表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/161

神々との対話

 私の言葉に反応して、

 中身が神々に乗っ取られてれるルーシャ様が、こちらを向いた。


 「!!」


 思わず、息を飲んでしまう。

 ルーシャ様は、元々、素晴らしい美少女。

 私を理想化し過ぎ、シスコン爆発のエルシミリアでさえ、認めるほどの。それが、神々の降臨によって、さらに、さらに強化されている。あまりの麗しさに眩暈がする。


 思わず、足元に跪いて、嘆願したくなって来る。


 どうか、私めを、側使いでも、端女(はしため)でもなんでもかまいません。一生お傍に置いて下さいまし!


 アホか! どんなに美しかろうが、麗しかろうが、神々しかろうが、あの神々は、ろくでもない神よ!

 容姿に惑わされてはダメ! よく見て、あの表情を、氷のように澄んで美しくとも、慈愛の欠片も伺われない。こちらを見る目は、まるで虫けらを見るかの如くじゃない!


「おお、便所虫、我らの神圧の元で、覚醒できたのか、褒めて遣わすぞ」


 よりによって便所虫! これでも周りからは、神の化身のごとき、美少女と言われてるの。せめて、蝶ちょぐらい言って、カナブンでもOK。


「ははあ、有難き幸せ、天から深き深海まで、この世の全てを統べる、いと尊き御方(おんかた)に、そのようなお言葉を頂けるとは、このアリスティア、一生の誉れ、最高の歓喜にございまする。この喜びを胸に、私めは神々の忠実な僕として、賢明に励みたい所存ありまする、へへぇー」


「普通に喋れ、出来損ないの太鼓持ちのようで、聞いておられん。神の天高き慈愛を持って、許してやるぞ」


 出来損ない? 悪かったわね。大体太鼓持ちなんて、見たことも会ったことも無いの。仕方ないでしょ。


「お心遣いに感謝いたします。尊き神々よ、一つお尋ねしたいことがございます。御身が今お入りになってるルーシャ様に、如何なる使命をお与えになったのでしょうか。お教え下さいませ」


「うむ、慈愛深き、我ら二柱は、人が病に苦しむのを助けてやりたかったのだ。だから、この者に、神人に近き回復魔術の能力を与えたのだ。人を癒せ、お前は『癒しの聖女』だとな」


「なんという、お優しきお心遣い。人を代表して御礼を申し上げます」


「うむ、なのに、其方はこの者ルーシャの邪魔をした。我ら神々に逆らおうとの意志ありと、みるがどうじゃ?」


「滅相もございません。先ほども申し上げました通り、私は神々の忠実な僕。ですが、さすがに、禁術バンピーレを使われ、単なる魔力貯蔵槽として生きるのは、私とて、とても辛ろうございます」


「物事に犠牲は付き物である、我慢せよ」


 おい、他人ごとだと思って言ってくれる。神々にとって人など、塵に過ぎないのはわかっているが、もう少しの気配りはないものか。


「我慢せよとは、御無体な。では、ルーシャ様が禁術を使おうとしたことはどうなのでしょう。神々の教えを破っているのですよ。それを我慢せよとは、おかしいではありませんか」


「うーむ、それもそうではあるな。では、お主達への罰は軽くしてやろう、後、十年の命を許す」


「十年! それは短過ぎでござます。二十歳で死にとうはござません」


 野乃より、マシだが、せっかく生まれ変わったのに、また、若死にとはあんまりだ。


「短いか?」

「はい、短こうございます」


「崇高なる神々よ、私めも、お聞きしとうことがございます。質問をお許し下さいませ」


 オリアーナ大叔母様が突如、話に入ってきた。神々は大叔母様に視線を移す。


「許そう。お前の霊格は他の者とは、段違いだ。来来世以後くらいには、神界の最下層においてやっても良い。さあ、なんなりと話してみろ」


 霊格が段違いって、大叔母様凄いな、尊敬するわ。でも、エルシーには伝えないでおこう。私が負けるの、マジで悲しむからな、あの子。


「有難き幸せ。ではお聞き致します。御身らはルーシャ嬢に、神人にも近き、魔術能力をお与えになったのに、どうして、魔力量を『シルバーの下位』になど、なされたのですか? これでは、いくら高位の回復魔術が使えたとて、少ない人数しか病から救えず、使命を果たすことは至難です。

 せめて、ゴールドの魔力量をルーシャ嬢にお与え下さっていたら、ルーシャ嬢も禁術に手を出そうとは思わなかった筈。どうしてシルバーの下位になどに据え置かれたのですか?」


「うっかりじゃ」


 おいおい! それで良いのか! そんなのでよく神が務まっているな。呆れるわー、ほんと呆れる。


『同感だね。僕がこちらの神々を軽蔑するのは、神格以外に、こういう点もあるんだよ』


 カインが話かけて来た。初めて意見が一致した。


「うっかりでございますか。御身らは世界の隅々まで、目を配らねばならぬ、お忙しい身、致し方ないことでございます。では、今、この場で、ルーシャ嬢の魔力量を上げては頂けませんか。さすれば、ルーシャ嬢も後顧の憂いなく、御身らから与えられた使命に邁進することが出来ます。如何でございましょう」


 大叔母様、ナイスな提案。せっかく神々に会ったのだ、神々にやってもらえるなら簡単だ。問題解決! 私達の寿命以外はだけど……。


「ダメだな、この者の魔力量は神界のアカシックレコードに記録した。滅多なことでは、これは弄らぬ決まりだ。我ら十二柱の決め事である。諦めよ」


「決め事……」大叔母様の顔が絶望の表情を浮かべながら、目で合図を送ってくる。


 よし、神々に申し出よう、これで罰も無しにしてもらおう! と私が思った瞬間、


 神々が仰られた。


「しかし、お主ら人が、自ら問題を解決するのならば、我らは何も言わぬ。見事、この者、ルーシャの憂いを取り除いてみよ。さすれば、お主達の、無礼は許す。寿命を削る罰も無しにする」


 頼もうと思っていたことを、神々の方から言ってくれた。ラッキー!


「本当にございますか! ありがとうございます、ありがとうございます!」

「大いなるご慈悲、感謝致します。御身らの栄光よ永遠に!」


「うむ、では さらばじゃ。赤点取るでないぞ」


 神々は去った。フッという感じで消え去った。もっと仰々しい去り方すると思っていたのに、拍子抜けだ。神々が身体から去ったルーシャ様の身体がふらつき出し、前方へ傾く。


 危ない、このままでは、ルーシャ様が顔面ダイブしてしまう。ルーシャ様のお鼻が、またトナカイさんに!


 トナカイさんの難は回避された。大叔母様が瞬時に動き、受け止めたのだ。まるで姫を助ける騎士のようだ。お母様の気持ちが少しわかった。大叔母様は男前過ぎる。これは惚れてしまっても仕方がない。五人も子供産んでるけどなー。


 周囲を押さえつけていた神圧も、きれいさっぱり無くなった。これで皆も、大丈夫。すぐに意識を取り戻すだろう。


 後は、神々からの課題を成し遂げることに集中しよう。ルーシャ様の魔力量を何としても増やし、彼女の憂いを取り除く。絶対に失敗してはならない。


 これには、私の、皆の寿命が掛かっている。もし失敗すれば、ゲインズブラント家は十年後に崩壊する。オルバリスは混乱し、多くの民がそれに巻き込まれ、多大な被害を被るだろう、そんな最悪な未来は来て欲しくない。


 でも、成功の確率は半分くらい、たぶんそれくらい。


 神様、どうか、どうか、私の試みが成功しますように!


 私が祈るのは、この世界の神々ではない。葛城の神様、MY神様。



 しかし、こちらの神々の去り際のセリフ、笑ったな。


「赤点、取るでないぞ」


 先生か? なんて俗っぽい神様。ちょっとだけ、親近感、好感が湧いた、ほんとちょっとだけ。


 後で、大叔母様が聞いてきた。「赤点」って、何?


 ほら、あるじゃないですか、試験で落第点をとると成績表が赤字で書かれていて、と説明すると。あれは「青点」だと返された。貴族学院入学前の私は知らなかったが、この世界では落第点は「青」で書かれるとのこと。


 何故に、神々は「赤点」と言ったのであろう? 単なる言い間違いかな? うっかりかな?


 まあ、こんな瑣事はどうでも良い。


 今晩は、もう休もう。ことを為すのは明日の晩。ゆっくり休んで、疲れをとり、万全の体調で臨もう。




 ルーシャ様。明日の晩、あなたを縛り上げる。

 かなり痛い目に遭わせるかもしれない。いや、確実に痛いだろう、我慢が出来ない程に。


 しかし、それでも我慢してね。それがルーシャ様の憂いと、私達の寿命を救う、私が知っている、たった一つの方法なの。


 がんばって耐えてね、お願いよ。ルーシャ様。


うっかりさん。外から見てる分には楽しいですね、外から見てる分には。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 神様達、やはり凄く勝手てムカつく。少し俗っぽい所も有るですがw 流石は悪霊叔母様ですねw ルーシャさんに縛りプレイか、楽しみですね(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ