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第41話 魔法大国・近衛騎士団長の実力

暑い!熱い!暑いですねぇ!

 

 ラメアの街から、王都やガイア遺跡などの主要な場所へと繋ぐ北の街道を、地響きを立てながら南下してくる魔物の軍団、その数は数千にも上る。

 南からの魔物も合わせれば、総数は一万にも及ぶだろう。

 王国全体で見ても、滅多にない規模である。


 その先頭を進むのは、人間に似通った外見をしていながら溢れんばかりの凶暴性を備えたでっぷりお腹が特徴的な種族、オークである。

 様々な武器を携えて、ゆっくり進んでいる。




 魔物の軍団から1km先の対面、北門の前にはたったひとりの男が待ち構えていた。


 とてもファンタジーには似合わぬ黒のスーツを着こなし、両の腰には剣を差している能面のような表情の男。

 レイザード王国の近衛騎士団に若干12歳の若さで抜擢され、最速で団長にまで上り詰めた天才騎士、ルーブル・クロッカートその人であった。


 ルーブルの後方、門の上には伝令役のギルド職員が控えているが戦力にはならない。

 彼らが、本当にたったひとりで魔物の軍団と渡り合うのかと話しているのも無理はないだろう。

 ルーブル・クロッカートという名は有名でも、王都から出ることはあまりない立場の人間であるため、実際に顔を見た者は少ないのである。



 魔物が近付いてくるにつれて辺りを吹く風が強まり、ルーブルが着ているジャケットがパタパタと風に煽られ始める。


 演出としては申し分ないが少し鬱陶しいと感じたルーブルは、自身の得意とする魔法属性、風の力を放出し、周りを吹き抜ける風を支配下に置く。

 すると、目障りに動いていたジャケットが静かになり、心地よい風がルーブルの肌を撫でる。



「さて、そろそろいいか」


 ルーブルは一言そう呟くと、先手必勝とばかりに右手を大きく前に突き出した。


風潰(ふうかい)魔法、トルネードスプラッタ」


 軍団の先頭を進むオーク共の頭上に、風の渦が発生する。

 それが下降気流のように激しく吹き荒れ、魔物を地面に押し潰す。


 直接潰れた魔物はもちろんだが、突風の余波でも周りの魔物に影響を及ぼし、遠距離から多くの魔物を排除する。

 しかし、当の本人は納得がいってない様子で頭を振った。



「やはり、私の魔法ではこの程度か。先陣を少し削っただけで、全体の一割にも満たないとは……」


 後方の魔物の群れは、先頭で倒れた魔物を押し退け今なお突き進んでいる。

 先程の魔法の影響は全体的に見れば軽微だった。


「魔法のみでなるべく片付けたかったが、やむを得ん。私の全力で滅殺しよう。………"風纏(かざまとい)"」


 最後に一言呟くと、ルーブルの全身を風が鎧のように包み込む。

 清涼な緑色の風が、血管のように全身を流れていく。

 静かで穏やかだが、どこか力強さもあるそんな相反する性質を滲み出している今のルーブルからは、外柔内剛という言葉が似合っている。


 そして、ルーブルは左右の愛剣に手を添えて軽く地を蹴った。

 そのときに一瞬だけ口角が吊り上がり、獰猛な笑みをたたえた。




 ◆◆◆◆◆



 まるで地面すれすれを飛行しているかのような軽やかな足さばきで瞬く間に接敵すると、左腰から抜いた剣でオークの頭を数匹まとめて斬り飛ばす。

 それと同時に、逆の腰から抜いた剣で同じように魔物の頭をまとめて斬り飛ばした。


 この間、一秒にも満たない。

 あまりにも速すぎて、魔物も反応できずに死んでいく。


 その初斬を皮切りに、空中に糸を縫うかのように二本の剣が走る。

 魔物の首が飛んで血を吹き出す頃には、既にルーブルはその場におらず、縦横無尽に駆け回り確実に仕留めていく。


 その姿は、ゴブリンの群れを屠ったケイを彷彿とさせる。

 それほどの技量が彼にはあった。



 遠巻きに見ていたギルド職員たちは、開いた口が塞がらない様子で驚きに目を見張っている。

 その中で、ひとりの職員が「双剣舞踊………」と呟いていた。

 ルーブル・クロッカートの戦場での二つ名だった。





 少しして、ルーブルは足を止めた。

 決して疲れたわけでも、ましてや怯んだわけでもない。

 なんと僅か30分足らずで、8割り方倒してしまったのだ。


 そして、ふいに疑問に思うことができたため、その場で無防備にも立ち止まった。

 もちろん周りの警戒は怠ってはいない。


「オークにオーガ。そして、コボルト。上位種も混ざっているが、だいたいこの三種類だ。どれもよくこの辺で見掛ける魔物だから、転移されてきた可能性は低い。となると、魔物の森の氾濫を疑うのだが…………ゴブリンが一切いないのが気になる。いや、自然の氾濫はまずないか。こいつらは慌てることもなく一直線に街に向かっていた。別種の魔物と争うこともなく───何者かの悪意を感じる」


 口に出して思考を続けるルーブルの前に、一際巨大な体躯が塞がり影を落とす。

 すぐさま大きく後ろへ飛んだ次の瞬間、ルーブルがいた場所の空間が爆ぜた。

 まるで、そこの空間そのものが爆弾とでもいうかのように弾けたのだ。


「これはッ………キングオーガッ!?」


 キングオーガ。Sランク指定の魔物。

 オーガの最上位種族で、一体一体に特異な力をひとつ備えている。

 今の爆発も、この魔物の特殊能力だとルーブルはあたりをつけた。


「フッ、面白い。雑魚だけでは物足りなかったところだ。ミンチにしてやる」


 ルーブルは両手に握る剣を構え、ギアを数段上げてキングオーガの懐に飛び込んでいった。





 ◆◆◆◆◆



 ここは、ルーブルやラメアの者たちが疑っている魔物が出てきたとされる魔の森。


 街から真北に数km離れたこの森の中で、全身真っ黒のシルエットが魔物vsルーブルを視て(、、)いた。

 黒ずくめの格好をしているわけではない。

 影が立体的に人の形をとっているかのような出で立ちであった。


「予想外にできる奴だが、あれは違うなあ。このままでは、炙り出しが上手くいかないなあ。放っといたゴブリンロードもなぜかいなくなっていたしなあ。しょうがない。あれはここで留まらせておこうかあ」


 品のない声でケタケタ笑ったその男は、黒い魔法陣を生成した。

 見る者が見れば驚愕するような召還転移用の高度な魔法陣であった。


「さあ、いきなさあい。派手に暴れて紫の某かを釣れえ」


 ラメアの街にさらなる災厄が訪れようとしていた。






評価の方もお待ちしております。


だいたいこんな感じでしょうかね


0点→無関心、面倒

1点→クソ

2点→一応見たけどつまんない

3点→普通

4点→素人にしては面白い

5点→少ししたらまた読みたくなるかも


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