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Students  作者: OKA
24/30

暗闇


フェンス越しに見える世界







漆黒の海








暗闇の空







俺はこの景色が








…嫌いだ。
















「カチッ」

ここに来るのはあの日以来。

あの日を境に…来ていない。

…いいや………。

来るのを避けていた…


「チチチチチ…」

あの日、ここから見えた世界が今の世界…。

…違う。

あの日、世界は終わりを迎えた。

今、見つめているこの水平線は…

偽物。


「スーーーーーッ」

あの余韻がまだ反響(こだま)する。

…聴きたくない…のに。

全てが奪われていく光景。

いつまで俺は世界(ここ)を見つめなければならないの…か。


「……………。」

弱すぎる自分が存在する…意味…。

あの日、何も出来なかった。

…、何もかも…

失った………。


「…、フゥーーーーー。」

あの日、俺はそのまま消えたかった。

自分が存在する…意味…は………ない。

大切なものがわからないまま消えていく。

それを…

望んでいた。


「………………………。」

全てを捨てる。

姿(かたち)も、命も、世界…も

自分を否定して…

そのまま…

……………。






世界に(もてあそ)ばれ沈んでいく

それが人間(ひと)

誰も逆らうことはできない


自分が消えればすべて終わる

もう、何も見なくていい

…そうだ

消えてしまえ………


でも、俺は消えれなかった

…ここで交わした約束が…

………アイツの(そば)にいたことが………

…俺を消せなくした


どうしてだ

なぜなんだ

お前は俺を…

なあ、教えてくれ………






俺が今、世界(ここ)にいるのも
















偶然という名の必然………なのか…
















「…君主、吸いすぎだぞ………」

「………………………………………。」






暗闇に()ちた高校の屋上

沈黙に熟れた白衣が

残酷な夜風に揺らぐ…
















「夏祭り以来だな…

 …長原。」

「煙草を吸う医師とはずいぶんと…不良になった…な。」

「…違いない…な。」

「…暗いわね。」

「夜だからな…」

「冗談のつもりか…君主」

「…。」

「私にそれは通用しないぞ…」

「………、隠すの下手だな…

 俺は…。」

「…隠せないんだよ、私の前ではな………」

「………。」

「私たちは昔からの………親友………だから…な。」


………………………。


「…みんな、元気…か?」

「島田…先生、細田先生、白川先生………

 みんな元気よ…

 今は高校(ここ)が休みで会えるのは少ないけど…ね。」

「…お前の話の中でしか、みんなに会えない…

 ………俺は高校(ここ)に来ないから…な………」

「………君主、もうその顔で話すのは…やめてくれ」

「………、…。」

「私も高校(ここ)で話すのは…つらいんだ

 この…屋上…で話すのは………」

「なんで俺をここに、…呼んだ」

「…。」


………………………。


「この前、…園歌そのか……………

 …、白鳥にお守りを渡したの…」

「………。」

「その時、嬉しそうに笑ってくれた…」

「………。」

「昔の記憶はないのに…」

「………。」

「海辺で私たちと遊んだ記憶は、もう…」

「………。」

「…消えたのに」


………………………。


「俺もこの前、時見くんに会った…

 俺はアイツの歌を、歌った…。」

「………。」

「その時、懐かしい気持がするって言ってくれた…

 …園歌ちゃんも、歌ってるって…。」

「………。」

「俺たちとあの子たちの思い出はもう、存在しない…」

「………。」

「…でも、俺たちとあの子たちは世界(ここ)にいる…」

「………。」

「それだけで十分…なんだよ…な………」


………………………。


「…白鳥に時見、貴殿院に藤林、飛馬に塚原………

 あの子たちと高校生(むかし)の私たちは、…似ている…」

「………。」

「私はあの子たちと一緒に過ごしていて感じる…

 私たちも、この子たちみたいだったんだな…ってな…」

「………。」

「あの子たちと高校生(むかし)の私たちは、…似ている

 …でも、私たちと同じ未来(けつまつ)にはならないで欲しい…」

「………。」

「…君主………

 お前も…そうだろ………」


………………………。
















屋上(ここ)で交わした約束…

 長原…、覚えてるよな…」

「忘れたことなんて一度も…ない」

「…誰も、思わなかったよな…

 俺もお前も、島田も細田も白川も…

 そして、アイツも………」

「…あの約束が、最後になるなんて…ね…」

「約束したあと、アイツはどこかに行ってしまった…

 ……………もう、会えない………」

「………。」


「…なんでだよ………

 …なんで約束したあとに…あんなことが起きる…んだ…よ…

 …なんで全部………もっていく…んだ…よ…

 ………なんで………だよ…

 …………………なん………で………………………」

「………、…君主……………。」

「………………………………………………………………、っく………」







「…………………、もう…やめよう………。」

















白衣に映る黒い世界

隣でそれを見つめる彼女の頬に

途方のない水平線が差し込む

















私たちが泣いても、何も、起きない………よ…


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