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禁術

これで、たぶん十万字越え。長かったような、長くなかったような。


20.04.22 ルーシャの年齢変更しました。

 私の名前は、ルーシャ・フォン・メイチェスタ-。


 メイチェスター枢機卿の次女、十四歳です。

 第九段階の回復魔法が使え、巷では稀代の癒しの使い手「聖女ルーシャ」として知られています。


 私が、聖女? 聖なる乙女? 笑えます。

 別に十四歳にして、淫乱とかではありませんよ。まあ、盛り場には、同い年の娼婦は、いっぱいいますけどね。彼女達も生きるためです。仕方ないのです。


 私は病が嫌いです。だから、私は神々から授かった力で、人々の病を癒してまわります。沢山、沢山、癒します。人々は私を賛美します、奉ります。その結果が、「聖女ルーシャ」なのです。


 でも、人からの賛美や呼称など、どうでも良いのです。私は病を、この世から消したいだけなのです。その為には手段を選びません。例え、それが神の禁じた術、禁術であったとしても。


 私は今、自宅の禁書庫にいます。鍵束を無断で持ち出しました。お父様のセキュリティは甘々です。


 今、お父様は十二神聖国に出張中、月一回ある枢機卿会議、定例会です。明後日まで戻りません。喜ばしいです。お父様は、高位聖職者なのに俗物で、ろくなことをしておりません。いない方がせいせいします。


 禁書庫に入ったついでに、部屋の中に置かれている金庫も開けてみました。なんと言うことでしょう。「オルバリス伯爵家に関する調査報告書」なるものが、あるではありませんか。ゲインズブラント家の家族構成から、交友関係、使用人の数、敷地の警護体制、館内見取り図、まで詳細に調査されております。


 まさか、アリスティア・フォン・ゲインズブラントの暗殺など、目論んだりしてないでしょうねー。もし、アリスティアを殺したりなんかしたら、私が直々に引導を渡してあげましょう。回復魔術は、悪用すれば、簡単に人を殺せます。証拠は残りません。


 しかし、この資料は使えますね。写しをとっておきましょう。


 では、本来の目的に戻りましょう。

 私の目的は、以前、一部の魔術好事家の間で存在が囁かれていた、とある禁術を見つけることです。

 どういう禁術かを、一言で言うと、


 人を、己の付属物にする禁術。


 この禁術は、己の霊体と付属物にしたい相手の霊体を、術式で繋ぎます。でも対等に繋ぐのではありません。己の霊体を上位に、相手の霊体を下位にして繋ぎます。下位の霊体から上位の霊体に働きかけることは出来ません。反対に、上位からは、下位に働きかけが出来ます。例えば、


 魔力を献上させるとか。


 繋がれた霊体間には距離は関係ありません。離れて生活していても大丈夫です。実現できれば、私はもう一つの魔力槽を外部に持てるのです。その相手が、アリスティアだったら最高です。


 プラチナの上位! 夢のような魔力量です。伝説クラスです。汲めども汲めども、魔力が溢れて来ることでしょう。病を癒し放題です。胸が高鳴ります。


 どうせ、無知蒙昧な田舎令嬢でしょう。せいぜい役に立ってもらいましょう。そうそう、こういう考え方も出来ますね。私の為に、神々が外部魔力槽としてアリスティアを用意してくれていたのかもしれません。私、神々に愛されてますからね。


 十冊ほど、調べました。まだ、見つかりません。

 でも、収穫はありました。禁術が本として存在しているのに、何故、実際に使われることが滅多に無いのか? の理由が分かりました。


 使わないのではないのです、使えないのです。条件が厳し過ぎます。大概の禁術が、第七段階以上の魔術能力を必要とします。これでは、禁術を使用可能な者は、オールストレーム王国の全土、近隣諸国全部を探しまわっても、十数名いるかいないかでしょう。

 幸いなことに私、ルーシャはその十数名いるかいないかに、入っています。


 さあ、頑張って探しましょう。


 ありました。イエイ!



 禁術、【 バンピーレ 】。



 なに、なに。

 以下の術式を、己の体液と共に、相手の皮下組織に打ち込む。さすれば、相手の全てを掌握し、意のままに奪い、操れるであろう。


 使用条件、医療薬学関連、第八段階以上。


 良し! これ、まんま私の為に用意されてたようなものです。 医療薬学関連、第八段階以上なんて私以外、どこにもいません。


 では、その術式は……何ですか、これ。五ページもあります。こんなの覚えきれません!


 と言いたいところですが、覚えられます、覚えられる。私の頭は、昔の十倍は良くなっています。神々よ、感謝いたします。


 後は、どうやって、アリスティアに打ち込むかが問題です。

 注射器は……駄目ですね。いくら田舎伯爵家とはいえ、初対面の相手には警戒するでしょう。探知魔術の使い手を配置する筈です。危険な器具はすぐ見つけられてしまいます。ではどうしたら……


 「!」


 禁術の名前に答えがありました。バンピーレ。


 器具を使うのが駄目なら、自分の身体を使えば良いのです。私は、病や怪我を、容易く治すことが出来ます。つまり、体組織を自由に操れるのです。自らの身体を一瞬で変形させることも可能なのです。


 『 ######! 』


 高速術式を頭の中で唱えました。違和感がでました、成功です。


 私は壁にある鏡の前に立ちました。


 ニヤっと笑ってみます。



 笑える。ほんと笑える。大笑いです。


 牙を生やした聖女、これ以上笑えるものはありません。



 用意は整いました。オルバリス伯爵家へ訪問希望の連絡をとりましょう。

 でも、お父様に知られると厄介です。知り合いの神官を使うのが良いですね。彼を間に入れれば大丈夫です。彼は私の要請を断れない筈です。なんたって、彼の死ぬ運命だった息子を、私は癒しました。今は、ピンピンして駆けまわっております。これくらいの対価は安いものでしょう。


 では、術式を覚えますか。


 おや、おや、術式に前文がありますね。意味あるのでしょうか。


「汝、我が奴隷となり、被虐の喜びに震えよ。被虐の喜びこそ、この世の最高の歓喜なり」


ルーシャ、どうしてこんな娘に。 いや、本作、そんなのばっかですね。主人公が一番ピュア?

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