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怖い

オリアーナ大叔母様の旦那の爵位を「宮中子爵」から「宮中伯爵」に変更しました。

 オリアーナ・フォン・バイエンス。

 

 宮中伯爵クリフォード・フォン・バイエンスの第一夫人。

 エイデン侯爵バートランド・フォン・ホーフトの六女。

 オルバリス伯爵ロバートの母方の叔母。


 幼少の頃より、魔術の才を発揮し、紋章取得前、十一歳の時点で、同等量の魔力量保持者の貴族(紋章取得済み)と変わらぬレベルの魔術を使えたという、稀有な人。

 王都貴族学院卒業後、十六歳で第一騎士団入団。三十四歳で退団、退団時点での騎士団位階は、第一騎士団副団長。


 侯爵家出身という出自、経歴や魔術能力の華やかさにしては、魔力量は意外と普通、「シルバーの上位」。


 エルシミリアが、切れた。

 

「わたしのことは何と言われようとかまいません。ですが、わたしがお慕いするアリス姉様に向かって、『へんてこな奴』とは何ですか! いくら大叔母様とはいえ、聞き捨てなりません! 即刻取り消して下さい!」

「取り消す? 見たままのことを言って何が悪い?」

「見たままって、どこをどう見たら、神の化身のような美しさのアリス姉様から『へんてこ』なんて、言葉が出て来るんです!」


 エルシーは私のことが絡むと、沸点が低いな。慕ってくれていることは分かるが、これからのことも考えると、これは少々まずい。後でさりげなく注意しておこう。


 ぷっ! オリアーナ大叔母様が噴き出す。

「お前、エルシミリアだったかな。自分と姿そっくりの双子の姉を『神の化身のような美しさ』? 自惚れもほどほどにな」

「なっ」


 オリアーナ大叔母様は、ある意味至極当然のことを言っている。周りの人達は、何故か、私、アリスティアの方が、エルシミリアより圧倒的に美しく、可愛いように感じているみたいだが、私にはその理由が全く分からない。皆は何を見ているのだろう? エルシーめっちゃ可愛いやん。


「容姿は同じでも、姉様はわたしなんかとは違うんです! 一目瞭然じゃないですか!」

「わからん。姿かたちも、今着てる服も全て同じ、ここで二人にクルクル回られたら、外観では全く判別がつかないレベル。どうしてそれが、一目瞭然なんだ?」


 大叔母様は、どうしたものか、という感じで、手で頭の髪を掻いている。その横にいるお父様の目は半眼、あーあって感じ。どうやらこうなることは分っていたようだ。


「オ、オリアーナ大叔母様の目は節穴です。とにかく取り消して下さい!」


 論理で対抗できなくなったエルシーは、レッテル張り作戦に変更したようだ。もう止めようよ、エルシー、敗色濃厚よ。


 しかし、オリアーナ大叔母様は、私達の何を見て、「へんてこな」「頭でっかち」などと言ったのだろうか? 私達姉妹の容姿はすごく整っている。普通、あのような言葉は出て来る筈がない………………

 

  ………もしや、あれか! 『オーラ』!


 エルシミリアのオーラは知性の高さを表す、青系統、紺碧色、その輝きは凄い、しかし、右側に比べ、左側の輝きが弱い。つまりアンバランス。


 私、アリスティアのオーラは自分で鏡で確認した時には驚いた。抹茶色と金色の二色のオーラがマーブル模様になって私から放射されていた。変なの! とは思ったけれど、どうせ他の人には見えはしないので、気にしていなかった。しかし今、何故私のオーラはマーブルなのかと考えてみるに、もしかしたら、私の魂の混ぜ合わせは、まだ不完全で、それがオーラに現れているのかもしれない。何事も一気に進むものではない。


 これは完全なる推測だが、たぶん、オリアーナ大叔母様もオーラが見えるのだろう。だから、知性のオーラを放つも、アンバランスさが伺えるエルシミリアは「考えて 考えて 考えて、ババひくタイプ」と、金と抹茶のマーブルな私は「へんてこな奴」と表現したのではないだろうか。

 

 では、私と同じくオーラが見えるらしいオリアーナ大叔母様は、どんなオーラを持っているのだろう? 私はオーラを観る時のモードに意識を切り替えた。


 さて、さて、大叔母様の色は?っと……… 完全なる白色、眩し! 輝度が高過ぎる! 眼が痛い! こんなの見続けたら失明する! 慌てて、モードを普通に戻す。本能が警告する、この人とやり合ったりしてはいけない。おとなしく、おとなしく、していよう。まるで存在しないかのように。


「取り消せって言われてもなー、それじゃ、勝負しないか? 私が負ければ取り消そう」

「勝負って何のですか?」

「魔術だよ、魔術戦」

「はあ? わたし達はまだ、紋章を得てないんですよ、そんなの勝負になる訳ないじゃないですか」

「だから、ハンデをやる。私は魔術を使わない、この剣一本で戦う。しかしこれでは魔術戦とも言えんか? はは、まあどうでも良い。どうだ、これくらいのハンデがあれば十分だろ?」


 大叔母様は腰の剣を少し持ち上げて言った。鞘に入った刃先は見えないが、凝った彫刻で飾られている(つか)を見るに、かなりの高級品、もしかしたら、ミスリルの業物かもしれない。


「それはまあ、確かに……」


 エルシーがチラチラ私を見て来る。妹よ、私に何を期待している。私が以前に生きた日本では、ある言葉が連呼されていた。「自己責任!」「自己責任!」、自分でなんとかして!


「アリスティアお姉様、わたしは、まだ戦闘魔術が使えません。お姉様は昨日『風の斬撃は完全にものにした』とおっしゃってましたよね」

「いや、それは…」


 私は確かに【ものにした】とは言った。でも【完全に】などとは言っていない。私が言ったのは【半分くらいはものにした】だ。つまり、まともに放てる確率は二分の一に過ぎない。エルシミリア、嘘はよくない、ほんと良くない。お姉ちゃんは悲しいよ。


「相手は剣一本、こんなの楽勝です。ギッタン、ギッタンにやっつけちゃって下さい」


 ギッタン、ギッタンって、エルシー、センス古いな。

 

「よし、相手はアリスティアか。では庭へ行こう」

「ちょ、ちょっと待って、私は勝負するなんて一言も……」

 

 な、なんだ、この話の流れは、こちらは心の準備も、魔術の準備も出来てはいない。エルシミリアが目をキラキラさせて、私に言って来る。


「アリス姉様、頑張って下さいね。プラチナ上位のお姉様が負ける筈ありません。わたしは姉様の栄光の瞬間を一生目に焼き付けます!」


 そんなの焼き付けなくて良い! それに、栄光の瞬間なんて来る気がしない! あの人なんか怖い! プラチナ上位とかそんなの関係ない、惨敗して、戦場の骸となっている自分しか想像できない!


「お父様、面白い展開になって来ましたね」

「そうだな、とても興味深いことになった」


 おい、そこの馬鹿親子、「面白い展開」、「興味深い」ってなんだ! なんで、一気に他人事気分なんだ! 自分の娘だろ、姉だろ、もっと心配しろよ!!

 狼狽のあまり。心の中の口調が、もはや令嬢のものではなくなった。


 オリアーナ大叔母様が、玄関口で私に呼びかける。


「アリスティア、早くしろ。私は気が短いんだ」


 No!!!!!!! 


今回、エルシミリアがアリスティアを、大叔母がいる前でも「アリス姉様」と呼んだりしてますが、それは冷静さを欠いているせいです。エルシーは感情制御をもう少し学ぶべきです。

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