10 やっぱり一人になってた
―2学期の始業式―
「黒田、おはよう!」
いつも通りの白坂が目の前に立っていた。とまどいながらも、
「おはよう。」
と、こたえると、いつも通りの白坂の笑顔がそこにあった。
そして、赤山さんも変わらず声を掛けてくれた。
お昼ご飯も、何も言わなくても赤山さんが私の席に来て、白坂の椅子を借りて座るのだった。
身構えて登校したのに、いい方に拍子抜けだった。
9月に入ると文化祭の準備で忙しくなっていた。
部活動をしているクラスメイトは、部活の出し物の準備にも追われ、帰宅部はクラスでこき使われていた。
だから、帰宅部の私も、班分けとか人とか一切関係なく、“立っているものは親でも使え”方式で、手が空いたらどんどん仕事が与えられ、一人にならずに済んだ。
そして、そんなときは決まって、白坂は私のそばにはいなかった。
9月某日、今日は文化祭。
「日本の伝統おもちゃで遊ぼう」というテーマで、クラスの出し物を行う。
教室にはベーゴマや、めんこ、竹とんぼ、輪投げなどいろいろなおもちゃが並べられ、実際に遊ぶことができるのだ。
朝から、小さい子供を連れた家族連れで賑わっていた。
私は受付をしたり、遊んだおもちゃを片付けて次に使う人のために準備をしたりして過ごした。
お昼は順番にとるので、一人でも気にならなかった。
下駄箱をでてすぐの、どっかの部活が出している屋台でおにぎりを買って食べたりした。
2日目も滞りなく済んで、これから、学生だけの後夜祭が始まろうとしていた。
お祭りは大好きだけど、文化祭は苦手。
集団でいないと居場所がない。
誰もいなくて、一人でいられる場所があれば心休まるのに。
やっとクラスの出し物から解放されて一息つけるはずなのに、仕事がなくなった途端、一人になる恐怖に心が支配されていくのだった。
みんな、「部活に戻らないと。」とか、「もうすぐ後夜祭が始まる。」とか言って、慌てて教室から出ていった。そんな中、黙々と後片付けをしていたら、気づいたときには教室には私しか残っていなかった。
「あれ?誰もいない…。いつの間に…?」
教室にひとりぼっちだった。
みんなが教室を出て行ったことに気づかないなんて、馬鹿だなあ私って。
今日中にしておかなければならない最後の後片付けを、たった一人でしていたのだ。
それに気づきもしないなんて。自分に呆れてしまう。
でも、言っても仕方がない。
「あと少しで終わるし、やってしまおう。」
自分に声を掛けて、自分を励ますと、誰もいない教室で「うん、頑張る!」とか言ってみたりして、さらに虚しくなりつつも、後片付けを再開した。
やっぱり一人になってた…




