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Students  作者: OKA
29/30

22:思い描いた世界


今まで君と…

みんなと一緒に過ごしてきた

この教室ばしょ

…。


なんでだろう

いつも俺は遅いんだ

気づくのも、思うのも、感じるのも…

…、…。


この向こう側に

君がいる


素直になれないかもしれない

でも

俺は…

…伝えたい。















教室の扉を開くとそこには…

電気をけず、窓側の自分の席に座っている

…、?

ずっと、窓越しを見つめ続けている


教壇に立って自己紹介をした時…

…俺がこの高校に転校した、あの日

あの時も、今と同じように窓の外を見ていた

…。


最初、見たときは全然わからなかった。

なぜ、真っ直ぐで綺麗なをしていたのか

何をそんなに見つめるのか

でも、彼女の隣の席に座って…俺にもわかった


校門の隣で佇む一本の桜。

俺が、あの日、この場所にいたときも

今と同じで…

………。







「あのにはね、不思議な力があるんだ…」

「…、俺がさっき見たときは花びらが全部、散れていたのに…な」

「きれい…だよね」

「…ああ」

「いつも私は見てたんだ…。

 誰も気づいていないかもしれないっ…て思いながら」

「…。」

「でも、私の席の隣のひとは…、気づいてくれた。」

「いいや、俺が…。

 …気づかせられたんだ」












偉い学者に笑われてしまうだろう

説明ができない

論より証拠。

常識という世界では、非常識と言われてしまう…


童話の世界。

魔法の世界。

仮想の世界。

所詮は作られた世界フィクション


疑ってしまう…

眼前に映るけしき

でも、本当なんだ。

俺…たち、2人が今、見ているものは


満開の桜。

去年見た景色と同じで

その薄紅色が

世界ここにある…






「わたしね、最初はあの桜だけ見てたんだ…」

 …でも、高校3年生から窓越しの景色は変わった…

「…ふふっ。」

「…ガラスに反射するんだよね」

俺達おたがい目を合わせると、よく笑ってごまかしていたな…」

「…もし、あの桜がなかったら、どうなっていたんだろうね…」

「…そうだな

 みんなと一緒にいられなかったかもな…」

「…、…。」

「俺は、あの桜から勇気をもらった。

 自分も頑張らないといけないな…て」

「そしてわたしは、そんな転校生きみを見て…、………。」












彼女が何か言おうとした瞬間、小さな音がした

静かな教室に、雨の音が響きわたる

先ほどまで降っていた雨が、再び訪れた

次第に激しくガラスを叩き始める


俺たちは雨にうたれる桜を見つめる

線のようなその雨足は、容赦なく花びらを散らしていく

辺り一面に水たまりができていく

数え切れない雨粒が絶え間なく降り注ぐ


窓側に座る彼女は心配そうに桜を見つめる

その憂いの表情がガラスに反射し、俺の視線と重なる

ぎこちない笑顔で俺を見つめ返す彼女

空の色は灰色、その顔は必然と悲しく見えた


しばらく俺たちは桜を見つめ続けた

しかし、薄紅の身体からだは無残に冷めていく

窓越しの桜は

残酷な空を、虚しく見つめ続けていた






「…ご、ごめんね。傘を取りに戻ってきたのに、私の話に付き合わせちゃって…」

「………、…、…い、いや大丈夫。」

「ずぶ濡れ制服姿でいきなり登場したからビックリだったよ

 最初、人影を見た時、長原先生が来て、また国語辞書で攻撃されるのかと………」

「…、あはは…」

「傘立てに見覚えのある傘があったから…

 …あれ、時見くんのだよね…?」

「…あ、うん。………まぁ…」

「いい加減に帰らないと、そろそろ本当に先生がきそうだから帰らないとだよね…

 はいっ!これ時見くんの傘!!!」

「…あ、ありがとう。 …、…………………。」











どこまで弱いんだ…

…わかっているだろ?

ここで何も言わなかったら伝えられない

本当の気持ちを伝えるために教室ここに来たんだよ、俺は…


…、………。

あの桜がくれたんだよ。

あの桜を見つめる彼女がいて、俺はあの桜と出会った

そして、勇気をもらった


…そうだ。

今度は俺が勇気をだすんだ。

この気持ちを伝えて

雨に負けないことを…。


卒業式あした、また満開の桜と

…笑顔の君と

…本当の自分を、…迎えるために。

………………………………………。






「………あ、あれ?

 傘が開か…ない………」

「……………、…。」

「…あ、あははは…

 時見くんの傘は、ちゃんと開くよね?」

「………。」

「…な、なんで急に壊れるんだろうね?

 こ、これじゃ帰れない…なぁ………」

「…。」

「…え、えーと、私…。

 お母さんに迎えに来てもらおうか…なぁ」

「…………………………………………………、…白鳥しらとり…。」






























「お互いもう…、嘘はよそう………。」
































俺の両腕は彼女の背中を包んでいた

これでいい

これが

本当の気持ち…。


彼女の顔を見つめてみると

そこには薄紅色の頬をした

本当の彼女がいた

胸の鼓動が伝わってくる


窓越しを見つめてみる

そこには降り続ける雨

その向こう側には

花を散らす桜


俺は信じる

明日のことを

必ず…、思い描いた世界は来るんだ

だって…
































白鳥かのじょの笑顔が、…かわいいから。

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