18 まずはここから始めよう!
さっき落としたカバンを拾ってくれて、私に帰ろうと促す。
私はカバンを受け取ると、白坂と一緒に歩き出した。
「あーあ。なんでこんなへんてこなの好きになったかな。俺馬鹿だな。でも、やっぱり気になって、話していたくなって、それでもって放っておけないんだよな。」
前髪をクシャとかきあげて空を見上げる。
そういった白坂の横顔が、なんだか眩しく見えて、
「今、白坂がキラキラしてみえる。」
太陽のせいかな?思ったままを口にすると、
「もう、本当に勘弁…もう降参です。」
頭をバリバリかきながら、
「お前のこと好きになった俺の負け。お前の壁を、俺がいつかぶっ壊すから覚悟しておけよ!」
「はい、期待しています!」
にこりと笑うと、白坂はガクッと肩を下げた。
また敬語かよ…なんなんだもう…これから大変だ…とかつぶやいている。
「確認なんだけど、白坂は私のことが好きなの?」
「はいはい、好きですよ。本当になんで好きなんだか。」
「そうだね。」
「俺もそう思うよ!」
やけくそみたいに言う白坂が、可笑しくて思い切り笑ってしまった。
そんな私のことを、ちらっと横目でみながら、
「でも、ここ一か月の間、その笑顔を封印したのは、間違いなく俺だな。俺の影響力を今痛感している。」
と、とても満足顔で、わけの分からないことを言い出した。
「うん。そうだね。」
素直に受け流すと、ばつが悪そうに、
「ごめんな。」
と軽く頭を下げた。
「ごめんは私が言うこと。今までひどいこと言って本当にごめんなさい。ずっと謝りたかったの。それから、さっき白坂が言ったとおり、私が言ったことだから私に責任がある。あの時は、言い過ぎたし、そうされて当たり前だと思った。白坂は、本当に私のことを考えて、いろいろとしてくれていた。白坂がしてくれたことは、確かに、私の学生生活を、少し楽しいものに変えてくれた。それなのに、私は酷いことばかり言って逃げた。時間が経つにつれて、白坂のためにはよかったんだって思うようになったの。こんなわからず屋の私なんかにひっかかっていたら、人生もったいないって。」
黙って聞いていた白坂は、ふうっと力を抜くように息を吐き、空を見上げた。
「これだよ。結局、いつでもちゃんと考えているんだよ、お前は。」
いつの間にか、私のことを“お前”と呼んでいる。
「お前ほど、面倒で、阿保で、可愛くて、飽きないやつは他にはいないよ。」
そう言って笑う白坂の顔は、とても優しいものだった。
この笑顔を、ずっとみていたいなと思った。
白坂は出会ってからずっと、私をいい方にも悪い方にも心を動かす。
でも、それはいつも私に真実を教えてくれる。自分と向き合うことを教えてくれる。
「信じてみようかな。」
ポツリと言ったその言葉に白坂は、
「それだ!」
と、右手を高く掲げて叫んだ。
「それだ、黒田!信じる!そう、信じるだよ!」
高く掲げた右手をすっと下ろすと、私の前に右手を差し出して言った。
「まずはここから始めよう!」




