙もあったので、それを使って道具屋で買った布を裁断し、縫い合わせていく。

 チクチクと針を通し、糸を進ませていく地道な作業だが、性格に合っているのかとても楽しい。


 その日は魚3体と鳥2体が完成した。



 ***



 翌日。


 朝食をとりながらテレビを見ていると、政府が先日のSNS炎上の鎮静に乗り出していた。

 珍しく対応が早いのは、それだけこの事態に対して危機感を持っているということだろうか。


 具体的には、


「現在政府機関に登録しているプレイヤーへの対応の見直し」

「各機関が個別に登録プレイヤーに対して要請していた、未登録プレイヤーの捜索を全停止」

「様々な分野の人材を集め、未登録プレイヤーへの対応を話し合う有識者会議の発足」

「SNS等でプレイヤーに対して過度な攻撃的発言をする人への注意と、今後、それを刑罰対象とするかどうかの検討」


 等をやるそうだ。


 それで静かになるかどうかは分からないが、まあ、多少は登録プレイヤーの負担が減るだろう。

 登録する気ゼロな私には関係ないニュースだな……、と聞き流したところで、ふと思う。


 そういえば最近、この部屋で探索系スキルを受けることが無くなったな、と。


 たぶんあれが「未登録プレイヤーの捜索」だったのだろう。

 見つからなくて良かった、とほっとしつつ、関係ないと思っていたニュースが意外と身近なものだったことにちょっと驚いた。


 ニュースはその後、第二次侵攻の被災地の話に移っていく。

 食事が終わったので、テレビを消し、私はダンジョンに行く準備を始めた。



 ***



 ナビの『転送』地点として登録した、ツインタワー前ゲートのダンジョンの中。

 昨日進んだ最終到達地点から探索を再開するべく、まずは昨日と同じように「気まぐれ」傀儡を『隠蔽対象指定』付きで放ってから、ぬいぐるみ軍団を展開。


 そして、3体の魚型ぬいぐるみを取り出した。


 陸地でスイッチと巨大化をオン。

 魚型傀儡はピクリとも動かず命令を待っている。


(「後ろにある川に入って、泳ぎながら私についてこい。会敵したら攻撃しろ。……行け」)


 その命令を待っていたかのように体をくねらせて陸地を尾ひれで叩くと、しなやかな曲線を描いて3体の魚型傀儡はパシャンと川に飛び込んだ。

 私は彼らの動きを『心眼』で追い。


「……お、泳いでるぅ~!」


 初めてぬいぐるみが動いた時と同じくらい感動した。


 布と糸とワタの塊が、私が作ったぬいぐるみが、泳いでいる……!


 じーん、としばし感動に浸ったところで、ハッと我に返って次の実験に取りかかる。

 アイテムボックスから2体の鳥型傀儡を取り出し、スイッチと巨大化をオン。


(「森の上を飛んで索敵しろ。敵を発見したらその場で旋回して報告。空まで攻撃が届く敵がいたら回避し、退避しろ。……行け」)


 2体はバサリと翼を広げ、軽やかに飛び立って上空から森を監視する。


「……うわぁ~! 飛んだぁ~?!」


 自分で作ってスキル発動させて命令した結果だというのに、意味がわからなさすぎて笑う。


 なんで布とワタの塊が泳げるの???

 なんでぬいぐるみが空飛べるの???


 今さらすぎることにしばらく笑ってから、私はダンジョン探索を再開した。


――― ドロップアイテム『ハンマーフィッシュの尾びれ』取得

――― ドロップアイテム『ハンマーフィッシュの肉』取得

――― 210E取得

――― ドロップアイテム『レッドボアの核』取得

――― 230E取得

――― ドロップアイテム『ソニックフィッシュの鱗』取得

――― 120E取得

――― ドロップアイテム『ホーンラビットの肉・上』取得

――― 550E取得

――― ドロップアイテム『ブルーシザーフィッシュの角』取得

――― ドロップアイテム『ブルーシザーフィッシュの肉』取得

――― 160E取得

――― ドロップアイテム『ハンマーフィッシュの鱗』取得

――― 210E取得


 etc……、etc……


 しばらく歩いてみて、ここのモンスターの強さは『翡翠の虚根』の序盤くらいだと分かった。

 それと、たまに森から襲ってくるモンスターもいるが、やはり水棲モンスターの方が多いらしい。

 小路を歩くぬいぐるみ軍団よりも、川に放った魚型傀儡のほうが、3体しかいないのによく戦っている。


 帰ったら魚型傀儡を増やそう、と決めて、一時間アラームを知らせてきたナビの声で休憩に入った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 魚型だけでなく、水陸両用のワニやオオサンショウウオなどもいかがでしょうか。 最初から大きく作成すれば、「大型化」によってさらに大きくなるのでわ? その分、素材が大量に必要となりますが。
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