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Students  作者: OKA
16/30


…。






ここから望む景色。







…俺は。







好きであり…。






嫌い…だ。
















……………………………。

















「カチッ」


手探りでポケットの中のライタを取り出し、ふたを開ける。

………。

無意識に胸ポケットから最後の一本を取り出す。







「チチチチチ…」


鼓膜を揺らす燃え盛る音。

白衣が大きく揺れる…。

風にあおられその赤色は、加速していく。






「スーーーーーッ」


指先に灯る小さな炎を見つめながら大きく、吸い込む。

いつ始めたのか…。

手繰たぐり探しても記憶の中にはもう…、その断片は見つからない。






「……………。」


渋い煙が体内を支配し、奥深くへ浸透する。

胸の中で言い聞かせる…。

過去の自分は不確かで、…曖昧な存在。






「…、フゥーーーーー。」


吐き出した煙は身体からだを包み、やがて静かに消えていく。

不思議に思う…。

そんな自分が今もこうして、この場所せかいにいること…が。
















…………………。


…もうすぐ、夜が…明ける。
















病院の屋上ここから見える二つの空。

それは。

青空と暗闇。






頭上に広がるこのけしき

なんで、夜の空は黒なんだ…?

どうして、青いままでいて…くれないんだ…。






俺のいるこの場所せかいでは青い空を「朝」と呼び、黒い空を「夜」と呼ぶ。

そう、それは…。

胸の鼓動を「生」と呼び、停止を「死」と呼ぶ…ように。






……………。


「スーーーーーッ、ハァーー…」






燃え盛る炎は灰を生みだし、足下に死骸を散らす。
















「夜」が死んで「朝」が生まれる。

「朝」が死んで「夜」が生まれて………。

そうしてこの場所せかいは、…動いている。






どこまで続くのか…。

一つ、また一つ…。

時を重ねる度に長く、連結していく。






その鎖は円を描き、やがて…繋がる。

そして…。

無限に続くこの「日常」をつくりだす…。






……………。


「スーーーーーッ、ハァーー…」






足下の死骸は風に出会い、大地へと運ばれる。
















毎日………、同じようなカタチをしている。

だから…。

何も気づけないまま過ごして…しまう。






貪欲な膨らみは身体からだを溶かし、狂わせる。

数えきれない「日常」を過ごしても…。

それは消え…ない。






大切なものを探しているのに見つけられない。

…あたりまえ………なんだよ。

それは初めから…、持っているもの…なのだから。






……………。


「スーーーーーッ、ハァーー…」






大地についた死骸は、新たな生の種となる…。
















……………。


…夜が、明けて…いく。
















今、見つめているこの朝日は繋げられた…もの。

暗闇が姿を変えて。

再び、こうして俺を迎える…。






笑っても、泣いても、悲しんでも…。

いつでもこの水平線は続いている。

…痛いほど、残酷に………。






…自分がこの場所せかいを嫌っても、憎んでも、拒んでも…。

何も変わらない。

いつまでも俺の瞳に…過去かげを、見せ続ける…。

















……………………………。






一服を終えた白衣の男は仕事場に戻っていく。

















「………なあ…。」






白衣の男は初日はつひを背に崩れた声で呟く。
















「お前はいつまで俺に、そのえがおを………、見せつけるんだ…?」
















あの頃の高校生おれたちが見つめていた一時の…幸せ…を。

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