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わがまま

 コレットを初めて見た時、一瞬、自分は野乃に戻ったのかと思ってしまった。


 コレットは似ていた、凄く似ていた。


 ……佐智にそっくり。


 新倉佐智、野乃として生きていた頃の私の親友。中学校に入ってからの友達だったけれど、まるで幼稚園からの友達と言っても良いくらい、私達は仲が良かった。

 とても面倒見が良い子で、私はずいぶん色々と助けてもらった。私が、クラスの委員長に籤で選ばれてしまった時(あんなの、誰もやりたがらない)、自分から副委員長に立候補してくれたし、

 スーパー音痴だった私をカラオケボックスに連れ出し、マンツーマンで特訓してくれた。その甲斐あって、私は、スーパーを脱出、やや音痴のレベルに到達できた。これはほんと佐智に感謝。マイクを持つ私の横で、「なんで、そこで低くなるんや!」と頭を抱えながら、叫んでいた彼女の勇姿が今でも忘れられない。


 ちなみに、今の私、アリスティアは音痴ではない。音痴でないどころか、絶対音感まであり、かなりの美声。野乃の頃を思えば涙が湧き出る。この体、凄過ぎる。野乃がノーマルクラスだとすれば、アリスティアはSSSクラス。MY神様、感謝いたします!


 私だって、佐智に頼っていたばかりではない。佐智に好きな男子ができた時には、料理経験のない彼女にクッキーの作り方を教え、作るのを手伝ったりした。結局、佐智は玉砕したけれど。おのれ! 佐智を振るとは身の程知らずな! 今の私なら、この膨大な魔力でもって呪い殺してくれようものを……でも、それで良かったのだ。佐智には後に、もっとカッコ良い彼氏ができました。リア充め、爆発しろ。


 佐智は、もちろん日本人、コレットは、地球でいうところの西洋人種。だから、容姿的に全くそっくりとは流石に言えないが、目鼻立ちはかなり似ている。そして、二人の纏う雰囲気も私には同じように感じられた。


それに……


 実は、今の私、アリスティアは見ようと意識すれば人のオーラが見える。この世界の住人は皆が見えるのだろうか?と思い、エルシミリアに「エルシーも見える?」と尋ねると、「そんなもの見える訳がありません。解析魔術が近いかもしれませんが、あれ結構難しいらしいですよ。紋章を得たくらいでは駄目のようです。お姉様はほんと規格外ですね」とのことだった。


 そして、ここからが更に凄いのだが、オーラが見えるのは目の前にいる人だけではない。なんと! 記憶の中の人のオーラさえ見れる! 先ほど、「アリスティアはSSSクラス」と書いたが、ここに至っては、もはや、「SSSSSSクラス!」と言いたい。MY神様、私のこと好き過ぎるやろ! 優遇し過ぎ! あとで、しっぺ返しとか用意してないよね?


 佐智とコレットのオーラの色は全く同じ。


 セルリアンブルー。心が洗われるような清々しい色。


 ちなみに野乃時代の自分のオーラの色も分かる、抹茶色……ぴちぴち(死語)の女子中学生のオーラとしてはどうよ。彼氏の「か」の字もなかったのが納得できる。抹茶、美味いぞ! もっと見る眼を持てや、男子!



 一人の少女が目の前にいる、佐智にそっくりなコレット。(この時はまだ名前を知らなかったが)


 彼女は私達(お母様、私、エルシミリア、従僕達)の前で、額を床にこすり付け、這いつくばって許しを請っている。その姿を見続けるのは本当に辛かった。


 佐智、そんな姿は見せないで、土下座してでも謝らなければならないのは私の方なのに……


 混同してはダメ、彼女は佐智ではないと自分に言い聞かせる。

 彼女は、ただの平民、こちらは貴族、オルバリスを統治する伯爵家一族。彼女は来てはならない所に来てしまったのだ。平伏し謝罪するのは当然かもしれない。だけど、だけど、どうしても這いつくばるコレットが佐智に見えてしまう。こんなの耐えられない! 早く、早く顔を上げて!


「あなた、平民なのに魔術が使えるの?」


 この後、なんとかお母様とエルシミリアを説得し、彼女を侍女候補として面接できることとなった。面接して分かったのだが、コレットは姿形は似ていても、佐智とはタイプが違う。佐智は相手にズバッと踏み込んでくるタイプ、コレットは相手との距離感を大事にするタイプ。でも、二人とも、気の優しい良い子で、頭も悪くないのは同じだ。私はコレットに好感を持った。


「好きな色は? 好きな食べ物は?」

「もしかして、歌が好きで、結構上手だったりしない?」

「料理の腕はどう?」

「山に登ったことある?」


 後で、エルシミリアに、姉様の面接は変わってますね、訳がわかりません。と言われたので、あれは心理学の応用なのよ、と答えたら。


「さすがアリス姉様です! 心理学にまで精通なさってるなんて! わたしも頑張って勉強します!」


 と、大仰な賛美が返って来た。すまない妹よ。心理学といったが、あれは嘘だ。ただの出まかせだ。姉は心理学の「し」の字も知りません。それに妹よ、あなたは十分以上に賢い。これ以上、馬鹿な姉を放って上へ行かないで、お願い。


 私はコレットを侍女にすることに決めた。

 お母様やエルシミリアは、魔術能力が低いことや彼女が平民であることから反対するだろう、でも無理を押し通すつもりだ。せっかく伯爵家のお嬢様に生まれたのだ。わがまま一つくらいさせて貰おう。


 お嬢様といえば、わがまま。わがままといえば、お嬢様なのだ。( 居直り!)


 これで、私、アリスティアの侍女の一人は決まった。

 もう一人はどうしよう。やはり、コレットとは違うタイプの娘にした方が良いかな……


 お姉様タイプとか。


 そういえば、姉妹を出して来ていた寄子もあったな、何家だったかな。そうそう、ツバク家。セシルとマーヤ。あの姉の方、セシルはどうだろう? 妹思いのようだったし、コレットとも仲良くやってくれるのではないか? お母様とエルシミリアに相談してみて、反対がなければそうしよう。


 よし、決まった。

 あー、決まるとほっとする。私、野乃の頃から、人を選ぶとか向いてないんだよね。リーダータイプじゃないから……


 エルシミリアはもう決めたのかな? エルシーのことだから、色々と考えてるんだろうな。少しは見習わなきゃならないよね。

 

 ほんと私は、人を選ぶのに向いてない。

 後日、自分が人の感情に対して、あまりにも無頓着であることを思い知ることになる。

 

コレットが佐智の転生とかはありません。転生キャラ書いてると頭がごちゃごちゃします。一人で精一杯。

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