表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

二年前その4(半蔵視点)

(半蔵視点です)

 救急車に運び込まれ、両親が一緒に乗り込んでくれた時、少しだけ安心したのを覚えている。


 病院に搬送され鎮静剤が効いて眠るまでは、車の揺れでさえ激痛が走り、しかし腰から下の下半身には痛みどころか、そこに足があることさえ認識できないほど、まったくと言っていいほど感覚がなかった。

 俺はみっともなく泣きながら、「痛い」「足が動かない」などと叫んでいた。

 両親は俺の手を握り、ずっと励ます言葉をかけてくれていた。


 俺が寝ている間にレントゲン撮影が行われ、入院手続きが完了し、目が覚めると病室のベッドに横たわっていた。

 薬が効いていたおかげで痛みはなかったが、いつの間にかコルセットを装着させられており、ギッチギチに締め上げられていたため呼吸が苦しく、慣れるのに時間がかかった。

 相変わらず下半身の感覚はなく、布団をめくって目で確認しなければ、そこに足があることも信じられないほどだった。


 軽傷ではないことは明らかなのに、この時の俺は楽観視していた。

 まさか自分が大怪我をするなんて考えたこともなかったし、日本の医療は優秀だからすぐに元通りになるだろうと思っていた。


 しばらくすると主治医だという若い男性医師がやってきて、怪我の内容と治療方針が説明された。


「背骨の骨折で、今は筋肉の硬直で下半身の感覚がないだろうけど、骨折の影響で神経が圧迫されているから、逆に足に激痛が走ることもある。念のため明日MRIとCTも撮ってみよう。しばらくコルセットで固定し、リハビリを頑張れば元通りになるだろう」


 とのことで、医師は看護師さんにいくつか指示をして帰っていった。


 リハビリが必要と聞いてもその大変さはピンとこなかったし、「元通りになる」という言葉だけを切り取って俺はホッとしていた。

 看護師さんは入院に当たっての注意事項や検査などの説明を済ませると病室から出て行ってしまう。

 

 母に頼んでスマホを渡してもらうと、彷徨から試合には負けたことと残念会の写真が送られてきていた。

 お通夜みたいな残念会の画像に「ぶはっ!!」と吹き出す俺を見て両親も少し安心したようだった。


 怪我をしてしまったのは仕方がない。

 真剣にスポーツに取り組んでいれば当たり前のことだ。

 これまでも骨折でしばらく離脱した仲間もいたし、皆復帰して元気にやっている。

 ならば俺も問題ないはずだ。早く怪我を直して復帰して、来年の全国大会を目指すだけだ。


 翌日は瑞希が見舞いに来てくれた。少し遅れて彷徨とののかもチームメイトとかクラスメイトからの差し入れを持ってやってきた。

 彷徨とののかの二人は、邪魔しちゃ悪いからなどと余計なことを言ってすぐに帰っていき、瑞希も二人を見送りに行ってしまったため、暇になった俺は差し入れの中身を確認することにした。


 クラスの連中からは励ましのお便りやお菓子、俺が普段は読まない系の漫画やライトノベル、アニメのDVDまで入っていた。

 チームメイトの差し入れにはサッカー漫画やサッカー雑誌などの他に、エッチな本まで入っており、瑞希や母親のいないところで確認して良かったと本気で思った。

 さらには、「全国大会へ連れて行けずゴメン!!」という寄せ書きもあり、ちょっと感動してしまった。


 花の水を換えに行くと言っていただけの母親がなかなか帰ってこない理由など、この時の俺は考えもしなかった。


数ある作品の中から読んでいただきありがとうございます。


読んでいただけるだけでも大変ありがたいのですが、

ブックマークや評価などしていただけると泣いて喜びます。


引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ