始動
彼はあと何体の敵を倒せば良いのだろうか…
彼はあとどのくらい罪を増やせば良いのだろうか…
赤く赫く色づく黒刀を携え、少年は灰色の空を見る。
「俺を…連れて行ってくれ…×××。」
彼の願いは、空から降り注ぐ藍色に染まった雨によって流され、消えた。
彼はその場に倒れ、機械と瓦礫のベッドで眠った。
彼は次に目を覚ましたのは固く、冷たいベッドではなく羽毛を使った弾力のある、それでいて気持ちの良い肌触りの白いベッドだった。
疲れは未だ取れず体は重たいが、周囲を見回すだけの力はあった。部屋は白色でやけに耳に残る機械の音だけが聞こえ、その音の主である機械が置いてあるだけだった。
『目は覚めましたか?』
何処からか聞こえてくる音声に、
「疲れは取れないけどな。」
と、答える彼…秋夜は1人呟く。
「また、会えなかった。」
そう呟く彼に音声は、
「次回の予想襲撃時間は3日後になります。襲撃時、予想敵対勢力はミエハル。対策準備を時間までに整えてください。」
無慈悲に次の戦闘の予告をするだけだった。
「秋夜く〜ん?お目覚めはいいですかぁ?」
「来るなと言っただろハル。」
「まぁそう怒んなって。俺はお前の心配して来ただけだからさ。」
そう受け答えする秋夜の友人ハルは見舞い代わりの炭酸飲料を投げて渡す。
「そういえば俺の刀は?」
「おいおい、見舞いに来た友人より自分の刀の心配か?」
「そうじゃない、もう一つの方だ。」
「無事だよ。」
「…そうか…」
秋夜は安堵の溜息を吐く。
彼は彼自身よりも守りたいもの、欲しいものがあった。
故に戦乱の地に無謀な戦い方をする。
故に体毎度のように壊す。
…故に友人をなくす。
「まぁ、なんだ。次のミエハルとの戦闘に備えとけよ。」
そう言って優しくて心強い友人は病室を出て行く。
その友人の背中が見えなくなってからやっとのことで言いたかった事を口に出す。
「ありがとう…ハル…。」
友人のくれた飲み物は少し炭酸がきつい気がした。