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第02話 告白

 

 キーンコーンカーンコーン♪

 キーンコーンカーンコーン~♪


 最後のHRを終えた僕は、さっさと鞄を肩に担ぎクラスメイトの誘いをかわして、茜のいる教室に向かう。


「最近、茜の様子がおかしいんだよね」


 そう呟きつつ、僕は茜がいる教室に入っていく。

 教室の外から呼んでもらう人もいるが、面倒なので僕は直接行く。

 茜は周りの女子たちと楽しく会話をしているようだけど、気にせずその輪に入る。


「茜、ごめん。話し中なら外で待ってるけど、どうする?」


「あ、慧!ちょっと待ってね、今支度するから」


 そう言って茜は鞄に色々しまっている。

 僕はそれを横目で見ながら、茜の友達に一言謝る。


「ごめんね。話しの邪魔して」


「ぜ、ぜん、全然、だだ、大丈夫だょ」

「あはは、慧君の前だからって緊張しすぎだよ~」

「ねぇ、慧君!今度良かったら一緒にお昼どう?」

「ちょっ!何抜け駆けしてんのよあんた!」

「み、皆でってことよ!」

「本当かしら。まぁ、それなら……」

「ねぇねぇ!慧君って茜と付き合ってなかったの?」


 その最後の言葉でわちゃわちゃしていた女子たちが急に静かになる。

 茜も支度が終わったはずなのに、僕のほうを不安げな目で見てきている。

 なにこの空気。

 ここで選択を誤れば、さらに茜が落ち込みかねない。

 かと言って、こんなところで公開告白も……。


「はぁ。たしかに今は付き合ってないけど、茜以外で付き合う気はないんだよ…ね」


 そう言いながら、茜の様子を見ると顔を真っ赤にしながら俯いていた。

 やばい、めっちゃ可愛い!

 僕は無意識に手が出ようとして、なぜか増えている周りの視線に気付く。

 嫉妬が大半だが、中には微笑ましいものでも見るような視線もある。


「ん、んん!そういうわけで……行くよ、茜!」


 とりあえず咳でごまかした僕は茜の手を取り、急いで教室を出る。

 なんとかこの場を切り抜け?茜と並んで下校する。




「えっと、その、不束者ですがよろしくお願いします!」


 まだ顔が少し赤い茜が、立ち止まって真剣な顔をしてそう言ってきた。

 その様子に、僕も立ち止まって茜と見つめ合いながら話す。


「やっぱり、あれって告白ってことになるの?」


「え、違うの?少なくともあの教室にいた人たちはそう思ったと思うけど」


「そっか、そうなるよね。………ふぅ~。あかね」


「は、はい!」


「好き。ずっと一緒にいようね」


 僕が茜の返事に被せるようにしてそう告白した。

 すると途端に、花が咲いたような笑顔になった茜の両目から大粒の涙が出てきた。


「私も、大好き。グスッ」


 泣きながら顔がニヤけている茜を抱き寄せると、数分そのままで幸せを噛みしめていた。


 やがて、人目も憚らずに抱き合っていた僕たちだったが、茜は一周回って冷静になったのか、頬を染めて俯きながらススス──と僕から少し距離をとった。

 僕は少し物足りないと感じたが、恥ずかしそうにして手を繋いできた茜を見たら、なんか、うん、ヤバい感じだった(良い意味で)。

 沸き上がってくる欲望を封殺し、手を優しく握り返してから帰路についた。



 さて、予想外のイベントはあったが、彼女の悩みを解消するのも彼氏の役目だ。

 少し頑張るかな。










 ◆◆◆◆◆





 僕と茜は帰り道にある公園に寄っていた。


「はい。カフェオレでよかったよね」


「うん!ありがと」


 ベンチに座っている茜に自販機で買ったカフェオレを渡し、隣に座る。


「自販機のお釣り出るところに500円玉入っててさ、タダで買えちゃったよ」


「ふふ、あいかわらずだね」



 …………。

 少しの沈黙の後、僕は軽い調子で聞いた。


「それで、最近何に悩んでるの?またなんかあった?」

「ッ!?やっぱりバレちゃうんだね、慧には」

「まぁね。もしかしてストーカー?」

「え!?なんでわかるの?」

「今は感じないけど、電車降りたときにこっちを見る強い視線を感じたんだよね」

「そ、そうなんだ。慧はやっぱり凄いね。えっとね──」


 その後、茜は今回のストーカーのことを話し出した。

 すべてを聞き終えた僕は、そこまで切羽詰まってなくて安心した。


「今日は、慧が隣にいたから諦めたのかな?」


「そうかも…っ!?」


 ふいにこっちを見る視線を感じる。

 それもねちっこく舐めまわすような不快な視線だ。


「茜。ちょっとここにいてくれ。すぐ戻る」


 僕の顔を見て、何かを諦めたような表情をしたあと、頷いてくれた茜の頭を一撫でしてから立ち上がった。






 僕は公園を出て自販機に行くようにみせかけて、傍にあるゴミ捨て場の陰に隠れている奴に近づいていく。


「やぁ。茜に何か用かな?」


「なっっ!?」


 僕が話しかけると、驚いた声を出して姿を見せた男。

 中肉中背で目深に帽子を被り黒のパーカーを着ていて、見るからに怪しい風貌だ。

 その男は、こっちを見るために少し帽子を上げた為、顔が確認できた。

 それはこの間、茜と行ったあのカフェにいた店員だった。

 たしかに思い返してみると、じろじろ見ていた気がする。

 茜に邪な視線を向ける男は多いから、あまり気に留めていなかったけど。


「茜に変な手紙を送ったり、ストーキングしてたのはあんたでしょ?今すぐやめるなら許してあげるけど、どうする?」


「こんなガキが、茜ちゃんと、こんなちんちくりんが、茜ちゃんと、こんな雑魚そうなのが、茜ちゃんと……」


 男は、ブツブツ何か言いながら懐から刃渡り5cm以上の刃物を取り出すと、刃を僕の方へ向けてきた。


「あー。それ取り出しちゃったら、もう言い訳できないよ」


「うるせー!茜ちゃんは俺のものだ!」


 突然、大声を出してこっちに迫ってくる男。

 今なんて言ったんだこいつ。


「俺の………もの?」



「死ねーーー!」


 そう叫びながら刃物を突き出してくる男の右腕を外に反らし、自分の左拳を男の顔の下から思いっ切り突き上げた。

 アッパーカットである。

 それは綺麗に食い込んでヒットし、男の顎から骨が砕けたような嫌な音がするが、気にせずに次の行動に移る。


 体が反れた男の右手から刃物を叩き落とすと、脇腹に強烈な右膝蹴りをお見舞いする。

 ここでも骨が砕けた感じがするが、もちろん気にしない。


 口から空気が抜け、前のめりに倒れる男の首筋に手刀を放つ。

 男は「アガッ……」と気持ち悪いうめき声を漏らすと、完全に意識を手放し、その場でうつ伏せにぶっ倒れた。

 男にとっては、何をされたのか一切分からずに打ちのめされた、一瞬の出来事であった。



「ふざけたことを言うな。茜は茜のものだ」


 既に意識のない男に向かってそう言うと、制服の内ポケットからスマホを取り出し、警察に連絡した。







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