21:再びの雨、秘められた想い
それは髪を濡らし
それは頬を濡らし
それは体をぬらし
それは心を濡らす
どうしたいのだろうか
どうしようとするのか
どうなりたいのか
どうなるのか
この雨に恐れながら
この雨に痛みながら
この雨に苦しみながら
この雨に問いかける
なんなんだ
胸の奥が詰まる
この感じは
…
……………。
みんなと別れた後、俺たちは海辺に立ち寄っていた
何も話さず、何も話せずに…
降り続ける雨の中を沈黙したまま
ただ、立ちすくむ…
声をかけてくれることを期待する自分
自ら踏み出せずにいる
助けを…求めている。
情けない…
この想い…を身体の底に溜めたまま今まで過ごしてきた
その結果が、今日の…
今の…
…自分。
伝えられない気持ち
その行き場のない想いが
この………、気持ちを生み出して…
全てを、締めつけていく…
「…時見
いつまでそうしているんだ…」
「…」
「『傘を教室に忘れてきたから、一緒に帰ってほしい…』
…ふふっ、…。
笑えるな…」
「…」
「俺に、そんな嘘が通じるとでも思ったか………?」
「…」
「…、お前…
下手なんだよ…」
「………、…。」
下手…。
俺は何をやっても上手くいかない…
…そう
だから、嘘をつく…。
持っているものとは違うものを出して
それを本当のように見せて
本当に伝えたいことを伝えられないまま
…終っていく。
いつまでも、いつまでも…
嘘をついていく
嘘を隠す嘘をついて
また、…嘘…を。
自分を表せない自分に対する自己満足…
現実には変われていない自分…
外側も内側も…
…嘘。
「…、文化祭の時、俺は嬉しかったな…」
「………、…。」
「舞台の上から見えたんだよ…
暗闇の幕が上がるのと同時に、お前たち2人の…笑顔が…」
「………、…。」
「…お前は、あの時の自分自身の気持ちを覚えているか…?」
「………、…。」
「俺は、今でも覚えている…
あの数えきれない人の中でも、光り続けていた…
…お前と、………白鳥…をな。」
「…………………」
…………………。
…………………。
…………………。
…………………。
蘇る…
あの時の景色が…
あの時の自分が…
あの時の気持ち…が…
楽しかった…
嬉しかった…
温かかった…
一緒にいれて…。
…込み上げてくるこの気持ち。
この…想い。
……………、…。
………………………………………。
「…時見
その涙までをも、…雨でごまかすつもりか………?」
「…………………」
「…違うよな
お前は、その想いを伝えたい…
だからこそ、ここにいる…」
「…………………」
「だから、伝えないとなんだよ…
そう、たとえ…
「…………………」
「…この雨が俺たちを、拒んでもな………。」
どうしてだ…
なんで溢れてくるんだ…
勝手に…
……………っ、…。
ずっと前から抱いてた…
ずっと前から言えずにいた…
ずっと、ずっと…
………、ずっと…
そうだ…。
今まで…ごまかしてた。
…だからだよ
抑えていたものが今…、溢れてる…
この想いを伝えたい…
だからこそ…
そう、俺は…
……………………………。
「俺はもう帰るぞ…」
「…。」
「………ふふっ、
もう、泣くなよ…」
「…。」
「…明日は晴れるといいな」
「…。」
「…また明日な」
ーーーーーーー。
「…ありがとう。
塚原………」
ソノ音ハ波紋ヲ紡グ
ソノ音ハ亀裂ヲ紡グ
ソノ音ハ崩壊ヲ紡グ
……………激シク、強ク…
雨ハ続ク
雨ハ…続ク
…雨ハヤガテ
本当ノ闇ヲ見セルダロウ
君ニハ聞コエテイナイ
コノ世界ノモウ一ツノ声ガ
ソノ声ヲ聴イタ時…
ハタシテ耐エラレルカ…
マダ君ハ知ラナイ…
君ハ、隠サレタモウ一ツヲ知ッタ時
コノ世界ヲ…
…………………
…。