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鏡の中のアリスティア

2023.02.09 サブタイトル改題。

「ううっ 行ってしまった……」


 あの女の子、えっとエルシミリア…ちゃんやったかな。「お父様とお母様」とか言ってたなー。両親呼んで来てくれるんやろか? まあ、その方が良いよね。子供に聞くより、大人に尋ねる方が、この状況がどういうことなのか、わかるやろ。


「けど、戻って来てくれるまで、ベッドの上でボーっとしてるのも、なんやし。ちょっとお部屋拝見」


 私はベッドを降りて、鏡台やクローゼットのある方へ歩き出した。床には毛足の長い絨毯が敷かれていて、素足でも気持ち良く歩ける。「これも高そうやね」と庶民丸出しの感想を抱いていると、妙な違和感を覚えた。どこが、どうとは言えないのだが、周りが何か変なのだ。


 周りをじっくり見まわしてみる。西洋風の豪華な部屋、そういう意味ではおかしい所は何もない。


「分かった! 視点の高さや! この部屋も家具もみんな妙に大きいんや」


 やっぱ、西洋人は大きい人多いからな、家具も部屋もデカめなんやな。謎が解けたわ。さすが、「聖藤」合格者の私、なかなかの推理力やないの! うんうん。


 気がつくと私は鏡台の正面に来ていた。芦屋のマダムが持ってるような大きな鏡台、鏡が美しい彫刻がなされた枠で飾られている。そしてその鏡に映っていたのは、十歳くらいの少女が一人。先ほど出て行った筈のエルシミリアだ。いや違う、エルシミリアちゃんは白いドレスだった、その鏡面に映っている女の子は濃紺のドレスを着ている。それに……、


「なっ!」


なんで私が映ってないん? 超常現象か!


 狼狽してしまって、一歩後ずさった。すると鏡の中のエルシミリアそっくりの少女も同じように後ずさる。驚いた顔が少々間抜けに見える。たとえ超絶美少女であっても、そうなることもあるんやなーなどと、つい思ってしまうが、そんなことはホントどうでもいい。


「えっ、なんで! なんで!」


 思わず手を頭まであげ、髪を掴んでしまう。キューティクルの整ったプラチナブロンドの長い髪が揺れる。鏡の中の女の子も同じだ。


 どう考えても、鏡に映っているのは私。けれど、葛城野乃は純日本人、黒髪ショートの十五歳。目の前の鏡に映っているような、十歳くらいのプラチナブロンドロングの女の子である訳がない。


 ドッキリ!か? どんなドッキリ!や!


 人一人が、全く別の人間に変わってしまうなんてことがあるだろうか? 入れ替わり? 小林聡美が主演してたのでそういうのあった、アホか! あれは映画や! エンタメや!


 あまりに異常な状況に頭が追いつかなくなって来た。脳が悲鳴を上げ始めている。


 どうしたらいい! 何を? 考えろ! だから何を?


「お母様、早く早く! アリスティアお姉様がお待ちです!」

「エルシミリア、そんなに急かすでない。エリザはもう精一杯だ」

「そうよ、これが今のわたくしの… 」


 ドアのある方向から、エルシミリアとたぶん両親であろう男女の声が聞こえて来た。


 どうしよう…。先ほどまでは、何故、私がこの部屋のベッドに寝ていたのかと尋ねるつもりだったが、もはや状況はそんな簡単なものではなくなっている。


 『私は何故か、あなたたちの娘さんと同じ姿になって、この部屋のベッドで眠っていました。不思議です。「じっちゃんの名に懸けて!」でも「真実はひとつ!」でも何でも良いので、この謎を解いて下さいお願いします。ほんと困ってます。助けてお願い!』


 あかん、こんなの、ただの危ない人や。ほんまどうしたら… 対応が全く思いつかない、冷や汗が出るばかり。三人の足音が近づいて来る… ダメだ! もう時間がない!


「心配しないで」


 えっ? 自分の意志と関係なく、自分の口から出た言葉に驚き、苦悩で下げていた顔を思わず上げた。鏡に映っている少女が微笑えんでいる。その笑顔は満面で、とても幸せそう。


 私の口が更に動く。


「私が助けてあげるわ、野乃さん」


 その途端、私は体を自由に動かせなくなった。


両親登場できませんでした。お母様、鈍足です。いや、私が遅筆なだけ。

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