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Act.20『第二次侵攻』



 ―――――― 20XX年4月27日。


 『幻想侵蝕ファンタジー・イクリプス』第二次侵攻、発生。


 ゲート警備勤務中の警察官から、ゲートの軋み音、表面に亀裂が入り、それが徐々に広がりつつある、との報告。

 同時にプレイヤーがナビゲーターからの警告を受け、これを報告。


 第一級警報が発令され、国民への避難命令が出されるのと同時に、機動隊、自衛隊、プレイヤーとチェスマンが出動。

 破壊されたゲートから出現したモンスターへの対処に当たる。



 ***



 おー、ようやく包囲網が構築できてきたなぁ。


 眼下の攻防を一瞥してから、また視線を上げてスコープで急所に狙いを定め、トリガーを引く。

 急所に三発目の狙撃を食らったドラゴンが落下しながら色を失って砕け散るのを見ることなく、場所を移動して次のドラゴンをスコープ越しに見る。


 そう、地上攻撃が主だった第一次侵攻と違い、第二次侵攻では空を飛ぶモンスターが出現した。

 しかもたまにドラゴンが1、2体出る。


 こいつらは鳥系モンスターと違い、火球、雷撃など、それぞれの属性の吐息(ブレス)攻撃をしてくるので厄介だ。

 早く落とさないと地上で頑張る非プレイヤー、機動隊や自衛隊の人達が大被害を被ること間違いなし。


 なので狙撃という対空攻撃手段を持つ私が、浅葱駅前ゲートだった黒い(もや)から無限湧きしているモンスターの飛行系に対処している。

 ドラゴンを撃ち落とすついでに、タカっぽいのとかカラスっぽいのとか、グリフォン、キマイラっぽいのも撃ち落とす。


 そうしている間に地上ではプレイヤーとチェスマンを中心にモンスター討伐が進み、だんだんと湧きポイントをぐるり取り囲む包囲網が構築され、湧いた瞬間に狩る、というスピード駆除が行われつつあった。

 大型のモンスターが出るとすぐには倒せず、リズムが崩れるが。


 私も小型の飛行系モンスターは湧いたら瞬殺で狩るのだが、さすがにドラゴンやグリフォン、キマイラは無理。

 それでも急所に二、三発撃ち込めば倒せるのだから、地上攻撃部隊迎撃戦の時よりずっと楽だ。


 あの時のドラゴンが今回出てきているものより強かったのか、今の私が前より強くなっているせいなのか、確かめる術もないので不明だが。

 楽に倒せるのなら、それでいい。


 何体目か、もう数えるのもやめてしまったドラゴンを倒してから、場所移動。

 今のところ他に飛行系モンスターが出ていないのを『心眼』で確認し、銃口を地上へ向ける。


 飛行系モンスターは湧きポイントから出現した瞬間、ほんの一瞬だがその場で羽ばたいて上昇するための力をためる。

 絶好の狙撃チャンスだ。

 逃がすつもりはないので、湧いた瞬間、『鷹の目』で見つけた弱点に銃口の向きを微調整し、トリガーを引く。


 その他、手が空いている時は飛行系ではないモンスターも、大型のものは頭を叩いて突撃できないよう勢いを止めてやる。

 動きを止めた大型モンスターなど、ただのデカい的だ。

 あとは包囲網を構築するプレイヤーとチェスマンが倒してくれる。


 たまに勢いを止めるだけのつもりが、弱点にクリーンヒットして倒せてしまうこともあるが、だいたいはそんな感じの連携でいけた。


 ちなみに話し合いとかはまったく無い。


 私は最初から常時『隠密』状態だし、時々、上を見上げながら探索系スキルを使っているプレイヤーもいるが、その目が私を捉えることはなかった。

 迷彩服を着て透明な盾を持った非プレイヤーが、下から何か叫んできたこともあったけど、モンスターの咆哮や断末魔の悲鳴、空気を切り裂く武器の破壊音でかき消され、何を言っているのかさっぱり分からなかったし。


 そんなわけで、現状はそれぞれが自分なりに戦っていたらこうなった、という結果にすぎないのだが、なかなかうまく連携できていると思う。


 なんでスナイパー系のプレイヤーが他にいないのかは謎だが。

 チェスマンに遠距離攻撃タイプがいるから、みんなそっちに任せちゃって、自分は前線に出るプレイヤーが多いのか?

 チェスマンよりプレイヤーの方が攻撃力はだいぶ上だし、使いやすいし、戦いやすいのになぁ、ライフル。



 ***



「〈次元の亀裂が『*ク***ロ***』により封印され、設置された『(ゲート)』が正常に起動。侵略者(インベーダー)による第二次侵攻の終了が宣言されました。お疲れ様です、Rx(レクス)〉」


 戦い始めてからどれくらい経ったのか。

 時計を見ていないので細かいところは不明だが、だいたい一時間くらいだった気がする。


 浅葱駅前ゲートは、以前の教会の扉のような壮麗なものではなく、昔の地下牢の扉のごとく、威圧的な黒々とした鉄扉となって再びそこにそびえ立った。


 私は数秒それを見て、モンスターの湧きポイントが消滅したことを確認すると、ナビに言った。


(「ナビ、『転送』して」)


 ここはもうほぼすべてのモンスターを討伐し終わっている。

 他の場所はどうなのか、せめて近隣は自分の目で確認しておきたい。


 即座に了解の返事をしたナビによって、一瞬で景色が変わる。

 指示した『転送』先は藍市、ツインタワー前ゲート近くのビルの屋上。

 ……の、はずが。


「ッ?!」


 足場が、無い。

 モンスターが突っ込んだのか、ビルが半壊している。


 ちょっと驚いたが、空中でジャンプできる『二段跳躍』で一番近い気の流れに乗り、『遁行』でまだ建っているビルの屋上に着地。

 同時にライフルを構え、近くを飛んでいたドラゴンの急所に連続して三発撃ち込んだ。


 色を失って砕け散るところを見る暇もなく、場所移動をする余裕もなく、周囲を飛び回る飛行系モンスターを片っ端から撃ち落とす。


――― ドロップアイテム『レッドドラゴンの爪』取得

――― ドロップアイテム『レッドドラゴンの肉』取得

――― 3500E取得

――― ドロップアイテム『シルバーイーグルの風切り羽根』取得

――― 1200E取得

――― ドロップアイテム『グリーンドラゴンの牙』取得

――― ドロップアイテム『グリーンドラゴンの爪』取得

――― 3500E取得

――― ドロップアイテム『ブルードラゴンの逆鱗』取得

――― 3500E取得

――― ドロップアイテム『ソニックホークの核』取得

――― 2100E取得

――― ドロップアイテム『アイスドラゴンの爪』取得

――― ドロップアイテム『アイスドラゴンの肉・上』取得

――― 3500E取得


 etc……、etc……


 視界の端を延々と流れていくアナウンス。

 近くでふよふよ浮遊しながら、いつも通り淡々とした口調で言うナビの声。


「〈戦闘の継続意志を確認しました。それではこれ以降の戦闘についてナビゲートします、Rx。第二次侵攻のモンスター討伐と、終了後であるこれより先のモンスター討伐では、取得できるものが変更されます〉」


 ちらりと見やった地上は地獄絵図。

 対空攻撃手段を持つプレイヤーがそこにいるか否かで、これほどまでに戦況が変わるとは思わなかった。


「〈第二次侵攻中のモンスター討伐で得られるのはランクポイントのみです。現在は通常時の設定に戻っており、モンスターを討伐することで得られるのはドロップアイテムとE、武器、防具、スキルの経験値のみとなっております〉」


 第一次侵攻の時も聞いた説明をナビが終える頃には、私の射程範囲内にいた飛行系モンスターはすべて砕け散っていた。

 『跳躍』と『二段跳躍』、たまに『透過』で障害物をすり抜けて場所を移動しながら、地上を闊歩する大型、中型のモンスターを上から撃ち抜いて倒していく。


(「ナビ。道具屋で買ったポーションって、プレイヤーじゃない人にも効く?」)

「〈ポーションの効果はプレイヤーとチェスマンにのみ発揮されます。非プレイヤーに効果はありません〉」


 そうか、と頷く。

 それなら私がここでできることはもう無い。


 ふっと息を吐いてライフルを握りなおし、顔をあげた。


(「ナビ、『転送』して」)



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― 新着の感想 ―
[一言] (「ナビ。道具屋で買ったポーションって、プレイヤーじゃない人にも効く?」)「〈ポーションの効果はプレイヤーとチェスマンにのみ発揮されます。非プレイヤーに効果はありません〉」 見ず知らずの大…
[良い点] 国家等の組織に属さず、主人公のマイペースに行動していくスタイルが良いですね。 [気になる点] 主人公以外のプレイヤーのスキルについてあまり公開されていませんが、ライフル銃は何か不人気な理…
[一言] これにてプレイヤー名:Rx が日本、ひいては浅葱市民なのでは?って説が唱えられそう。 まあ、姿を見られてないしで確信はされても確証はないわけで。 もっと言えばそんな陰謀論めいたことを宣う奴…
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