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第06話 カイル瞬殺!

 

(なんだとっ!ま、まさかこの勇者、隷属の首輪を見抜いたというのか!それに、いつの間に首輪を……)


 ふむ。この"読心"があると、どんな企みも意味ないね。


 カイルは気が付いたら自分に隷属の首輪がついていて、唖然としている。

 周りにいる人たちも口をあんぐり開けて、今何が起きたのか考えているようだ。


 普通の人では、まず見逃すほどの早業だ。

 だがこの場にいるひとりだけ、かろうじて見えた人物がいた。

 その人物は少しだけ目を細めた後、豪快に笑いだした。


「がははっ!こりゃ面白いもんを見た!やるじゃねぇか、坊主!」


 その人物とは、皇后──フィーネの斜め後ろに控えて、今まで一言も発していなかったプレートアーマーの男だった。


 第一印象とだいぶ違うよ!


 職務に忠実で寡黙な戦士だとばかり思っていたら、まさかの豪快で熱そうなタイプだとは。

 ただ、今の動きが見えたということは、やっぱりそれなりに強そうだね。


 ***

 アシッド・ベイ・ステイサン

 種族:人族 性別:男 年齢:35

 ジョブ:戦士

 魔法属性:風

 スキル:身体強化[Lv.4] 剣術[Lv.3] 盾術[Lv.4] 騎馬[Lv.3] 限界突破

 称号:バーサス帝国名誉子爵

 ***


 これがあの男のステータス。

 スキルにレベルがついているものがある。

 周りの騎士数名のステータスも覗いたけど、だいたいこんな感じだね。

 レベルは1が多いけど。

 レベルが一番高いのはこの人の身体強化と盾術。

 スキルのレベルというのは、上限があまり高くないのかもしれない。

 念のために、この男──アシッドの持つスキルを確認してみた。


 ***

 対象:身体強化


 説明:身体に関する全能力を強化するスキル。スキルレベルにより、強化幅が変動。


 対象:剣術


 説明:剣の扱いが上達するスキル。剣の耐久力に補正。スキルレベルにより、上達幅が変動。


 対象:盾術


 説明:盾の扱いが上達するスキル。盾の耐久力に補正。スキルレベルにより、上達幅が変動。


 対象:騎馬


 説明:馬に乗っての戦闘が上達するスキル。馬との信頼度に補正。スキルレベルにより、上達幅が変動。


 対象:限界突破


 説明:条件発動型スキル。瀕死状態に陥ったときに発動可能。残った全ての力を注ぎ込んで、五分間全能力を大幅に上昇させる。使用後、数日間は動けなくなる。

 ***


 上の四つのスキルはだいたい想像通りかな。

 限界突破は……僕はあまりいらない。

 と、僕がスキルについて思考を巡らせていると。


「アシッド!あなたは少し黙っていなさい!勇者殿、少し強引に話を進めようとして申しわけなかったわ!カイルは私の命令通りに動いただけですの。なので、外していただけません?」


 フィーネが僕に謝ってくる。

 まだ何か企んでいるかなと思って、読心スキルを使ってみたけど、何もなかった。


「うん、いいよ!カイルさん、じゃあ、外すね」

「うむ。すまんかったな」


 そう言って隷属の首輪を外そうとしたとき、カイルの心の声を捉えた。


(このままでは、フィーネ様に合わせる顔がない……ここは外した瞬間につけ返す!許せ、勇者よ)


 僕は気にせずにカイルから首輪を外した。

 すると案の定、首輪を奪うと素早く僕の背後にまわり、それをつけようとしてくる。

 かなり速い。魔法でも使ったのかもしれない。

 まぁ、だからなんだという話しなんだけどね。


 僕は後ろを見ずに、カイルのガラ空きの横腹に回し蹴りを繰り出した。

 すると、カイルは隷属の首輪を持ったまま、うめき声を漏らすと床を凄い勢いで転がり、一度宙に浮いてから壁に激突した。


 ズガガガガガッガッ、ドゴン!!


 一応、騎士のいない所に蹴っ飛ばしたけど、ちょっと力を入れすぎたかもしれない。

 でも、何か変な力に威力を抑えられた感じがしたので人体にはそれほど影響はなさそうだ。

 まぁ、しばらくは目を覚まさないと思うけどね。


 僕は邪魔なネクタイを外すと、それをポケットにつっこむ。

 茜の葬式を抜け出したところで転移したので、当然今は学校の制服を着ている。

 早くここから出て、着替えたいなぁ。

 そう思った僕は、揃って唖然としている騎士やフィーネ、アシッドに向けて軽く威圧しながら言い放つ。


「この場は平和にいこうと思ったけど、僕はこの世界で探さないといけない人がいるんだ。だから、僕の邪魔をするなら……それなりの覚悟できてね」


 数秒の沈黙。

 この場にいる、ほとんどの人間が思ったことだろう。

 この勇者は、一筋縄ではいかない──と。



「はははっ、こりゃすげえや!今回の勇者は当たりだな。カイルのじいさんも魔法で体を強化していたはずなんだが……」

「まさか、あのカイルがこんなにあっさりと。彼は魔法師ですけれど近接戦闘も騎士並みにこなせますのに」


 アシッドとフィーネが共に今の感想を述べた。

 敵対するならするではっきりしてほしい。


「召喚したばかりの勇者が、探し人か。それはそれで気になるが……わかった、こうしよう!俺と決闘をしようぜっ!勝てたら坊主の好きなようにしていい。この国は良くも悪くも実力主義だからな、皇帝陛下には俺から言っておく。だが俺が勝ったら、隷属の首輪はつけないが俺たちに従ってもらうぞ!」


 それはなかなかよさそうな提案かもしれない。

 だが、皇帝陛下がどういう人物かは知らないけど、じゃあ自由にしていいとはならない気がする。

 勝ったらさっさと出てったほうがいいかもね。


 この男はたぶん自分が戦いたいだけな気がするし。

 読心スキルを使っても、もう戦いのことしか考えていないよ、この男は……。


「うん、いいよ。やろうか。ただし約束はちゃんと守ってよ」

「がっはっはー!いいねぇ、久々に熱くなってきたぜ」


 うわぁ、暑苦しい。

 こういうタイプは瞬殺するに限る。

 とはいえ、相手は未知のスキルを持っている。

 Lv.4というのが、どの程度の強化なのかわからないからとりあえず様子見しよう。


「はぁ。またあなたは勝手に決めて。(ワタクシ)は知りませんからね!リーガン様にはしっかりあなたから伝えなさいね」


 フィーネがため息混じりにそう苦言を呈している。

 だが、その言葉は既にアシッドには届いていないようだった。


 フィーネは、再度ため息をつく。

 意外とこの人も偉そうにしてるけど苦労があるのだろうね。







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