4 白坂
白坂は、素直で明るくて、優しくて、人気者で、友達も多い方だった。
そんな白坂がなぜ、高校に入って同じクラスになって、席が隣で…、ただそれだけなのに、毎日毎日声を掛けてくるのか分からなかった。
正直面倒くさいと思ったことも何度もあるし、デリカシーがないことを言ってきて心の傷が広がることも多々あった。
でも、だんだん、白坂がいるから学校に行くことができているような気がしてきていた。
白坂が隣の席に座っていると思うと、なんだか学校に行くのが少し楽しいような気がした。
白坂は、誰にでも優しい。
女子も男子も関係なく好きと言い、嫌なことは素直に嫌と言う。
嫌味なく裏表なく、どうやったらそんなにのびのび深く考えずに生きているけるのだろうかと、密かに観察する毎日のようでもある。
そもそも学校というところは、集団行動を強いてくる。
そして、それが難しい人間にとっては生活しづらい。
個性だと言って手助けしてくれる人もいない。
自分でなんとかするか、ものすごくおせっかいな人が運良く周りに居合わせるかしない限り、打開策はないに等しい。
ただただ、じっと卒業を待つしか出口がないのだ。そこまでの辛抱なのだ。
それが、私の出した結論だ。
辛抱には中学の時に慣れた。慣れても辛いものは辛い。
だけど、そういう生き方が染みついている私には、自分を変える術も思いつかない。あきらめてしまっているのだろう。
そんな私には、白坂は眩しかった。
ただ、不思議と白坂のことは、羨んだり、眩しすぎて住む世界が違うとか思わず、素直に明るい場所にいる人だと受け入れることができた。だから、話しかけられても、なんとか返事をすることができた。どんなに言われても、逃げ出したくなるような圧力を白坂からは感じなかった。
白坂のその明るさは、私にも少し光を与えてくれていた。
何かと一人になろうとする私に、
「ねえ。一人でいるの楽しい?」
と、デリカシーのない言葉を掛けてくる白坂。
そのたびに、私の心の中はぐちゃぐちゃになる。
「好きでこうしているわけじゃない!!」
と、言ったこともある。すると白坂は、
「だったら俺といようよ!俺、黒田といるの好き!」
屈託なく笑うのだった。