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第20話 ある少年との邂逅

 

 案内された部屋は、最上階の階段から一番近い所にあった。

 その部屋には大きい窓がはめられており、帝都の夜景が見渡せた。

 ファンタジーの世界が、こんなに近代的とは思わなかったよ。


「お食事は、2階の酒場が24時間営業しておりますので、そちらをご利用ください。5階には、浴場もありましてそちらも24時間ご利用になれます。何かご用のある際は、そちらにある備え付け通信魔道具でお呼び頂ければと思います。では、ゆっくりとおくつろぎください」


 滑らかに説明を終えた支配人──ハーウェンは、綺麗にお辞儀をすると部屋を出ていった。

 24時間って凄いね。

 それに、こんなホテルみたいなところで酒場って言うのは少し違和感があると感じた。


「リーザとエンリは、ここよく来るの?」

「たまにね。家出したときとかに来るよ。家族ではあまりないかな」

「私は、その付き添いで来ます」


 なるほど。

 まぁ、同じ帝都内だからね。

 僕は地元のホテルとか行ったことないけどそれと同じ感じかな。




 2階にあるという酒場は全て個室になっていて、いつでも自由に使えるという素敵仕様だった。

 もちろん、料理も凄く美味しかったよ。

 中でも、『アース肉のステーキ』は一番美味しかった。

 なんでも、アースドラゴンという飛べないドラゴンの肉が美味でステーキにすると美味しいらしい。

 でも、滅多に人里には現れず、討伐するのも困難な魔物とあって希少価値があり、高級肉とされているそうだ。

 魔物か。

 いずれ、僕の力の練習台になってもらおう。







◆◆◆◆◆



「はぁ~。さっぱりした」


 お風呂を堪能した僕は、先にひとり部屋に戻ることにした。

 それにしても、まさか露天風呂まであるとは思わなかったよ。

 目の前の売店にはコーヒー牛乳もあった。

 とてもファンタジー世界とは思えない充実っぷりだ。

 混浴がなかったのは残念……とは別に思ってないが、サウナもあるとなおよかった気がする。

 僕がそんなことを思いながら、ひとり廊下を歩いていると──。


「おい、貴様!見ない顔だが、リーザ皇女とはどういう関係だ!」


 いきなりそう喧嘩腰で言ってきたのは、リーザと同い年ぐらいの少年だった。

 後ろにも、同年代の少年がふたりいる。

 典型的な貴族のお坊ちゃんて感じだ。


「リーク殿が聞いているんだぞっ!早く答えろ!」

「そうだそうだ!"姫"とはなんであんなに仲良いんだよ!」


 姫か。

 あのリーザが。

 うん、なんか面白い。


「ごめんごめん。えっと、どういう関係……か。一緒に旅をしている関係だね」


 僕が少し含ませてそう言うと、3人の男子はどんどん顔が赤くなっていく。

 うん。分かりやすくて可愛いぞ。

 リーザ、モテモテだね。


「た、たた、たたた、旅だと!?」

「それは、どういうことだ!」

「"姫"とふたりっきりで旅……。ずるいぞっ!」


 太鼓でも叩いてるのかってぐらい動揺している。

 少しからかいすぎたかな?

 だが、前にいる少年は少し息を吐くと、どんどん落ち着いていってるようだ。

 そして、その少年は拳を胸の前に持っていき左足を少し引いた構えをとった。

 なんか凄い臨戦態勢になってるよ。

 ていうか、ボクシング!?


「リーザ皇女は、俺たちのアイドルだ!邪魔するハエは叩きつぶすっ!」


 そう叫ぶや否や、一瞬で僕に肉薄し、右拳を突き出してきた。

 これは、縮地か……。


 前に出ている足の力を抜き、前傾姿勢になる力を利用して、両足を滑らせるように移動する。

 これによって、無駄な筋肉を使わずブレない為、動き出しを悟らせることなく移動が可能になる。

 これを、前足の()()を使った術、縮地と呼んでいる。

 さらにこの少年は、構えてから流れるように縮地に入ったので、頭がほとんど動くことなく、相手には一瞬で目の前に現れたと思わせることができる。

 この技は、正式に武術に取り込まれてはおらず、中国の伝統的な物語として伝わってきたと言われている幻の歩法だ。


 日本でも、漫画等で有名だけど、本当の意味でマスターしている者はほとんどいない。

 それを、この少年はこの年で。


「驚いたよ。まさか、こんなに完成された縮地をこの世界で見れるとはね。でも僕に喧嘩を売ってきたんだ。お仕置きはしないとね」


 僕は、少年──リークの右拳を難なく片手で受け止めると、片方の手で彼の脇腹をコチョコチョした。


「………は? あひっ!あひゃ、あはははははっ、あぅう、やめっ、あひゃ!」


 あまりに反応が良いので、調子に乗って遊んでいると。

 左右からふたりの少年が突進してきた。


「リーク殿を放せー!」

「"姫"を返せー!」


 ふむ。なかなか良い突進だね。

 でも、少年。

 それだと、リークが姫みたいになるよ。

 そんなことを思いながら、小さい格闘家たちをいなす。


 僕はずっと右手で握っていたリークの拳を引いて、右からくる少年との間に入れると、左腕一本で左の少年のタックルを前へ反らし少しだけ勢いをつけさせる。

 すると──。


「「「うおー!」」」


 ドンッ!!


 3人の少年は思いっきり激突し、地面にぶっ倒れた。

 リークは膝をガクガクさせながら、頭上をひよこが飛んでいた。



 去り際、なんとなく気になった僕は、フラフラしている少年──リークを()()


 ***

 リーク・ベイ・ヘイヤード

 種族:人族 性別:男 年齢:13

 ジョブ:武闘家

 魔法属性:なし

 スキル:

 戦闘系→身体強化[Lv.1] 縮地

 魔法系→なし

 生産系→なし

 生活系→なし

 その他→なし

 称号:ヘイヤード辺境伯家次男

 ***


 ──!?

 スキルがなさすぎる。

 魔法属性はない人もいたけど、これは……。

 とても、さっきの攻撃をしてきた者のステータスじゃない。

 一体どういうことだ、と思ったとき別の物が見えた。


 ***

 状態:呪い


 説明:魔族に掛けられたスキル封獲の呪い。どんなに経験値を積んでも、スキルが獲得できない。解くには、術者に解いてもらうか殺すかする必要がある。また、呪魔法を打ち消す魔法でも可能。

 ***


 状態鑑定っていうやつか。

 それにしても……えげつない。

 呪い属性の魔法があるとは知ってたけど。

 これじゃあ、ほとんど成長が──ッ!?

 こんなハンデがあって、さっきの動き?

 ギルドで決闘した奴なんかよりよっぽど強かったよ。

 もしかして、スキルの恩恵をほとんど得ないで、努力だけであそこまで?

 才能もあったのかもしれないけど、なんとなく昔の僕に少しだけ似てる気がする。

 生意気な坊っちゃんだけど。

 いや、それに関しても僕と似てるか?



 僕は、再度リークたちに視線を向けた。

 3人仲良く地面でおやすみしている。

 ……はぁ。しょうがない。


 僕は、いくらか力を入れると、少年たちを担ぎ上げ部屋に戻る。

 スキルまじ便利だよ。






今後も、"敵"と"無関心"と"お気に入り"で温度差が違いすぎるケイ君をよろしくお願いします。

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