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コーデリア姫の謝罪(1)

 私とエルシミリアは、コーデリア姫の意識の中から戻って来た。

 

 コーデリア姫の作った、超巨大魔力球は、ユンカー様、ノエル殿下、オリアーナ大叔母様、ルーシャお姉様、私と意識を入れ替えたカイン、の五人が、頑張って抑制してくれていた。カインは、私と意識を入れ替えた後すぐに、魔力球の無効化を試したらしいが、全くダメだったとのこと。本来の「印」500円玉に戻ってから、無効化してくれた。


『アリスティアの体、無能~。やっぱり、僕がいないとダメだね』


 今度、いっぺんシメる。


 こうして、ようやく危機は去った。姫の作った超巨大魔力球が、崩壊、爆発を起こしていたらと思うと、ぞっとする。王都からは10エクター(約5キロ)離れてはいたが、王都自体への影響は免れなかっただろう。あの堅固な城壁が、爆風に耐えてくれれば良いが、もし耐えられなかったら…… これは考えたくない。


 後で、コーデリア姫に、何故、あのような暴走を起こしたのかと尋ねた。


 答えは、怖かったから。


 彼女は、十二柱の神々を作り、自らの神としての仕事を、彼、彼女らに丸投げした。つまり途中放棄したのだ。そして、人に、コーデリアに転生した。これは、神としては明らかに職務怠慢。処罰されても仕方がない。


 それ故、神であった自分でさえ知らない、無効化の魔術を駆使するエルシミリアを、コーデリアの行動に怒った高位の神々が差し向けた者と勘違い。それで、パニック暴走。


 そのパニック暴走は、エルシミリアが、渾身の頭突きでコーデリア姫に、脳震盪を起こさせ、なんとか一時停止させた。その後、カインの力で、私とエルシミリアが、コーデリア姫の意識、魂の中へ入っていった。コーデリア姫の魂は、私達の介入にすぐ気付いた。そして、私達が、彼女を処罰するために、送り込まれた者ではないことにも気付いた。私達に全く悪意が感じられなかったし、緊張感も緩く、あげくの果てには、姉妹でじゃれ合い始めた。こんな緩々(ゆるゆる)の姉妹、高位神の手の者である訳がない。


 彼女の恐れたことは全くの杞憂。迷惑至極。


 コーデリア姫は意識を取り戻した後、全員に、今回のことを謝罪した。


「皆さん、今回は本当にご迷惑をおかけしました、これからは生活態度も改めたいと思います。誠に申し訳ございませんでした」


 今での横柄な態度が一変。殊勝になったコーデリア姫に、皆、驚き、そして喜んだ。ユンカー様とノエル殿下は特に、喜んだ。二人とも目に涙さえ浮かべていた。


 喜びの涙を浮かべるユンカー様は、それはそれは美しかった。感情を表に出されると、ユンカー様の麗しさは倍増。勿体ないです、これからはもっと、私達に、コーデリア姫に、色々な表情を見せてくださいませ、ユンカー様。


「お詫びとしてはなんですが、今回、御迷惑をかけた皆様に、私の魔力槽の一部を御譲りしたいと思います。どうか受け取って下さいませ」


 このコーデリア姫の申し出に、オリアーナ大叔母様とルーシャお姉様は歓喜した。二人とも魔力容量に関しては苦労人だしね。当然の反応だね。


 大叔母様は、喜びのあまり、コーデリア姫に尋ねた。


「殿下、魔力槽の一部を譲るなど、本当に出来るのでございますか!」


「出来ます、出来るのです。私は元神でしたので」


 こら、神とか言っちゃダメでしょ。コーデリア姫!


「へへー、有難き幸せ」


 オリアーナ大叔母様は冗談と思ったのか、そんなことはどうでも良いのか、スルーした。


 ユンカー様は、これ以上いらないと固辞した。ユンカー様の魔力容量は知らないが、エルフだし多いに決まってる。必要ないのだろう。ノエル殿下とエルシミリアも、いらないと言ったけれど、コーデリア姫が、貰って欲しいと泣きそうな目で訴えたので、結局、貰うことなった。コーデリア姫クラスの美少女の泣き顔に勝てる者はいない。


 私の泣き顔(偽装)はいつも失敗する。神の化身の如き美少女と賞賛されているのに解せない。何故だ? 隠した黒い心が漏れてしまうのか? もっと精進しなければ。


 コーデリア姫から魔力槽を分けてもらって、各自の魔力容量は以下のように変化した。


 ルーシャお姉様、 ゴールド中位 → プラチナ下位。

 エルシミリア、  ゴールド中位 → プラチナ下位。

 ノエル殿下、   ゴールド中位 → プラチナ下位。

 大叔母様、    シルバー上位 → ゴールド上位。


 オリアーナ大叔母様以外は、二段階、容量ランクが向上した。大叔母様は最高の三段階アップ、とっても喜んでいた。魔力容量のせいで騎士団長になれなかった過去があるだけに、喜びもひとしおだろう。でも、この中では最下位。ゴールドの上位が最下位なんて、皆、魔力的には化け物になってしまった。


 そして、さらに化け物になったのが、私、アリスティア。

 コーデリア姫から、いちばん沢山の魔力槽を分けて貰った。他の人は体質的に、あれ以上、譲渡出来ないそうだ。本当なら今回の殊勲、エルシーが貰うべきなのだろが、体質的に不可では仕方がない。貰えるものは貰っておくべきだろう。陛下も以前そう言っていた。


 私は、「プラチナの上位」 から 「オリハルコンの下位」 になった。


 オリハルコンって何やねん、と思われるだろう。魔力容量ランクは教会の規定では、プラチナ上位までしか、基準がない。それ故、新たなる上位ランクを設定した。もちろん、一人で決めた訳ではない。元神様、コーデリア姫に相談した。


「容量の基準はこれで良いとして、ランクの名前、どうしましょう?」

「オリハルコン」

「オリハルコン! なかなか良いですね。私も聞いたことあります。よく、オリハルコンなんて知っておられましたね」 

「海の少年トリトンで知りました。トリトン、カッコ良かったです」

「……」


 コーデリア姫、あなたはいつの時代の人ですか? 私の両親が観てたやつですよ、それ。


 これで、コーデリア姫の謝罪の一つは、()()終わった。



 そして、もう一つの謝罪、エルシミリアとの約束。

 これはまだ、実行されていない。


 『私、コーデリアは、エルシミリアお姉様の、可愛い妹になります!』


 これ、どうやって実現するの? 実現できれば、麗しい姉妹の誕生、素晴らしいとは思うけどね。


「コーデリア」

「はい、何でしょう、エルシミリアお姉様」

「タイが曲がっていてよ」

「あら、私ったら」

「身だしなみは、いつもきちんとね。マリア様が見ていらっしゃるわよ」


 思わず、懐かしの前世ネタに走ってしまったが、これは無い。この世界には、マリア様も、セーラー服も存在しない。


 マリア様がみてる、通称、マリみて。懐かしいなー、誰かと語り合いたいなー……


 …… って、いるじゃん、平行世界の私、コーデリア姫!


 姫殿下を、妹に出来れば、懐かしの、前世ネタし放題! 語り放題! 最高やん!


 こんな逸材を、放置しようとした、私のバカ!

 バカ! バカ! バカ! バカ過ぎ!


 これは、エルシーに協力しなければなるまい。なんとしてでも、コーデリア姫をゲットせねば!


 えっ? それって私利私欲だろ? って。


 そう、私利私欲。それが何が悪いの? 世の中の殆どは私利私欲で動いてる。


 コーデリア姫も了解済みのこと、臆することなど何があろうか?


 私は、必死で頭を動かした。


 こんなに、楽しく動かせたのは、久しぶり。


 楽しいなー。


話題を共有出来る人がいない状況は、辛いものです。アリスティアを責める気にはなれませんが、配慮は必要でしょうね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ネタし放題の妹を出来た、というより同一人物でしょう? 自分自身と話し合いのは興奮よりは変な感じだと思う。。。
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