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第04話 異世界召喚


新年明けましておめでとうございます!

2019年、どうぞよろしくお願い致します!


※タイトルを少し変更しました

 

 世界は理不尽だ。

 簡単に人の大事なものを奪っていく。

 茜のいない今のこの世界は、灰色一色のキャンパスのようだ。

 何もする気が起きない。

 こういうのは時間が解決するとかよく言うが、僕はそんなもので解決したくはない。


 ふと空を見上げる。

 あの日もこんな雲ひとつない空だった。

 あぁ、僕は何をしているのか。


 茜の葬式を途中で抜け出し、思い出深いあの公園にきていた。

 ベンチに腰を下ろし、やる気の起きない僕はただボーっとしている。

 なんだか坊主のお経を聞いていたら、無性にイライラしたのだ。

 茜を守れなかった自分の不甲斐なさには、もっとイライラした。

 散々守ると言ってきたのに、自分が情けなさすぎる。


 もし、もし僕にもう一度チャンスがあるなら……。


「茜。僕はもう君を離さない、絶対に。だから、僕の隣にいてほしい」



 気がついたら、僕の口からそんな言葉が出ていた。

 だめだ。頭がどうかしている。


 僕は頭を振って溜め息をつくと、この後のことを考える。

 葬式なんていう儀式は信用してないけど、茜をしっかり見送らないと。

 そう思い、会場に戻ろうと腰をあげたその時、引き込まれるような凛とした声が僕の耳に届いた。



『その願い、(ワタクシ)が聞き届けましょう』



 そうはっきりと聞こえた次の瞬間、僕の足元が急激に光輝いた。

 そのあまりの眩しさに、目を開けてられずまぶたを閉じ、反射的に回避しようとしたが、足が地面から離れなかった。

 その不可解な現象に戸惑っていると、僕の意識はゆっくりと闇に呑み込まれていった。














 ◆◆◆◆◆




 気がつくとそこは真っ白い何もない空間だった。

 そこにひとり、こっちを見て微笑んでいる美女が佇んでいる。

 薄い青のドレスに、裸足で地面から数cm浮いてるように見える。

 腰まで流れるようなブロンドの髪。

 芸術のように洗練された顔立ち、ドレスの上からでもわかる抜群のスタイル。

 おまけに、つい目がいく自己主張の激しい双丘。

 なんていうか、ザ・女神って感じの人だった。



「ふふふ。そこまで具体的に言われると照れてしまいますね」


 意識を失う前に聞こえたものと同じ声で話しかけてきた。


「いや、言ってないから!って、心読めるの?」

「はい。女神ですから」

「あ、やっぱり?なんかすんなり信じちゃったよ」

「はい。(ワタクシ)、剣と魔法の世界『フローラン』を管理する女神の一柱、アレイラと申します。どうぞよろしくお願い致します」


 そう言って流れるようにお辞儀する。

 その上品で凄く洗練されている様は、突然女神と言われてもすんなり信じてしまう程であった。


「僕は相良慧。よろしく、アレイラさん」


 僕も軽い礼を返し、とりあえず今までの状況を整理してみた。

 茜に会いたいと願ったら、この女神アレイラさんが叶えてくれるという。

 僕はさっきまでの沈んだ気持ちが綺麗に晴れているのを自覚する。

 この気持ちはワクワクだ。

 さっきまでの悲壮な考えなどどこかへ吹き飛んでしまった。


 だって……ここで異世界の女神が登場し僕の願いを叶えてくれる。

 それってつまり、オタクの友人がよく口にしていた異世界転生というやつでは?


「素晴らしい順応の早さですね。それに、地球のニホンという国の方は理解が早いですね」


 まぁ、オタク文化が蔓延ってる国だからね。


「じゃあ茜は、その『フローラン』てところにいるんだね?」


「はい。どうやら他の女神の目に留まって、その女神が記憶を残したまま魂を界渡りさせたようですね」


「それってつまり、茜は何かに転生したってことでいいんだよね?」


 アレイラは、少し考える素振りを見せてからまた話し出す。


「何かというか人間ですね。あぁいえ、種族まではわかりませんが」


「種族?」


「はい。『フローラン』では多種多様な種族がおります。エルフやドワーフに獣人、魔族などもおりますね」


 なるほど。まさにファンタジーって感じだね。




 その後の聞き取りにより、『フローラン』に転生した茜の名前は"エレナ・ヴィ・フェシス"というらしい。

 やっぱりそういう感じの名前なんだね。

 そしてなにより、転生した体は赤ちゃんだという。

 だから、当然茜を見つけても赤ちゃんだ。

 因みにこの空間は、両世界の狭間にあって時が流れていないらしい。


 自分の子供を見ず知らずのガキに預ける親はいない。

 茜を見つけても連れ出すのは難しそうだね。

 最悪、強引に駆け落ちするのもありかな。

 相手は赤ちゃんだけど……。

 両親と仲良くなって近くで暮らすというのもアリかもしれない。



「ほ、ほどほどにしてくださいね。それに、勇者さんには他に使命があると思いますから」

「え、僕勇者なの?」

「ああ、申し訳ありません。言ってませんでしたね。あなたは、異世界から召喚された勇者です。どこかの国が勇者召喚の儀を行ったのです。(ワタクシ)はそれを利用してあなたをお呼び致しました」

「ふむ、なるほど。その召喚を行った国がマシならいいけどね。それで、勇者の使命というのは?」

「ふふ。本当に理解が早いですね。勇者の使命は古今東西、魔王や邪神の討伐と決まっております。まぁ、国同士の戦争の為に喚ばれることもありますが稀ですね」


 おぉ、定番だね。

 でも、茜を探したいのにそれに時間を取られるのは遠慮したい。

 まぁ、そこは成り行きにまかせるかな。


「うん。だいたいわかったよ。ありがとう」


「いえいえ。あ、そうでした!スキルをひとつ授けることができます。『世界共通言語』という言語を理解できるスキルは既に獲得されているので言葉は心配ありません。どんなものがよろしいですか?」


 スキルなんてのもあるのか。

 言葉をいちから覚えなくていいのは助かる。


「せっかくだし便利なのがいいよね。じゃあ、なんでも教えてくれるみたいなスキルない?」

「あ、はい。丁度いいものがありますよ。でも魔物が蔓延っている世界なので、強くなれるようなスキルがおすすめなんですが」

「まぁ、魔法があるらしいし当然魔物もいるよね。でも大丈夫。戦いで本当に一番重要なのは情報だからね」

「勇者さんがそう言うのでしたら……」


 前に突き出したアレイラさんの左手から、光の玉が出てくると、それが僕の胸の中に吸い込まれるようにして入ってきた。


「これでスキルの授与が完了致しました。これより『フローラン』へ転移させます。最後に何か質問はございますか?」


「たぶん大丈夫。いろいろありがとう、アレイラさん!」


「ここまで感謝してもらうと女神冥利につきますね。──それでは、あなたの人生が豊かになるように祈っております」


 そう言うアレイラさんの綺麗なお辞儀を見ていると、急に視界の風景が変わる。

 気づいたら僕は、大きなホテルのパーティー会場のような場所に立っていた。






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