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私の娘達

サブタイトル変更しました。

 ガチャリ.



 扉が開くと、二人の「天使」が入って来た。

 「天使」、世の親バカ達が自分の子供をそう呼び、他人が心の中で失笑するのは良くあること。でも、この二人の場合は許されるのではなかろうか。自分も、夫も顔立ちは整っている方ではあるけれど、それにしてもまあ、よくこのように見目麗しい娘達が生まれて来たものだ。我が家に来客する方々も、初めて二人に会うと普通出てくる言葉(おべっか)


『まあ、なんて可愛いお嬢さん方、羨ましいですわ』


 などは、まず出てこない。二人の美しさ、愛らしさに息を飲んで、言葉を忘れてしまうのが殆ど。とある公爵夫人などは長々と黙り込んでしまったかと思うと、おざなりな別れの言葉もそこそこに、すぐ帰宅してしまった。自分の娘をさんざ自慢した後だったから、ばつが悪かったのだろう。


 それゆえ、自らや家族の自慢ばかりする嫌な客が来ると、私は二人を呼んで挨拶させることにしている。そうすると、おとなしくなるか、早々に帰ってくれる。親孝行な娘達だ。


 今日の二人は共に、オフホワイトのすっきりとした可愛いワンピースを着用している。二人が同じ服を着るのは珍しい。エルシミリアは明るめの色、アリスティアは暗めの色を好んでいるから、服がかち合うことは殆どない。アリスティアの方から合わせたのだろうか?


 双子で同じ容姿の二人が、同じ服を着て並ばれると親でも全くどっちがどっちやら見分けがつかないと言いたいところだが、はっきり分かる。アリスティアの方が、エルシミリアより断然美しい、輝きが違う。同じ目鼻立ち、同じ体形なのに、この差は何なのだろう?


 エルシミリアも美しくて可愛い。でも、それは人の範疇に留まる。しかし、アリスティアの美しさは、人を超え、神々の域……… いや、止めよう。いくら「神契の印」を賜った娘といえど、神々と並べるとは傲慢も甚だしい。不敬な戯言など考えていずに、目の前のことに集中しなければ。


「アリスティア、エルシミリア、あなた達に侍女をつけることにします」


 アリスティアが、少し怪訝な顔をみせる。この子は先日の「印」の件以来、表情が豊かになった。


「お母様、私達の身の周りの世話はナンシー達で十分間にあっております。わざわざ付けていただかなくても。それに、私は自分でやる方が性に…」


「お姉様、身の周りのことを自分でやる令嬢なんておられません。ゲインズブラント家にも伯爵家としての体裁があります。それに、わたし達が何でも自分でやったらメイド達が仕事を失ってしまいます」


 エルシミリアが当然の意見をいう。


「そ、そうね。私が浅はかでした。申し訳ございません、お母様」


 神々の化身(また不敬… )のようなアリスティアが、うろたえて謝って来る。この子は、ほんと人間らしくなった。以前は、何事にも動じず、穏やかなまま。それはそれで素晴らしいことではあるけれど、人として何かおかしいようで、心配していた。今、ようやく自分の娘になってくれた気がする。アリスティアの変化は喜ばしい変化だ。


「侍女の数は、それぞれ二人です」


 今度は、エルシミリアが突っ込んで来た。


「お母様、さすがに二人は多過ぎませんか。わたしどもはまだ子供です。そこまでして頂く必要はございません」


「一人では駄目です。二人でも少ないくらい、侍女は、あなた達に常に付き添い、補佐しなければなりません。一人では対応できないのです」


「常にですか……」


 アリスティアは何も言わず黙ったまま。先ほどの馬鹿げた発言で委縮してしまったようだ。エルシミリアの方は少し考えていたようだが、急に大きく目を見開いた。


「お母様、それはもしかして…」


「ですから、七日後、侍女の選考を行います。寄子の下級貴族の家から多くの娘達が来ます。あなた達にはその中から、自分の侍女を選んでもらいます」


 私は、エルシミリアの言葉を遮った。


「下級貴族の家から? どうして今いるナンシー達、メイド達から選ばないのですか? 彼女たちはかなり優秀に思えるのですが」


 アリスティアは早々に立ち直ったようだ。


「あの者たちは平民です、まだ、眷属の紋章を得ていないあなた達を補佐するのに、魔力の無い者は不適格なのです」


「魔力の有無が問題なのですね」


「そうです」


「わかりました」


 アリスティアはすっきりしたようだ。


「では、お部屋にお戻りなさい。二人とも、選考会では、よく相手を見て考え選ぶのですよ」


「 「 はい、お母様 」 」


 二人は部屋を出て行った。


 扉の向こうで声がするのが聞こえる。


「アリス姉様。わたし、お母様にご用事があるのを思い出しました。先に戻っててくださいますか」


「そう、では先に」



 やっぱりエルシミリアは気づいていた。ほんと賢い子だ。

 全般的にみると、アリスティアの方がエルシミリアより遥かに優秀だ。勉学でも運動でもエルシミリアが勝てるものは何一つ無い。しかし、私はどちらが賢いかというと、断然エルシミリアの方だと思っている。今の侍女選考の話でも、アリスティアは疑問を持たなかったようだが、エルシミリアはすぐに違和感を感じ、私の真意にたどり着いたようだ。恐れ入る。


 本当に可愛くも恐ろしい我が娘達。アリスティアの持つ膨大な魔力と「神契の印」、エルシミリアの頭の回転の速さ、これらが併されば本当に今の王家を倒し、新しい王朝を建てれるかもしれない。でも、我が一族の誰も、そんなことは望んでいない…… あー、ベルノルトお父様は別かも。

 

 ノックの音がする。


「お母様、お聞きしたいことがございます。いいでしょうか?」


 私は承諾を与え、エルシミリアは再度入室した。


「お母様は嘘…… いえ、嘘は言っておられませんが、わざと省略されたことがありますね」


「省略? 何をです」


 何時まで、とぼけるのかという顔で私の顔を見るエルシミリア。さすがに愛娘にこんな顔で見られるのは心に堪える。気づかれてしまったものは仕方がない。


「わかりました、ちゃんと話しましょう。あなた達に付けるのは単なる侍女ではありません。侍女的能力はあった方が良いですが、少々劣っていてもかまいません。彼女たちに求めるのは、あなた達に危険が及んだ時の……」


「身代わり」


 エルシミリアが、私の言葉を繋いだ。


ちょっと「侍女」について調べてみたんですが、いわゆるメイドとはかなり違うようですね。勉強になりました。本作では適当になりそうですが…

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