持ってたのか!?
「なに!?赤山と交換した!?」
「うん、したよ。」
「いつ?」
「こないだ。」
「最近なのか?」
「うん。」
くそー、あいつ抜け駆けしくさりやがって!!!!
事の発端は、
「お前さ、念のため聞くけど、携帯…よもやスマホなんて持ってないよな?」
俺がした質問に遡る。
せっかく付き合う(正確にはまだ好きだと言われていないが…)ようになったのに、連絡手段がないことに気づいたのだ。
どうせ持ってないだろうと思って、今まで聞かずにいたのだが、付き合うようになった(まだ疑問だが…)のに連絡手段がないとか、悲しすぎるだろうと思い、なんとなく聞いてみた。
はっきりと”俺たち付き合ってるよな。俺のこと好きか?”と黒田に確認できずにいる俺は、チキンかもしれないが、今は置いておくことにする。
そしたら、
「持ってるよ。」
あっさりと、予想外の返事が返ってきたのだ。
「え!?持ってるの!?」
「うん。」
「どっち?」
「スマホ」
「スマホ!?なんで持っているんだ!?」
今の時代持っている方が普通なくらい普及しているのに、なぜか黒田は持っていないと心のどこかで確信していたので、信じられなかった。
それから、早く聞いておけば、後夜祭の前に探し回ることもなかったのに…と悔やんだりもしていた。
「なんでって、前言わなかったっけ?うち両親が共働きだから、ほとんどいつも家に一人なの。ご飯はここに作ってあるとか、今日は夕飯作っておいてとか、買い物しておいてとか買い物リストが送られてきたり、帰宅時間を連絡してくれたりするためだよ。」
そうか…。
一つも両親以外の使い道が出てこなかったが…。
それは想定内ということで!それが黒田としっくりくるし。
まあ、ここで男の友人の名前が一つでも出てきたら、そっちの方が心穏やかではないからな。
でも、連絡先交換している友達は、まじで一人もいないのか?
いてもいなくても、別に黒田に対する気持ちは変わらないが、なんとなく気になって聞いてみた。
この好奇心が、俺にさっきの雄叫びをあげさせることになる。
「両親以外に連絡先知っているやついないの?」
こんな質問するから、赤山に「黒田に厳しい」といわれるのかもな、と思いながらも、ストレートに聞いた。
すると、
「いるよ。」
え?これまた予想外の返事に、内心焦った。
悪い、黒田!マジ誰もいない前提で質問してた。
いるのかよ!?誰だよ!?正直に教えろよ!?
怖いけど、知りたい。
いや、彼氏として知る義務がある、うん、そうだ。
おそるおそる
「誰?」
声がちょっと弱々しくて、女々しい感じのトーンになってしまった。
少し恥ずかしい。
頼む、女子であってくれ!心の中で懇願していた。
そして、最初に出てきたその名前は、確かに女子であったが、
「なに!?赤山と交換した!?」
「うん。したよ。」
と、最初の会話に戻るのである。
赤山だと!?
夏休みの部活のあとで話した時に、俺が嫉妬するくらい仲良くなる予定とか言って、有言実行かよ!
あのとき確か黒田の連絡先を知らないといってなかったか?
俺に「黒田さんって携帯もってないんじゃない?使ってるの見たことないよ。」と言っていたはずだ。
じゃあ、いつ?
というか、赤山も俺と同じように黒田に携帯持っているか聞いたのか?
それとも、黒田から連絡先を交換しようといったのだろうか。
うう。黒田から言ったのなら余計妬ける…。
悔しい。
まずは彼氏だろうが、黒田よ…。
心は半泣き状態で、それでも真相が知りたくて、俺はまた質問してしまう。
「あのさ、ちょっと気になったんだけど。」
「なに?」
「えっと…。」
なんか、お前から教えたの?とか聞くの恥ずかしいな…。
でも知りたい。
でも黒田から教えたって聞きたくない。
知らぬが仏っていうじゃないか…。
自問自答が繰り返される中、俺からの質問を素直に待つ黒田に、なんでもないと言えなくなり、恥を忍んで聞いてみる。
だって、女友達に嫉妬とかダサいだろう。
でも、今しか聞けないな。
「赤山と連絡先交換したとき、先に聞いたのどっち?」
うわ、恥ずかしい…。
恥ずかしがっている俺に気づかず、普通に答えてくれた。
「えっと、どっちって、どっちだったかな。白坂みたいに赤山さんに携帯持ってるの?って聞かれて。」
「うん。」
黒田は、赤山とのやり取りを思い出すように口元に手を当て、斜め上の方を見ながらその時の状況を話し始めた。
「持っているなら連絡先交換しない?って言われたから交換した。私、文章書くのとか苦手だから、変な返事になって嫌われないか心配っていったら、大丈夫、変なの知ってるし、まともな文章が返ってきたら、それこそゴーストライターがいるのかと疑うわって言われた。」
おいおい赤山、お前も大概だな。
俺のこと言えねーじゃないか。ひどい言い草だ。
それを普通に受けている黒田も大概だがな。
「そ、そうか。それで、やりとりしているのか。」
「うん、時々。」
うう、そんなこと聞いたら内容も気になるではないか。
だが、そこまで踏み込んだら、こっそり携帯を覗く駄目な彼氏になってしまう…。
そして、欲が出た。
黒田から「連絡先交換しよう。」って言われたい、という欲が…。
「あのさ、俺もスマホ。」
さりげなく、ポケットから自分のスマホを取り出す。
「あ、白坂のスマホケース綺麗!」
うう、全然違う答えが…。
まあ、このケースはお気に入りなんだけどな。
同じものをみて、同じように”いい”って思ってもらえるのって、なんだか嬉しいな。
とても気に入ったのか、目が釘付けで、この色いい~とかいって目を輝かせている。
やっぱり女の子だなと、その様子を微笑ましく見ていた。
そして、思いついた!
そうだ!
「気に入ったのか?」
「うん!この色と絵、すごく好き。」
最後の言葉は、俺にも言ってくれよ~。
「ねえ、白坂どこで買ったの?」
お願い!教えて!欲しい!
顔で訴えてくる。とても心惹かれている様子だった。
俺は、思いついたことを口にした。
「じゃあ、今日帰りに買った店寄っていくか?」
「いいの?部活は?」
「今日は休み。そんなに遠くないから、帰り行こうぜ。」
「うん!」
とても嬉しそうだ。
黒田、俺がさりげなくお前との”放課後デート”の約束をしていることに気づいていないな。
二人で出かけるの初めてだろう?
黒田は、俺と二人で出かけることに、携帯ケースに夢中で気づいてないみたいだけど。
なんか、デートにこぎつけて、俺GOOD JOB!だよな。
放課後楽しみだな~
だってさ、もし同じの買ったら”お揃い”なんだぜ。
俺がウキウキしちゃうよ。
このケース買ってよかったな。
黒田の誕生日もうすぐだし(こないだ聞き出した)、そんなに高くないし、プレゼントしてやろう。
俺のが”乙女”かよ?と、自分につっこみつつも、嬉しくなる。
ああ、放課後楽しみだなあ~
今日、初めて女の子にプレゼントを買った。
色違いのお揃いのスマホケース。
その日の夜、ベッドに寝っ転がってスマホをポケットから取り出す。
自然に顔がにやつく。
「来週の日曜空いてるか?」と、黒田にメールを送ろうとして気づいた。
その日、浮かれた俺は、連絡先を交換することをすっかり忘れていたのである。
「ああ…俺って…。」
頭を抱えて悶絶した。ほんとアホだ…。ダセー。
連絡先を交換できたのは、それからしばらくして…。
(なんで次の日ではないのか?ああ、突っ込まないでくれ~。それは俺が…うう…マジダサイな…)
そして、最初に赤山の名前が出てきてこんなやりとりをしたせいで、聞けなかったけど、他にも連絡先を交換したやついるのかな。
まあ、それは、おいおいだな…。
はあ、好きだと言っても、全然黒田のこと知らないな…
なんとなく、寂しくなる俺だった。
いやいや、また聞こう!
そう、聞けばいい。
知っていけばいいんだよ。
そして、俺のことも知ってもらおう。
これからが、楽しみだ!
結局すぐに前向きになるのが、
俺だ!




