閑話 ・ 最強の二人
あの後、大泣きして疲れ切ってしまった私は、お父様によってベッドに戻され、そのまま眠りについた。
そして、翌朝。私はとても重大なことに気づいて愕然とした。
「なんてこと、こんなことをスルーしていたなんて、ほんと私は愚か者!」
そう、昨日のあれやこれやで、意識から流されてしまったが、今の私、アリスティアは、あのエルシミリアと同じ。
そう! あの【西洋超絶ロリ美少女】のエルシミリアと全く同じ容姿なのだ!
美少女!
美少女!
美少女!
重要なことなので心の中で、三回叫んでみました。
エルシミリアを初めて見た時、「この世に、こんなに美しく、可愛く、愛らしい女の子」がいるのかと感動を覚えた。日本のテレビで持て囃されていた子役達はなんだったんだろう。
世界には上には上がいるのだよ、謙虚に生きようね! 下々の方々。(はーと)
ダメだ、嬉しすぎて、慢心が止められない! このままじゃ、極悪な性格になって悪役令嬢へまっしぐらだ。婚約破棄&没落の未来が待っている。
記憶を残してくれた。
優しい家族の元に生まれさせてくれた。
500円玉くれた。(これ、言葉にするといまいちなんな)
そして、
超絶美少女にしてくれた!!
「葛城の神様、MY神様、最高! 愛してる!! イェーイ!!」
ダメだ、思わず叫んでしまった。
時間はまだ早い、使用人さん達もまだ働いてはいないだろう。ホッ。
よし!
せっかく美少女になったのだ、あれをせずに、おけようか、いや おけない!
私は、ベッドから飛び起きると、クローゼットに駆け寄り、バッ! と両開きの扉を開けた。
さすがは伯爵家令嬢のクローゼット、野乃の安物合板クローゼットの中身とは大違いだ。
「めっちゃ沢山ある、どれも可愛い、それに、めっちゃ高そう…… このあたりなんか全部、高級シルクやない」
思わずため息が出た。
「こんな、天国みたいなクローゼットなのに、以前のアリスティアは全然、興味がなかったのよね。空虚って悲しいわね」
どこかで、原因のお前が言うなって声が、聞こえた気がしたけど、気にしない。
ピンク、ひらひらの一番可愛らしいドレスを、取り出してみる。
「これ凄い、昭和のアイドルの衣装みたい!」
よし! 挑戦だ!
ピンクひらひらに着替えて、鏡台の前に立つ、この鏡は大きいから全身が映る。
「似合う! 似合うよー! 前世じゃ、こんなの恥ずかしくて着られなかったよ!」
気を良くして、次から次へと、服を変えていく。もはや、一人ファッションショー状態。どれを着ても似合う。
「なんでこんなに似合うの! 可愛いー! 美少女最高!! 」
『ねえ、扉に鍵かけた? こんな馬鹿みたいなの人に見られたら最悪よ』
「あ、そうね、さすがにこれを人に見られるのは…… って誰!」
驚いて周りを見回すも、誰もいない。
『私よ、私。もう一人のアリスティア』
「えー!『空虚なアリスティア』あんたまだいたの! もう私と混ざり合って一つになったんじゃないの!」
『その【空虚なアリスティア】って呼び方やめい!』
『私は、あなたの魂と混ざり合ったわよ。九割だけね』
「九割って、なんでそんな中途半端なことするのよ」
『あなたと混ざり合う時にさー、私思ったのよ』
心の中で響く声なのに、ため息をついてるように感じた。
『この子と完璧に混ざり合うのヤバくね? 少しは突っ込める意識、残したといた方が良くね? って。だから一割残した』
「失礼ね、どんだけ私信用ないのよ。それに、なによその口調、令嬢らしくないわよ」
『お上品な部分は、あなたにあげちゃったわよ、あんまし効果出てないみたいだけど。突っ込むには切れの良い方がいいでしょ』
「私は、頭の中で、漫才やる気はないの! つべこべ言ってないで、私の中に混ざってよ!」
『いーや』
きーっ!
それから一時間
私達はまだ、鏡に向かっていた。
「こ、こうかな?」
両手を胸元に重ね、小首を少しかしげて、上目遣いにする。
『違う、違う、角度がね、もっとさー、こういうのあざとくてもいいのよ』
見上げる、角度を少し深くする。
『そう、その角度よ、その角度! そこでウインク!』
んふっ!パチリ!
『きゃー もうバッチリ! これで落ちない男なんていないわよ! 私達って最強ー!』
この後、一割さんは
『私、いる意味ないみたい……』と言って私と混ざりあってくれた。
真のアリスティアの人生が、今始まった。
一瞬、一割さん残そうかと思ったのですが、止めました。話がごちゃごちゃしそう。




