Act.??『*****お***達』
「エクルーズローダー卿」
長い回廊の途中で顔を合わせた知り合いが声をかけてきたので、少年は応じて挨拶を返した。
「アングレイヴィス卿」
長身の男に比べると、少年の小柄さが際立つ。
しかし二人にとって体格差は論じるに値しない些事だ。
そんなことよりもはるかに気にかかる件について、男は少年に話しかけた。
「先日の貴公のログを見させてもらった。グリンデルト卿が貴公に色々と吹き込んだと聞いたが、マーカーは付けなかったのだな。あの駒は貴公の好む単独型だが」
エクルーズローダー卿と呼ばれた少年はかすかに眉をひそめて不快を示し、答えた。
「そうだな。色々と吹き込まれた。……だが、僕はマーカーを付けなかった。あの駒に対しては、ただ見ているだけでは足りないと判断したからだ」
「それゆえの主への謁見か?」
聞きたかったことはそれか、と唇を歪めて少年が笑う。
「そうだ。次の手番も僕がもらう。あの駒について、確かめなければならないことがあるからな」
「貴公がそうまでして一つの駒に固執するところは初めて見るが。主はそれを許したのか?」
「次のログがその答えになるだろう」
男の横を通り抜けて歩いてゆく、小さな背中に問う。
「主が別の世界に新たな遊戯盤を開かれた。新しいものを好む枢機卿が幾人か、そちらに流れてゆくだろう。次のログに注目する者は減ることになる。主がそこまで手を回すほどのものを、貴公があの駒に見たゆえのことか?」
歩みを止めることなく、エクルーズローダー卿は答えた。
「僕は推測を確認する機会を求めただけだ。主の考えは主に聞くのがよかろうよ」
男はそれ以上追わず、問わず。
回廊から話し声が途絶えた。